日大の不祥事続出問題、日本社会における組織の構造的な問題
日大、重量挙げ部の金銭不正徴収
ここ数年、日本大学では不祥事が続出しています。そんな中でさらに新たな不祥事が明るみになりました。
今回の内容はもはや部活動という学内組織が行っているとは思えないほどに悪質です。本来、奨学生として学費が免除になっている学生に虚偽の通知を行い、あたかも大学側のように扮して金銭をだまし取るという手口です。これは詐欺集団や犯罪組織のそれに類するものでしょう。
これまでの不祥事
これまでも日大では多くの不祥事を抱えていました。この数年の不祥事の先駆けとなったのは2018年のアメフト部のタックル事件です。
これは相手方の関西学院大学の選手に背後からタックルするし負傷させるというものでした。ちなみにこの年には日大イベントサークル事件も発生しています。
その次に話題になったのは2021年の理事長の背任事件です。
これは付属病院の建て替えを巡って金銭の授受が発生したというというものです。この事件がきっかけとなり理事長解任、新理事長に作家の林真理子を任命しコンプライアンスの順守とガバナンスの徹底を目標として役員の刷新が行われました。
しかしその後も不祥事は続きます。
2023年、これまたアメフト部の部員の大麻汚染、薬物事件による問題からアメフト部は解散します。
2024年には業者選定での不適切な契約が内部監査で発覚します。
多くの大学でもこうした問題の一つや二つは過去を遡れば存在します。しかし日大の場合、あまりにも頻繁に起こり過ぎているようにさえ感じます。
日大の問題は日大の組織体制に起因する
日本大学におけるこうした問題の多くは組織の統治の問題が起因すると言っても過言ではないでしょう。
理事長の背任事件はその典型例ですが、要はトップの専横を止めることができない組織の脆弱さが事件を生み出したと言えます。逮捕起訴された故田中前理事長は5期13年という長期政権を敷いた代表です。
彼の存在は日大が抱える問題や空気感を表しているように見えます。
体育系の上意下達の文化、内部の論理や常識がコンプライアンスよりも重視される風土などがそうした問題の根本にあります。
今回の重量挙げ部の不正徴収はその典型例ですし、業者選定問題も同様です。大麻汚染に関しても部内での常識が優先された結果、進行した病ではないでしょうか。
そしてその風土が組織の末端にまで行きわたっているのが現代の日大の姿です。たとえ理事長を外部から迎え入れたとしても、組織が培った風土がそこ数年で刷新されることはないでしょう。
ここ数年で表面化した問題の根底にある日大の組織体制にあるというのはあながち間違ってはいないのではないでしょうか。
日本の様々な組織が同様の問題を抱える
恐らくではありますが、少なくない日本の組織が同様の問題を抱えていることも想像に難くありません。
独自の商習慣や慣行、常態化した法令違反と隠ぺい、この手のものが現在多くの組織で表出化されつつあります。電通過労自殺事件や教育現場の労働問題はその一例でしょう。明らかに労基法違反となっているにもかかわらず、問題とならない状況は明らかに異常なのです。
今回のような日大の問題が日大関係者にとって頭を抱える種であることは事実ですし、こうした状況が放置されてきたことそのものは決して喜ばしいものではありません。
しかし、日大のような大きな組織がコンプライアンスの違反による取り締まりを受け、現代的な組織へと変貌することは日本的組織の多くが影響を受ける大きなきっかけになるのでは、と期待もまた存在します。
しっかりと膿を出し尽くすことができるよう、林真理子氏の尽力に期待したいところです。