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「ICT授業は楽しい」という感想はICT授業の不浸透を示すバロメータ


「ICT授業は楽しい」

ベネッセがICT授業に関する調査を行ったところ、ICT授業が楽しいという児童生徒の割合は8割に上るという記事が上がっていました。

学校におけるICT機器を利用した授業について、小中高生の約8割が「楽しい」と回答していることが、ベネッセ教育総合研究所が2023年11月8日に公表した調査結果から明らかとなった。その割合は、成績による有意差はないが、利用頻度が多いほど「楽しい」と感じる傾向にあった。

記事内にあるように成績の上下を問わず、利用頻度の高さが「楽しい」という割合と相関関係があるようです。

ICT授業の浸透を示す結果ではない

こうしたデータを見て「ICT授業が普及したから増えた」という感想を抱く人は決して少なくないでしょう。

しかしこのアンケート結果から見えるものは実際にはICT授業が浸透していない、ということなのです。

そもそもICTを利用するということは普段の道具、ツールとして用いるということです。

これまでの学校で用いていた道具、例えば鉛筆やノート、連絡帳や黒板、そういったものの上位互換性能を持つツールとしてICT機器は定義すべきです。

さて、こう考えた時、生徒アンケートで「鉛筆とノートを使う授業は楽しい」、「黒板を使った授業は楽しい」という意見が8割を超えてくるでしょうか。

今回の結果から見えることは、「ICT授業が(ICTを利用しない他の授業よりも)楽しい」、「ICT授業が(研究授業的な特別なレクリエーション的で)楽しい」ということなのです。

ICTの文具的利用へと舵を切るべき

結局のところ今回のアンケートから見えることは、ICTを利用しない授業が利用する授業よりも退屈で、それはICTを用いた授業が普段の授業よりも特別な体験をできる、ということなのです。

しかし、こうした特別な授業のためにICT機器利用すること、「ICTの教具的利用」を行う限りはICTの真の普及は起こらないでしょう。

もちろん、普及した段階で当たり前のように利用した結果、以前は特別な授業であったものが日常の授業として行える程度の手間や準備で済む、というのであれば問題ありません。

仮に現時点でそうであれば生徒たちは「ICT授業は楽しい」という答えをせずに、「授業はICTを使うもの」と捉えて「ICT授業は特に楽しくない」と答えるでしょう。

つまるところ、現時点ではICTが普及したように見える多くの学校現場で「ICTの教具的利用」が行われ続けている、ということです。

しかし、ICTを使って教育成果を上げることを考えた場合、真に求められるのは特別な比の為の「教具的利用」ではなく、日常のあらゆる場所で無意識に利用される「文具的利用」なのです。

さらに言えば、「教具的利用」の多くは準備に時間を要し、教員の業務を圧迫しているのが現状であり、働き方改革に逆行することになりがちです。

普段の利用を柔軟に促し、当たり前のようにICTを利用する環境を実現することこそが本当の意味でのICT化であり、GIGAスクールでしょう。

学校現場や生徒から「ICT授業」という言葉、概念が消え去るまでもうしばらくかかりそうです。


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