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他人の経歴を得意げに話す人

高校生のとき、担任の教師の経歴を、あたかも自分ごとのように話す友人がいた。その教師は、超難関大学を合格していたにもかかわらず、しっくりこなかったため浪人。その後、難関ではないものの自分が元々興味を持っていた私立大学に入学したという、本人の口から聞いたらなかなか面白い経歴(学歴?)を持っている(わたしがここで書いても面白くないのは、この経験がわたしの経験ではないからだ)。
だが、その教師が言っていた経験談を、その友人はさも得意げに話していた。自分の経験ではないのに、どうしてそんなに話したくなるのだろうと、当時も疑問に思っていた。

時はたって社会人に。
わたしは一度、職場の異動を経験している。とはいえ、前の職場の同僚たちとは友人関係にあり交流を続けていた。
その友人たちとあるとき食事に行った。
わたしは正直話したい話題も特にはなかったし、彼らと音楽や映画など共通の趣味もあるわけではない。共通の話題といえば、それは前の職場の人間関係くらいだ。
わたしは「〇〇さん、相変わらずな感じ?」というような、軽い話題のつもりで、前の職場での上司についての話を投げかけた。
そこから友人たちの間「だけ」でわたしが知らない「現在の」職場についての、仕事の話や上司の愚痴などに話題が支配されてしまったことは、想像しうるのではないか。
皮肉にもわたしは、わたしが投げかけたボールによって、自分が話題から弾き出されてしまったのである。

そんななかにもいくつかわたしも対等に話せる話題があって、それは上司の中途採用時の話や、先輩社員の恥ずかしい失敗談といった類のものだった。おそらく残業や出張のときにでも本人から聞いたのだろう。
そんな話をしている友人もまた、これ以上なく生き生きとしていたのであった。
職場の上司と言えども、所詮は親子ほど年齢の離れた他人であり、価値観も違えば子供のときに見ていたテレビコマーシャルも違う。そんな人間の身の上話など、微塵も興味がないのだが、それを話している彼らはとても楽しそうだった。

結局、仕事で知り合った人間とする話なんて、仕事の話が大部分を占めるのは当然のこと。
たまに盛り上がるのは、どうしようもないバカ話やエロ話だったりするのだが、その内容はここには書かない。デメリットはあるがメリットがないから。
どうせ自分も、話で盛り上がるのは「個人的である」ことが重要である。その個人性は、公にはどこにも書けないような、ドロドロと溜まった膿のようなものであり、それを嬉々として会話することはこの上なくグロテスクなことでもある。
しかし、それはだからこそ、とても楽しいのである。

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