短編Pt1 : 7日目

ある夏の日、見た事の無い怪しい光が一瞬見えた後、少し熱い風が吹いて気を失った。気がついた時には大気圏外。
僕は突然にUFOに連れ去られた。
「目が覚めたか。地球人。突然すまない。」


後ろから声がして振り返るとそこには素顔は見えないが手に翻訳機らしき物を持つ人型の宇宙人が。

僕は聞き返す。


「宇宙人さん、突然の事で状況が掴めないのですが。これは一体どういう事ですか?」

宇宙人は答えた。


「あなたは選ばれたのです。私たちは自分達以外の生命体を求めて宇宙をずっと旅してきました。そして遂に地球にたどり着き。あなた達をサンプルとして持ち帰ることにしました。」


色々宇宙人に聞きたい事はあったのだが、とりあえず僕以外の連れ去られた者がいるならその者と話がしたかった。
そう思い振り返るとそこには随分と取り乱している男がいた。


彼がなんと言ってるかは分からないが激しく怒り狂い、何度か僕と目は合ったがそれがまた気に食わなかったのか僕の方まで指を刺しながら宇宙人に怒り狂っていた。
暴れ続ける男に嫌気が刺したのか宇宙人は何か薬のようなものを男に打ち込んだ。
するとたちまち男は力が抜け、その場にへたりこんでしまった。


優しい手つきで宇宙人は男をベッドに運ぶと僕の方に来て横に座りこんだ。


「初めまして地球人さん。ずいぶんと小さい体だね。君は子供かな?」


私は少しムッとしたが、仕方が無いと思いこう答えた。


「初めまして。私は成人ですよ。むしろ年寄りに近いかな。」



宇宙人は少しびっくりをしながらこう続けた。



「地球人さん。向こうの男は我々に捕まった事を受け入れられなかったのかすごく暴れていましたが、あなたはすごく冷静ですね。どうしてですか?怖くないのですか?」


だから僕はこう答えた。


「僕は怖くないですよ。むしろワクワクしています。
正直なところ僕はもう先は長くない。生まれてきて死ぬまでに全うすべきだったことはもう終えたし後は死を待つのみの身でした。そんな私にこんなまるで宇宙旅行のような体験を。むしろありがとうございます。」


私がこう答えると、宇宙人は


「もう先はながくない…そうだったのですね。
本当に申し訳ない。ただ我々も自分達の役目があり、、、宇宙調査に来て宇宙人の一種くらいは見つけないと、手ぶらで帰るわけに行かなかったのです。どうか怖い目には合わせませんから。ご協力頂ければ助かります。」



そう宇宙人はとても申し訳なさそうに言った。
でも実は本当に申し訳ないのはぼくの方だった。
もうあと2〜3日の命なのだ。
僕ごときがその宇宙人が住む惑星に行ってもなんの成果にもならない。
きっと僕より奥で取り乱してるあの男の方がよっぽどいいサンプルになるだろう。
まあ僕が気にする事ではないのだが。









その次の日に私は亡くなった。
短いが愉快な体験が出来て私は幸福だ。







「おい!落ち着いたか?お前の相棒の地球人が動かなくなったぞ!きっと死んでしまった…大切な仲間だったろうに申し訳ない。お前は大丈夫か?」


そう宇宙人が生き残った地球人の男に言うと弱々しくも怒りながら男はこう言い放った。


「知ったこっちゃねえ!あの虫けらはまず地球人じゃねえ!セミっていう虫だ!この時期にだけ出てきて子供作って7日で死ぬんだよ!俺とあいつじゃどうみたって見た目が違うだろ!
同じ地球に住む生き物だからって全員を地球人だと思わないでくれ!!」



宇宙人は首をかしげた。

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