AI=人工知能とその関連用語【小論文の用語】
《主な対象者》
【1】 人工知能=AIとは何か
人工知能=AI(artificial intelligence)とは、人間が実現させることができる様々な知覚、知性を人工的に再現するもの、つまり「人工的に作られた知能」のことを指します。莫大なデータ・情報をコンピュータ・ロボットにインプットさせ、一般的な人間ができる様々な能力、例えば認識や判断、理解、推測、提案、問題解決などを行うことができます。これまでの一般的にマシーンとでも呼ばれるものとの大きな違いは、自己学習能力を備えていることだといえます。単純にプログラミングされたものだけを機械的に永遠に行い続けるというだけではなく、自ら学習をしそれを能力として人工知能=AI自身が自分で考えて成長していくというところに大きな特徴があります。
すなわち、人工知能(AI)はまるで人間の脳と同じように活動することができるということです。現時点ではまだ優秀な人間の脳とまったく同じレベルには達していませんが、人工知能(AI)はまだまだ発展途上ですからこれから同じレベルに達する、さらには人間の脳のレベルを超える「シンギュラリティ」のような段階に達する可能性もあります。
【2】 人工知能=AIの関連用語
(1)機械学習
機械学習とは、特定分野に絞った上でその大量のデータ・情報を解析して規則性や関係性を見つけ出すことを指します。
「特定分野に絞った上で」というこの「絞る」という部分は人間が事前に準備します。すべてをコンピュータが判断して作業を行うのではなく、事前に人間が準備・設定をした上で、その条件下において大量のデータを解析し、そこから規則性や関係性を見つけ出します。
日常においては、オンラインストアで購入履歴や閲覧履歴などから顧客の好み(規則性)を判断し「あなたへのおすすめ」のような一覧を機械的に表示するといった例が挙げられます。絞られた中から規則性を見出して自動的に判断することができるということですね。
(2)ディープラーニング(深層学習)
ディープラーニングは(1)の機械学習から少し発展させ、さらに高度なコンピュータを利用し大量のネットワークを組み合わせることによって、機械学習では叶わなかった「人間が特定分野に絞った上で」という部分も人間の準備を必要とせず、すべてを自動で見出していきます。
このように、事前の人間の準備や設定が不要になる点が(1)機械学習との相違点です。ただ、相違点ではあるものの概念としてはほとんど同じもので、機械学習の発展したものがディープラーニングだと考えておくと良いでしょう。
(3)ビッグデータ
ビッグデータとはまさに名前の通りビッグなデータ、つまり大量の情報データのことを指しています。ただ、それはただ単に「大」という漢字の意味だけを指しているわけではありません。日本人が考える「すげえ〜」のような状態のものすべてを指すと考えておくと良いでしょう。ですから、大量の「大」であり、多種多様の「多」であり、「速」「広」「高」でありといったすべてのとんでもなくプラスを表すようなものを含めたデータだということです。要約すればビッグデータとは「様々な種類の様々な性質を持った様々な大量のデータ」全体のことを指すものだと考えておきましょう。
かつては人間が地道に統計データとして集めて分析をしていたものも、近年の優秀なコンピュータによってそのようなとんでもない多種大量のデータも容易に解析することができるようになっています。例えば、先ほどの機械学習のオンラインストアの例でも、単純に個人的な購入履歴や閲覧履歴からオススメを表示させるだけでなく、年齢層がどうなのか、性別がどうなのか、季節がどうなのか、トレンドがどうなのか、といった多種多様な大量のデータを用いればさらにその精度が上がってきます。まさにそのような解析をするための素材となる多種大量のデータをビッグデータと呼ぶということですね。
(4)それぞれの用語の立ち位置
ここまででおわかりいただいたように、AI=人工知能、機械学習、ディープラーニングはそれぞれプログラムとして活動するものであるのに対し、ビッグデータというのはプログラムではなく、AI=人工知能、機械学習、ディープラーニングが解析する対象のすべてのデータ情報そのものだということです。
またディープラーニングは機械学習の発展形であり、また機械学習自体もそもそも人工知能の一部だといえますから、これらの関係性は下記のようなものだといえます。
機械学習やディープラーニングを含め、AI=人工知能のプログラムがビッグデータにアクセスしてそれを解析していくということです。
【3】 シンギュラリティ=技術的特異点
ビッグデータを用いて人工知能=AIが人間の脳の代わりに活動を行うことで、オンラインストアの例のように人間社会も非常に便利になってきています。ただ、あくまでも機械学習の意味にもあったように、準備・設定は人間が行なったりと、現時点ではまだまだAIも人間の脳には及ばないといって良いでしょう。人間を便利にさせてくれるものにすぎません。
しかし、近年では例えば将棋でAIが人間に勝つのではないかといったような話題が出てきているように、いよいよAIが大量のデータ(ビッグデータ)を人間の成長よりも高速で解析し発展し続けることで人間の脳のレベルを超えてしまう日が来るのではないかと予想することもできますよね。
まさに、シンギュラリティ(=技術的特異点)とは、人工知能(AI)が高速で成長を繰り返していくことによって、ついに人間の脳のレベルを上回る状態が誕生する時点を意味します。簡単に言えば、AIが人間を超える日のことです。
ただ、これはもちろんあくまでもまだ仮説に過ぎないものでそれが確定しているわけではありません。そのため、このシンギュラリティについては議論がなされており、小論文の課題としても論点になっています。特に、人工知能研究の世界的権威であるレイ・カーツワイル氏が、2045年にシンギュラリティに達すると予測しているということで、この問題は「2045年問題」と呼ばれています。
果たして本当にこのシンギュラリティに到達するのでしょうか。AIが人間を完全に上回るのか、人間には人間にしかできない何かが残るのか、といったあたりの議論についても自分自身の中で考え方を固めておきましょう。
【4】 スウェーデンとAI
世界でも最先端な情報技術競争力を持つスウェーデンは、人口規模や地理的制約からも、日本と大きく違ってロボットや全自動化といったITに対する嫌悪感が非常に低いとされています。むしろ新しい物や事に対する好奇心や学習意欲の方が強いようです。
2010年頃にスウェーデンの空港で高齢者が皆何に戸惑うこともなく文句を言うこともなく当たり前のように自分自身でチェックイン作業をしていたことには私自身も大変驚きました。発券機と会話をするように、自分のパスポートをスキャンし、座席指定をし、発券機からビーーッと出てくるシールの帯を大きなスーツケースに自分自身で巻いていくという、その全行程をジッと見ていましたが、なんら滞りなく進み若者が手助けをする必要もまったくない状態でした。2010年頃の日本ではなかなか考えられない状態です。スウェーデン人の友達に聞くと、そのような新しい技術についていけないことが高齢者にとってはとても恥ずかしいという感覚があるようです。
スウェーデン人の感覚としてはむしろ情報技術の革新によってより産業の国際競争力が高まり、そのことによって企業が潤ってその労働者が潤い、そのことでまた国家が潤うという大きなメリット・好循環に対する理解があるようです。
そのような国民性もあり、スウェーデンではAIの発展による人間への悪影響、特に雇用問題における懸念についてはあまり心配されていないようです。スウェーデンでは日本よりも経営者と従業員の関係性が良好で、お互いの信頼が強くなっています。また社会福祉国家であるスウェーデンだからこそ政府から還元される制度設計に対する信頼も厚く、そのような考えから特にAIの発展による悪影響については気にはしていないようです。これはただ能天気な発想をしているということではありません。むしろAIの発達によって企業の効率性が高まり、そのことによって企業が成長すればその成果が労働者にも還元されるという、俯瞰で見た考え方を持っているということです。労働者である自分自身も当然AIが導入されることを当然のこととして、自分自身の労働者としての役割・スキルもしっかりと考え準備していくわけです。まさに空港の高齢者の発想と同様です。
スウェーデン雇用統合長官であるイルヴァ・ヨハンソン氏は、AIを含めた最新技術の脅威に対して「全く怖くない。むしろ古い技術が怖い。最新技術によって仕事がなくなるならば、そこから新しい仕事を得るための訓練を実施するだけだ。」と述べています。まさにスウェーデン人の国民性でもありスウェーデン王国の歴史の蓄積ともいえる発想です。中央ヨーロッパと対等に渡っていくには北欧諸国は常に最先端の発展を続けていかなければならないという強い意識を持っているようです。
【5】 小論文.comの対策
ただ用語を暗記したり、「なんとなく」みんなが使っているから、ニュースで聞いたからと、言葉の本質を捉えずに使用するのは避けたいところです。その言葉の意味を理解した上で自分自身の「言葉の引き出し」に落とし込みましょう。
また小論文においては、その用語が使用されている背景や時事問題にも目を通し、その問題に対して「自分はどう考えるのか」を常に頭に入れておくようにすると、自ずと小論文対策にも繋がります。国内外問わずどのように報道されているのかも確認できれば、それぞれの問題を比較することが可能になります。できる限り日本で報道されているニュースだけではなく、海外のニュースにも目を向けて広い視野で物事を捉えるよう意識しましょう。
小論文.comでは、小論文.comのX(旧twitter)【小論文の時事】において特に最新の海外時事情報(特にイギリス、アメリカ、ドイツ、スウェーデン)を中心に速報でお送りしています。すべて日本語訳でお送りしておりますので、ぜひご利用ください。
小論文.comの講座一覧は、こちら公式サイト「小論文.com|講座案内」よりご確認いただけます。※面倒な会費のお支払いなどは一切ありません。
また、小論文.comが自信を持ってお届けする「オリジナル電子書籍」の販売も行っております。下記のnote記事やマガジンから電子書籍のご購入が可能です。是非ご覧ください。