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「本を読まない若者」への対策が「図書館の整備」という小学生以下の回答をする文科省
21世紀出生児縦断調査
文科省は平成13年に生まれた特定の子供に対して経年で調査を行っているそうです。
現在、この調査対象者は21歳になっています。
今回、その調査で21歳の人達に読書量が極めて減少しているということが分かったようです。
「この1カ月に読んだ紙の書籍(本)の数」との質問に「0冊」と答えたのは62・3%。「1冊」19・7%、「2、3冊」12・3%、「4冊以上」5・8%だった。23年(10歳当時)の調査では、子供の読書習慣を保護者に尋ねて「1カ月に0冊」は10・3%しかいなかった。
また、令和4年調査で、「この1カ月に読んだ電子書籍(本)の数」を尋ねても「0冊」が78・1%を占めた。
少なくとも、子供のころに比べると読書量が減少していることが明らかになっています。
大人は読書をするか
まずもって、問題なのは現代の大人たちは読書をしているか、ということです。
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※取次ルート/出典『出版指標 年報 2022年版』
上の図は出版物の推定販売金額のグラフで、出版物の市場規模を示しています。
1996年をピークに右肩下がりですが、特に雑誌の減少が顕著です。
このグラフで注意すべきなのは「金額」ベースということであり、販売部数ではないのです。
つまり販売単価を考慮する必要があります。
こちらの記事内によると(出版科学研究所調べですが)2001年の文庫本の平均価格は587円、2021年に732円になっています。
仮に96年も587円(もっと安いと思いますが)とした場合
1996年:10931億÷587≒18.6(億冊)
2021年:6804億÷732≒ 9.3(億冊)
市場規模は半分になっており、そもそも若者だけでなく本を買わない人が増えているのは明らかです。
電子書籍の市場は伸びているのに
では電子書籍はどうでしょうか。市場自体はグラフから伸びていることが分かります。
にもかかわらず若者は利用していないようです。
この理由の一つとしては考えられるのは、単純に費用の問題でしょう。
現物が残らない電子書籍は同じ金額の場合でも割高感があります。
またスマホで読むことを考えると、ほかに読む対象物が無料でいくらでも検索できる端末を使っている状況でどれだけの人が費用負担を行って電子書籍を購入するでしょうか。
特に若者の場合、自由に使える金額が限られているため書籍購入を決断すること難しいでしょう。
収入が増加し、電子書籍の金額2000円以下を負担に感じなくなった場合は、いわゆる「ポチる」回数が増加することは予想されますが、2000円程度に負担感を感じている人が買うことは少ないと思います。
図書館は利用されるか
ならば文科省が言うように、図書館を充実させれば若者の読書離れは解決するのでしょうか。
正直これも難しいように感じます。
インターネットが発達した現代社会において、どこかその場所に行かなければできない行為は相当数減少しました。
もちろんスポーツやイベント、ライブなどは生で体験したり、視聴したりする体験価値が高いためいまだに成立しています。
しかし本を読む行為はどうでしょうか。残念ながらそれらの体験とはやや趣がことなるようです。
基本的に本は家でも読んでも、図書館で読んでもその体験価値はそこまで変わりません。
しかも借りるのならばなおさらです。実際レンタルビデオ店の多くが廃業していることを考えれば答えは明らかでしょう。
結局のところ家で、スマホで、即時に、本を無料で読める仕組みが無い限りは本を読む人は増えないでしょう。
電子図書館という欠陥装置
では電子図書館があるではないか、ということになります。
これに関しても以前私が記事を書いています。
リアル図書館まで毎回借りに出かけるよりは便利ですが、登録するために一度は図書館を訪れなければいけないこと、電子図書の貸し出しは順番待ちが存在するため即時性が低いことなど欠陥が多い仕組みとなっています。
読書という形式の終焉
結局のところ読書という形式は人類が獲得した情報収集手段の一形式として、そのトレンドを終えようとしている、ということなのでしょう。
もちろん、好事家や趣味人がその形式を好むことは否定しないですし、実際インテリ層は依然として本を読んでいます。
読書という形式は本人の読書スキルによって大きな時短効果が得られるのも事実です。
しかし一方で読み手にスキルや能力を強いるという点においては動画などの後発手段に劣るのも事実です。本は依然として優れた情報伝達手段であるものの、徐々に人を選ぶやや古典的な手段へと変わりつつあるのです。
そうした状況の変化を全く感じないままなのが文科省という組織なのかもしれません。
元リンクの記事中に文科省がコメントしています。
「読書は人生の豊かさにつながる。」
「図書館の整備などを通して読書の習慣付けを後押ししたい。」
この言葉が私には中学生の感想分文の締めにしか見えないのです。