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スクールカウンセラーの「やりがい搾取」は学校組織の構造的問題
スクールカウンセラーは「やりがい搾取」
スクールカウンセラーの職務が「やりがい搾取」になっているという記事を見かけました。
記事によると様々な「やりがい搾取」体質が恒常的に存在し、それがカウンセラーたちのストレス要因になっているという実態が明らかになりました。
最多は無償労働
アンケートの中で、最もストレス要因になるという意見がでたのは無償労働です。
この結果を聞いて多くの教員は「まさか」という反応をすることは無いでしょう。
おそらくほとんどの学校現場に関わる人間は「やはり」と感じるだけでしょう。
公立学校の教員は残業手当が出ません。
これは給特法という公立教員に限定して適用される法律によって定められているからです。
しかし学校に関わる他の職業の人はそうした法律は当然ながら適用されません。
ところが、学校に関わる業務を行う場合、授業などが原因で教員と連絡が取れないケースが存在します。そうした場合、どうしても教員に合わせた対応を取らざるを得ないケースが発生します。
結果、学校の教員に引きずられる形で無償労働の巻き添えを食うというのは決して少なくないでしょう。
奴隷労働を生み出す現代の学校の構造
カウンセラーのストレス要因で、無償労働に次ぐのが雇用の不安定、社会保障の無さ、となっています。
公立教員の場合、正規採用であれば身分保障が存在しますが、任期付き採用の常勤講師や非常勤講師(会計年度任用職員)の場合も同様の悩みを抱えるのは言うまでもありません。
こうした人たちが不安定な立場に置かれながら、それでも職務を行わざるを得ない理由は「生徒のため」という行き過ぎた奉仕精神です。
そして学校の業務は現在、この精神に支えられてどうにかぎりぎりの段階で成立しているのです。
部活動も、保護者対応も、その他の諸業務もほとんどが時間内に終わることのないものです。
それらを時間外で、かつ無償で成立させているのは学校職員の無償での奉仕です。
(この手の話において、民間でもサービス残業はある、公務員が甘えるなといった暴論を振りかざす人がいますが、それはその企業や業種における問題であって、学校を巻き込んでも意味はありません。)
そして無償奉仕を前提にシステムが成立している学校という組織の構造そのものが奴隷労働を生み出しています。
その中で働くスクールカウンセラーが被害者になるのはむしろ必然とさえ言えるでしょう。
内部の問題だけではない
学校に関わる業者もまたこの被害にあうケースが存在します。
生徒の急なキャンセルに泣き寝入りをしたり、教育という美辞麗句で利益を度外視した対応を迫られるケースは少なくありません。
先日問題になった給食業者、ホーユー(この会社自体もそれなりに問題が示唆されていますが)やその代打として弁当を採算オーバーで提供しているというのはその代表的な例でしょう。
学用品などの業者や旅行会社など、ほとんどの業者は学校に関わってもそれほどうまみがあるわけではありません。
それでも彼らが協力を惜しまないのは、学校教育が社会貢献につながるという意識が根底にあるからです。
金儲けを悪とする、社会的問題
スクールカウンセラーに見る問題の根本原因は学校組織の構造的問題です。
そしてそのさらに裏には、金儲けを悪とする価値観があります。
この価値観自体を簡単に変えることはできません。また、スクールカウンセラーの雇用に関する問題自体を教員が解決することはできません。
しかし、価値観を次の世代に向けて是正することができるのも教員の仕事です。
適正な報酬を受け取り、その分の仕事をしっかりとこなす、逆に報酬無しでは責任ある仕事はできない、そうした価値観を現場の教員が理解し、それを生徒に伝えることが必要なのではないでしょうか。