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千葉の小学校の塾講師活用に関して、教育委員会の対応は絵に書いたような支離滅裂、厚顔無恥


千葉県の小学校の取り組み

 千葉県教育委員会は2023年度、児童の学力向上のため県内3つの小学校で塾の講師による授業を試験的に導入しており、その授業がマスコミに公開されたというニュースが報道されていました。

小学校の教員の算数指導に関しては以前から方々で問題になっており、今回は働き方改革と合わせた形での試験的導入ということのようです。

塾講師は教員よりも授業が上手いか?

こうした取り組みの前提となるのは、塾講師が教員よりも授業が上手いという考えがあります。

ここからの内容はあくまでも主観ですが、こうした依頼を受ける塾に在籍する講師だけに限れば間違いなく塾講師の平均値は教員よりも高いでしょう。
(個人の塾や自称塾講師などはその質がピンキリで、そこまでを含めると試験で選抜されている分、教員は一定のクオリティが確保されています)

基本的には授業そのもの質が給料に直結していて、実践的な研修なども多いためです。そもそも授業適性の無い講師は離職するケースがほとんどで自然に淘汰されていくからです。

私自身、大学時代は塾で講師をしていましたが正規、非正規を問わず授業が優秀な講師をたくさん見てきました。少なくともその塾の講師の多くは私がそれまで小中学校で受けた授業よりも説明や引き出し方が優れていたように感じます。

しかしここで問題になるのは、あくまでも「授業」の定義が「講義型」という条件の下において、ということです。

小学校の授業は対話型、非講義型が推進されているのに

昨今の教育界では講義型の授業を否定する動きが活発です。

文科省は「主体的・対話的で深い学び」をスローガンに掲げ、アクティブ・ラーニングを強く推進してきました。

生徒の学び合いやグループディスカッションなどを盛り込み、協働的な時間を作ることを授業のモデルとしてきました。

日本的、近代教育のモデルである一斉授業、集団授業、教え込みを否定し、個別最適な学びを推奨していたはずです。

しかし、今回の塾講師の授業を見る限りにおいては、明らかに旧来型の講義型授業そのものです。

千葉県の教育委員会はこれまで推進していた方向性と全く真逆な政策を行っていることになるのではないでしょうか。

言うまでもありませんが私自身、講義型の授業を否定するものではありません。考える材料になる部分に関しては覚えたり真似したりする部分が必要で、その習得にはテキスト学習か講義型授業というのは効率性が高いからです。

しかし、文科省の指揮の下、教育委員会は対話型、非講義型授業の旗振りをしていたはずの教育委員会が見解を正式に変えるわけでもなく矛盾した制度を導入するというのは支離滅裂、厚顔無恥と言わざるをえないでしょう。

塾講師をゲストティーチャーとして招くことは良案

教育委員会の姿勢そのものに関しては疑問ですが、個人的にはこうしたゲストティーチャー制自体には賛成の立場です。

近年一部の自治体などでは実装されつつある小学校教科担任制もコンセプトとしては同じだからです。

実際、小学校の教員の中には算数を教えることに対して自信が無かったり、客観的に見て知識が不足している人は決して少なくありません。

こちらは以前書いた記事ですが、教員養成課程の多くが私立文系型の入試になっているのはその原因でもあります。

したがって、自信のある教科の教材研究を行い、苦手教科は得意な人に任せるなどの分担は決して否定できるものではなく、むしろ授業改善と働き方改革の両方に効果をもたらすはずです。

学校規模や教員の人数上、そうした対応が難しい小規模校などは塾講師をゲストティーチャーとして活用できれば、より多くの学校で教科分担制が実現できるでしょう。(教員免許のハードルはありますが、昨今の免許価値の低下を見るに問題ないでしょう)

とはいえ、こうした塾講師活用案も所詮は対症療法に過ぎず、教員の負担軽減の抜本的な解決案ではありません。

教員採用志望者が増加するような業務改善が必要なのは間違いないでしょう。

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