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【題未定】闇バイト時代の到来:若者と社会が直面する新たな課題【エッセイ】

 昨今世間を賑わしているのが「闇バイト」問題である。この問題に関して多くの人はご存じだと思うが、あらためて定義を確認しておく。

闇バイトとは知人やSNS経由で「高額な報酬」「違法性はない」「短時間」「簡単」「即金」などを謳い文句にのせられて個人情報を提出したことで、匿名・流動型犯罪グループから使い捨てにされる犯罪行為の実行役や支援役、その募集のこと。

Wikipedia 「闇バイト」

要は「うまい話には裏がある」という格言をまさに体現するような犯罪勧誘行為ということになる。さてではこうした「闇バイト」がここ最近になって顕在化したのだろうか。

 まず考えられるのは、こうした募集が広範にかけられるほどにインターネットが発達したという理由だ。より正確に言えば、各自が一人一台の端末を持ち、そこでは一定のプライバシーが保たれ、しかも比較的クローズドなコミュニティ=SNSでやり取りや活発化したことが原因だろう。

 すなわちスマートフォンの普及は確実にこの傾向に拍車をかけている。PCは家族共有、人目のある場所で利用することも多いが、スマホはそうではない。その中でのやり取りは個人のプライバシーとして保護され、誰の目にもつかない。未成年でさえ全てを確認、監視することは難しいのに、成人した大人であればなおさらだろう。

 次に考えられるのが保護者や指導者の強制的、強権的(時には暴力的)な指導が許されなくなったためだ。こうした犯罪は個人のプライバシーの隙間をぬって勧誘や脱法的なつながりからの誘惑であることが多い。かつてはそうした関係性を強制的に断ち切る大人が周囲に存在するケースは少なくなかったが、現在の日本の状況においては、むしろそうした人の保護行為こそが犯罪として検挙されかねないだろう。

 実際、こうした「闇バイト」的な悪事の勧誘はそれなりに昔から存在していた。ところがそれらの勧誘者の多くは地域の鼻つまみ者や与太者、悪童の類、あるいは反社会的組織の構成員であった。そして彼らと交友関係にある候補、無職、有職少年などがその被害や当事者となってきた。しかしこうした交友関係は親や親族、学校教員、上司などの周囲の大人からの保護と強い指導(時には暴力的、強制的な)が存在したために、ある一定数の人にアプローチをするに過ぎなかった。

 ところが大人が未成年、あるいは未熟な成年へのそうした強制力を失ったのが現代である。SNSという閉じられた空間で怪しげな人間が若者にいくらでもアプローチをかけることが可能な状況が生まれたと言っても過言ではないだろう。

 そしてさらなる要因として考えられるのが、境界知能の問題である。境界知能とはIQ70~84程度の知能を指し、学業や社会的判断力において一定の困難を抱える層のことで全体の14%、およそ7人に1人の割合で存在する。そして「闇バイト」などの勧誘に騙されやすい若者の傾向として知的ハンディキャップを背負っている可能性が高いと言われている。『ケーキの切れない非行少年たち』にもあるように、犯罪行為に手を染める少年の多くは境界知能であり、認知機能に問題を抱えているという。

 ところがかつてはそうした少年たちを受け入れる職場や環境が存在した。こうした少年たちは中卒や高卒で就職をし、その職場や修行場の上司や親方が成人以後も疑似的な保護者として機能していた。これらが修行と名を借りた人権無視となっていたケースも存在はするが、境界知能の少年を更生、矯正する機能を有していたこともまた事実である。

 ところが社会が豊かになり、そうした層も大学や専門学校へ進学するようになった。そこでは生徒はお客様であり、子供のまま社会へ放り出されることになる。必然、「闇バイト」を生業とするような人々の餌食になるのは自明だろう。

 以上のことからも「闇バイト」の顕在化はそうした点から見ると時代の必然であるというほかない。とはいえ、この状態を放置することは青少年保護の観点だけでなく、治安維持の観点からも深刻な社会問題と化すのは間違いない。

 残念ながら現時点では「闇バイト」の周知と、関係者の取り締まりしかないのが悩ましいところである。せめて「闇バイト」に騙される若者が相談できる居場所のだけでも存在すれば何らかの改善に繋がるだろう。例えば青少年が相談できる窓口を増やし、SNSプラットフォームとの連携を強化するなどが考えられるだろう。

 私たち個人ができることはそれほど多くはない。しかし今すぐにできる子も存在する。それは若者の目につくようなSNSにおいて、そうした犯罪行為が存在すること、その手口を周知、拡散することなのではないだろうか。その書き込み一つが、今この瞬間に騙されかけている若者と、被害者を救う一言になるはずだ。

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