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学習の「習慣化」とその方法

私は学校の教員として受験指導を行っています。
もちろん私達の授業での教科指導もある程度は学力向上に寄与しないわけではありませんが、実際のところ学力は本人の努力に依るところが大きいのが現実です。

そして学力向上において最も重要なのは学習の継続化です。高校入学時点から考えると、高校1年生には1000日もの時間があります。この莫大な時間をどうやって学習に振り分けるか。この期間、学習を継続できれば大きく学力を向上させることも可能でしょう、

しかし、この継続というのが厄介です。三日坊主という言葉が示すように、多くの人は継続するのが苦手なのです。そこで重要になってくるのが「習慣化」です。
「習慣化」が上手くできれば様々な取り組みへの継続を無理なく実行することができるでます。

ここでは私がホームルームや面談などで実際に行った学習方法の指導をベースに「習慣化」の手法をまとめていきたいと思います。

補足ですが、私の住む九州においては関東関西の学力上位層の人々ほど学習に取り組むという文化が希薄(その分学校が強制的に行う「課外授業」などが盛んですが)です。したがって首都圏や関西圏の受験生からすると随分と甘い話に聞こえることがあるかもしれませんが、そのあたりを割り引いて読んでもらえれば幸いです。


①時間と中身のハードルを下げる

まず、「習慣化」において最初の関門は初めの一週間、継続をできるか、になるでしょう。

このとき、継続を妨げる要因の最たるものは(本人にとって)難し過ぎる、分量が多すぎる、ことになります。
これを解決するのは単純で、最初の一週間はとにかく絶対に実行可能なぐらい短時間で、物足りないぐらいの分量を設定することです。

注意すべきなのは、最初の段階は本当に簡単に取り組める時間、分量で良いと言うことです。計画段階というのはモチベーションが最も高い状態です。その時点では少ないと思っていても、実際に取り組むと結構骨が折れるなんてことはよくあります。

このように時間と量を減らしスタートすれば、実行は容易です。そして一週間や一ヶ月ごとに分量や内容の見直しを行えば習慣化に一歩近づくことになるでしょう。

見直し段階でも、急激な増量は避けたほうが無難です。元の木阿弥となってしまいかねません。


②阻害要因を視界から排除する

「習慣化」を阻害する要因に環境の問題があります。
特に、自室で学習を行う場合は漫画やゲームなど(学習の習慣化に)有害なものが多数あります。

これらを全て捨てることができればいいのかもしれませんが、多くの人はそんなことをすればストレスを抱えるだけで、決して良い変化にはならないでしょう。

そこで、とにかく学習中に手の届く範囲や視界に入る範囲に阻害要因となるものを排除する、ということが改善方法になると考えられます。

一般的に学習机は壁向きに設置してあることが多いと思います。そうであれば、机に向かって座った時に、背中側に、椅子から立ち上がらないと取りにいけない場所に移動させる、などが考えられます。部屋の外に棚を置くというのも良いでしょう。スマホなども電源を切る、機内モードにして手元から少し離れた視界外で充電するなどは有効でしょう。


③使用する道具をまとめてセットにする

学習を始めると、辞書を探したり、テキストを探したり、いざ開始するまでに無駄な時間を使うことがよくあります。

これは明らかに「習慣化」の阻害要因です。そこで学習する教科や内容などに合わせて道具をまとめて、箱などに入れてセットしておく、という工夫が有効です。

書類ケースなどにプリントや参考書、辞書などその学習をするのに必要なものをまとめて入れておきます。
そして、その学習をするときはそのケースをもって机の上に広げ、学習を開始する。終わったら、またそのケースにざっと入れて片付けを終了。こうすれば道具探しという不毛な時間を極限まで短縮できます。


④中断を中途半端なところで行う

学習をしていると、思わぬアクシデントで中断せざるを得ないことがあります。そういう時に、多くの人は切りの良いところまで一旦終わらせてから終了するでしょう。

しかし、そういう時に中途半端な場所で終わらせるという工夫が「習慣化」にとって有効になることが多々あります。

具体的には数学の小問の3つの中で2番を解いている途中や、英語の長文を読んでいる途中で中断する、ということになります。

なぜこうするかというと、再開するときのモチベーションの向上を図るためです。
学習などを中断すると、再開時にはなかなかやる気が出ない状況になることが多いでしょう。そんな時に、中途半端で終わっているところまではどうにか終わらせたいという心理が働きます。

実際始めてみれば、次々と集中して取り組むことはできるのです。動き出しにエネルギーが最も必要という、心理的な慣性の法則とでも言う現象を逆手に取った手法と言えます。


⑤周囲の人間に「習慣化」をすることを話しておく

「習慣化」において周囲の人間の理解はとても重要です。

親や兄弟が学習を邪魔する(相手側からすれば悪意のあるものではないとしても)というケースは多いのです。

そこでどの時間には学習をしている、ということを事前に説明し、可能な限り阻害要因を持ち込ませないようにするのです。

これは友人に関しても同様で、メールやSNSでの連絡をしない時間を設定することで集中を妨げられないようにすると効果が高いです。

さらにこの周知行動は副次的な効果があり、周囲からの視線から学習へのプレッシャーとしても作用します。

最近は、友人間で学習中にビデオ通話を常時ONにしてお互いを監視する状況を作ったり、タイムラプスを撮って見せるなど工夫の幅が広いようです。


⑥報酬を準備する

一定期間の「習慣化」に対し報酬を準備することは、習慣定着においてとても有効です。

自分で自分を褒める、という単純なものから、一週間続けたらあのスイーツを食べる、などちょっとしたご褒美を準備するところまで報酬の内容は千差万別です。

この手法は脳内報酬系という人間の神経回路の性質を用いた手法で、継続には非常に効果的です。


⑦「習慣化」をする前に今の習慣を減らす

これは「習慣化」をする前段階の話になりますが、新しい習慣を生活の中に取り込む場合、現時点で行っている習慣の何かをやめる、ということです。

そもそも私達の時間は有限であり、今の時点で無駄な時間は存在していないのです。何もせずにボーッとしている、という人がいたとしても、その人にとってその時間は必要だからボーッとしているのです。

したがって、何かを増やすためには何かを減らすしかないのです。

例えば、夕食後の大して興味のないテレビを眺めている時間であったり、帰宅後のソシャゲに課金している時間であったり。

要は学習をしたいのならば、その引き換えに自分の何らかの時間を犠牲にするしかないのです。
ここで注意しなければならないことは、絶対に睡眠時間を引き換えにしてはいけない、ということです。睡眠時間は学習効率に大きく影響します。減らせば、その分効率が落ち時間あたりの学習量は減少します。それでは本末転倒です。


以上、7つが学習の「習慣化」ということで私が授業などで話している内容になります。

これ以外で具体的な手法では「ポモドーロテクニック」などがあります。

私自身、自分の仕事や学習に対して利用しているものですし、在宅勤務などで自分自身を進捗管理をする必要が増えた社会人の方などには使える点があるのではないでしょうか。

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