
【題未定】受験生を裏切る大学の決断──清泉女学院大学の一般選抜中止を問う【エッセイ】
長野県にある清泉女学院大学(次年度より共学化により清泉大学へ改称)が一般選抜を取りやめにしたという話題をニュースサイトで見かけた。どうやら総合型選抜や推薦型選抜で定員数を確保できたために急遽取りやめにしたということだ。
今年の入試において、清泉女学院大学は受験生確保のために共学化を行い、その目玉として人文社会学部を新設したという。そしてその広報活動を熱心に行った結果、予想以上に受験者が増加して年内入試で入学定員を確保してしまったようだ。
こうした措置になった原因の根本にあるのは、定員充足率で補助金を減額するシステムの存在だ。おそらく清泉女学院大学としても一般選抜での合格者も含めて入学者が増加することは歓迎すべきことである。しかし、文科省は定員超過をしてしまった場合、補助金の減額を行う規則を課している。このため仮に一般選抜を実施した場合、入学者が定員超過となる可能性が高いため、試験そのものを中止したということのようだ。
今回のトラブルに関して、もちろん原因である文科省の規則そのものには問題があるのは事実だ。しかしやはりそれでもこの清泉女学院大学の対応は受験業界に身を置く立場からすると最低最悪の対応だと感じる。
大学受験において、募集要項は公的な文章であり、基本的にここに書かれていることは全て実施するものという前提で受験制度は成立している。受験資格や教科、範囲、受験会場、日程などすべてここに書かれているものが信用に足る事実として受験生は受験先を選択する。
ところがこの情報が大学側の都合によって変更になるような不確かなものであるとすればどうなるだろうか。当然ながら次年度以降、あるかどうかもわからない試験を受ける受験生はほとんどいなくなるだろう。加えて公的な約束事を自己都合で反故にする大学というイメージさえつくはずだ。そんな大学の志願者は減ることはあっても、少なくとも今後数年間は増加することはありえないだろう。
今回の件は当事者である清泉女学院大学だけの問題であればまだ話は簡単である。しかし実際、今回のような募集要項を無視した変更が許される場合、他大学においても同様のケースが発生することは想像に難くない。清泉女学院大学の今回の対応は自大学のみならず、大学入試全般に対する信用失墜行為であり、文科省は厳正な調査と厳格な処分をする必要があるだろう。
昨今では東洋大の年内入試の学力試験実施などが問題となっていたが、今回の清泉女学院大学のケースはそれとは比較にならないレベルで大きな問題である。なぜならば、今回のようなことを許せば、大学の都合だけで受験生に対していくらでも不利な変更を許容することになるからだ。
とはいえ今回のような対応を行った根本には文科省の補助金による大学支配の問題があるのも事実だ。それこそ、大学無償化、あるいは私立大学の現在の国公立大学相当の学費補助等の制度があれば、こうした無茶なふるまいをする私立大学が出ることもなかっただろう。
清泉女学院大学への文科省からの処分、そして文科省の補助金行政への批判、この双方が大学入試の信用を担保するうえで必要になるのではないだろうか。大学、文科省、ともに猛省すべきである。