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「入学難度の高くない中高一貫校」でも進学する価値が非常に高い理由
1年ほど前、中高一貫に関して、大学受験をする上での「先取り」の優位性について書きました。
今回はそれ以外の点にも触れながら、超進学校(灘、開成など)以外の中高一貫校に進学するメリットについて書いていきたいと思います。
私の勤務校も併設中学校を抱えている中高一貫教育を実施しているため、今回の記事は基本的にはポジショントーク的なスタンスとなります。
とはいえ、客観的な事実をもとに書いており、事実と異なる点は無い、ということは補足しておきます。
「先取り」などのカリキュラム上の強み
これは以前書いた内容ですが、多くの中高一貫校のカリキュラムは大学受験をするために最適化されています。
高校入試で分断を受けないというカリキュラム上のメリットは非常に大きいものがあります。
英語や数学の受験対策、特に自学の自由度を上げるという観点では先取りをした生徒と、高3から受験勉強に入る生徒では使える時間と修得レベルに大きな差が出るでしょう。
こうしたカリキュラム上の強みは中高一貫という時間の余裕によって得られたものであるため、基本的に入学偏差値にあまり依存しません。
そのため、高偏差値の学校ではなくてもこうしたメリットを享受できる可能性は高いでしょう。
しかも現在はオンラインの予備校や塾、動画授業などが充実しており学校での範囲学習が速く終わることはこれまで以上の強みとなっています。
学習意欲や進学意識の高い生徒が多く、外れ値の生徒も存在する
それほど入学難度の高くない学校であったとしても、基本的には大学進学を目標とする生徒しか存在しないのが中高一貫校の特徴です。
これは都会の文教地区の公立学校は別として、地方の中学校との大きな違いです。
そのため、ある程度は学習意欲、進学意識の高い生徒が地域の学校と比較して多いでしょう。さらに、これに付随して校内の治安がある程度保たれている可能性も高いでしょう。
(綱紀を乱す生徒に対しては制度上は退学処分を行うことも可能です)
加えて、比較的偏差値の高くない中高一貫校であっても平均値よりも極端に成績の良い生徒、外れ値的な生徒が在籍していることが多々あります。
そうした生徒は特待生や学校関係者の子弟などのケースがほとんどですが、彼らのような成績や意識の高い生徒と近い距離で学習できる環境は、意欲や意識を高めるのに極めて有効です。
友人関係が密になりやすい
中高6年間を同じ環境で生活することで、友人関係が密になりやすいのも特徴です。
一般的には大人になってからの交友関係は業務上のもの以外は、大学時代の友人との付き合いが残っているケースが多いように思います。
(私は友人がほとんどいませんが、それでも僅かながら大学時代のつながりは存在します。友人がそれなりにいる知人に聞いても、結婚式などの招待客を見てもその傾向が強いように見えます。)
ところが、中高一貫校の生徒は卒業後も定期的に会って近況報告をしたりするケースが多いようです。
これは私の勤務校の一貫卒業生の話を聞いてもそうですし、他校の一貫校を卒業した方や他校の教員の方の話を聞いても共通するようです。
アイデンティティの形成に深く関わる時期の6年間での交流は、一生ものになりやすいのではないでしょうか。
デメリットも存在する
もちろん、こうしたメリットだけではなくデメリットも存在します。
その多くはメリットの裏返しです。
先取りがあるということは、一度ついていけなくなるとリカバリーが難しいということです。
学習意欲の高い生徒や友人関係が密になりやすいということは、その空気に馴染めなかったり、人間関係でトラブルが発生した場合に逃げられないということです。
また、多くの中高一貫校は私立であるため学費の負担が大きいことも問題となります。いわゆる授業料もそうですが、副教材や体験実習などの費用も公立よりも高いことがほとんどです。
公立中高一貫の場合は授業料は無料ですが、私立同様に副教材他の費用は地域の公立中学校よりも負担が大きいようです。
所得に応じた就学支援を受けることは可能ですが、支援額も定額で一般的には私立中学校に通わせる世帯は対象外になるケースが多いようです。
(高校の場合は対象世帯と支援金額が増加するため、私立高校へ通う負担はかなり低下しています。)
さらに、地域の公立中学校と比較して通学時間が長い可能性が高いこともデメリットとなるでしょう。
「入学難度の高くない中高一貫校」という選択肢
以上のように、極端なエリート養成校ではない「入学難度の高くない中高一貫校」に通うことは、メリットも大きく選択肢としての魅力があるように感じます。
一方で公立中、公立高校というスタンダードなルートも決して悪いわけではなく、個人の資質次第では非常にコスパの良い選択となるでしょう。
ただ、地方のマジョリティに属する人たちは私立中学校や中高一貫校の存在自体を認識していなかったり、知ってはいるが最初から選択肢に入れていないケースも多いようです。
そうした人たちが自分自身や自分の子供の選択を広げるという意味で、認知度を上げられれば、と思います。