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【題未定】強制される承認欲求:「BeReal」が招く社会的リスク【エッセイ】
少し前から「BeReal」なるスマホアプリが十代の若者を中心に流行している。アプリそのものはいわゆるSNSに類するものだが、他のアプリと異なる点が一つある。それは一日に一度アプリから通知が来て、その通知の2分以内に写真を撮って投稿することを迫られる強制力を持つという点だ。
「BeReal」が持つ強制力は心理的、そしてシステム的な双方でしばりを掛ける仕組みとなっている。具体的には、2分以内に投稿することが求められる点に関してがその代表例だ。この投稿はその時点で立ち上げたカメラでの撮影によるものでなければならない。つまり事前に撮影した画像データではなく、写真を撮影することを要求されるということだ。そしてその投稿が出来ない場合、友人などの投稿がぼかしが入った状態でしか見られなくなるというシステムによる制限を掛けている。このため利用者は通知が来るたびに、いついかなる場所であっても写真撮影と投稿を迫られることになるのだ。
このアプリの恐ろしいところは、写真撮影においてフロント、リアの双方のカメラが同時に起動し撮影するという点だ。そのため写真に無関係な人間が映り込む可能性は極めて高い。加えて更衣中などの場所で撮影する不届き者が存在した場合、全く無関係な第三者出た合ったとしてもデジタルタトゥーとして記録が残ることになってしまう。さらに位置情報の共有やペアレンタルコントロール機能が存在しないことなども考慮すれば、未成年の使用に関して危険性が高いと言わざるを得ないだろう。
また授業中や就業中に通知が来て、カメラの使用が不適切な場において撮影をしてしまう若者が増加しているという。もちろんこのアプリに乗せられて撮影をする愚か者が全て悪いのは事実であるが、明らかにそれを助長するような仕組みが組み込まれているアプリに責任が全くないとは到底言えないだろう。そもそもSNSというアプリ自体が承認欲求を拡大させる仕組みを内包しているのだが、この「BeReal」はそこに時間制限と閲覧制限を加味したことで依存性が過度に増すことになっている。
正直、私は40を過ぎた中年であるが、新しい技術やその利用に関しては極めて柔軟になろうと意識している方だと自認している。事実、新しく表れては消えた数多のアプリやSNSなどは率先して試してきたし、その是非に関してはあくまでも中立に判断するように心がけてきた。多方面から批判のあるTikTokに関しても、数多に存在する動画の低レベルなクオリティはともかくとして、ショート動画の価値を高めた功績は大きいという認識は持っている。(アプリの開発元の某国その他に関する話は別として)
しかし今回のこの「BeReal」に関しては流石に容認することは難しい。時間を制限する依存性、撮影に周囲を巻き込む危険性などを考えれば、このアプリへのアクセスに関して未成年に何らかの使用制限を掛けるべきではないだろうか。
繰り返しにはなるが、言うまでもなくこうした悪質なアプリの釣り行為に引っかかる愚か者に責任があることは十分に承知している。しかしこのアプリは釣られた愚か者本人だけでなく、その場に偶然居合わせた第三者さえも巻き込む危険性を孕んだ厄介な存在なのである。
この文章に目をとめたAppleやGoogleのコンプライアンス部門の担当者、そして我が国の有識者に置かれてはこのアプリの仕様と使用、是非に関してオープンな場で議論をしていただければとお願いしたい次第である。