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【題未定】公平な受験環境とは何か──熊本の共通テスト会場問題を問う【エッセイ】

 先日、大学入学共通テストが全国の各会場で一斉に実施された。今年も多少のトラブルはありつつも、大きな混乱もなく終了したということだ。多くの受験生は今後、その点数と予備校の集計結果とを突き合わせて、頭を抱えることになるだろう。

 この共通テストに関してたびたび問題となっているのが、受験会場の問題である。受験会場は実施主体として請け負った大学のキャンパスか、あるいは大学側が提携する機関で行われる。そしてその会場の条件が住んでいる自治体によって大きく条件が異なることで、受験生に対して公平性を担保できていないのではないか、ということが問題化している。

 ここ最近で言えば、共通テストの一週間前に熊本市内以外での共通テスト実施は難しいという考えを熊本大学の学長が示したニュースが報道された。天草などの受験生は宿泊をする必要があるが、試験のミスを防ぐためには県庁所在地である熊本市以外では実施できないという話であった。

 熊本県の共通テストの受験会場は熊本大学、熊本県立大学、熊本学園大学、崇城大学、東海大学の5会場のみ、全て熊本市に所在している。熊本県内の大学自体、ほとんどが熊本市内に立地していて大学の立地自体が偏っている。共通テストを利用しない九州看護福祉大学や平成音楽大学も玉名市、御船町と熊本都市圏にある大学であり、県南には大学が一つもないため、そもそもが偏りやすい構造となっていることも根本的な原因でもある。

 では九州内の他県を見てみよう。福岡県は県内複数個所に共通テスト会場が存在する。しかも筑豊や筑後といった人口がそこまで多くない地域であっても複数の会場が設置されている。福岡は全国的にも恵まれた環境であるが他県はどうであろうか。長崎県は離島が多い関係から9会場と会場数も多く、離島以外でも長崎市に2会場、佐世保市に2会場とバランスが取れている。宮崎県は全6会場宮崎市に4会場、都城市と延岡市に1会場ずつと県南、県北にバランスよく配置されている。

 鹿児島県は人口規模の割に受験会場が多いのが特徴だ。全14会場、うち鹿児島市内が10会場、残りは霧島市、薩摩川内市、鹿屋市、奄美市とかなり広範囲に散らばっている。

 一方で会場の数に偏りが見られるのは佐賀県、大分県である。佐賀県は佐賀市に2会場のみ、大分県は大分市に3会場、別府市に2会場である。大分の場合、別府市は大分市に隣接しているため、大分都市圏にしか会場が存在しない。

 こうした格差は共通テストに対応できる大学の有無や体制に依存するため、受験生が個人の力で変更させることは現実的には不可能だろう。とはいえ、遠方の生徒にとっては大きなハンディキャップとなっている。

 現行の全国一斉型の共通テストを実施する以上、避けては通ること課題であるのも事実だ。特に熊本県の場合、引受先の大学の立地自体に問題も多く早急に対応をすべきであろう。そして、残念ながら別会場で実施をできるほどにマンパワーを多く抱えた大学は、熊本県内においては熊本大学だけであるのもまた事実なのである。

 熊本県の地理的条件や大学の立地による課題を考慮すれば、天草や県南に受験会場を設置することは多くの受験生にとって大きな助けとなるはずだ。もちろん、これを実現するには大学や自治体の協力が不可欠だが、未来を担う若者たちが公平に受験できる環境を整えることは、教育機関の責務と言えるのではないだろうか。

 そしてその試験を実施できるのは熊本県内においては熊本大学しか存在しないというのもまた事実なのだ。

 熊本大学と小川学長におかれましては、ぜひ熊本市外における共通テスト実施を再考していただきたいと切に願うばかりである。

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