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「1人1台端末整備基金」は徳島県と同じ轍にならないだろうか?
1人1台端末整備で基金を文科相に要請
全国知事会の文教・スポーツ常任委員長を務める大村秀章愛知県知事は26日、文部科学省で盛山正仁文科相と会談し、GIGAスクール構想の1人1台端末について、高校段階も含め端末の整備・更新を全額国費で進めていくよう要請しました。
現在、小中学生に対しては自治体などが配布、貸与していますが高校生の場合は自費による購入が公立高校でも半数となっており、公費負担の場合も自治体による負担が一般的です。
ちなみにですが、私立高校の場合は原則自費負担となっています。(補助金による助成制度自体は存在するようです。)
高校生のICT端末の取り扱い
小中学生、特に小学生に関しては義務教育の中で端末を統一して配布するという手法に一定の合理性が存在します。
低学年等の場合は使い方の説明からしなければならないでしょうし、一斉に活動を行う場合は統一した機種を使う方が指導がスムーズだからです。
一方で高校生はどうでしょうか。
小学校で渡された端末を6年間使用し、新たに中学校で新しい端末を受け取ることは耐用年数を考えれば致し方ないでしょう。
しかし中学校で配布された端末が存在する場合、まだ3年間しか使用していないのに高校で新しい端末に変える合理性は乏しいように感じます。
また高校生ぐらいになると、ICT端末の1台や2台を持っている生徒は少なくありません。スマートフォンを持つ生徒の割合も100%に近くなっています。
こんな状況で果たして公費負担をしてまで一人一台に渡す必要があるのでしょうか。
現在持っている端末を利用する形でBYOD形式とOS間で共用可能なファイル形式やシステムを利用する方がよほど現実的、かつ経済的です。
高校生であればこそ、基本的にはPDFなどのファイルの扱いに慣れるべきですし、どうしても共通フォーマットで行いたい活動に関してはブラウザアプリを利用するべきではないでしょうか。
徳島県と同じ轍
先日から問題になっているのが、徳島県で一括で購入したCHUWI社のタブレットの大量故障です。
公立高校で一括購入をするとなると基本的には端末の機種ある程度絞るしかなく、また入札方式で購入となると廉価品しか入る余地はなくなってしまいます。
特に中華製タブレットの廉価品はCPUやメモリの性能が低いことがほとんどで使用感も劣悪であることを考えると、行政が一括購入をして生徒に渡すメリットは乏しいでしょう。
それよりは各個人で購入し、例えば高校生の在学証明書などの場合は割引ができる制度などの導入が望ましいように感じます。
そうしたことを考慮すれば、「1人1台端末整備で基金」なるものが徳島と同じ轍を踏む道であることは間違いないでしょう。
販売店や国産メーカーへの助成という案
もし仮に経済対策としてまで考慮するのであれば、既定の性能を満たしたICT端末に対して中高生の購入への補助を販売店に行う、あるいは国内メーカーへの支援を含めるとアカデミック版などへの助成などが考えられるでしょう。
いずれにしても高校生が使用する端末を行政が安く仕入れた粗悪品にしてしまうことはICT教育、情報教育の観点からも決して賛成できません。
高校は義務教育ではないこと、自己判断が求められる年齢であることからも、選択の幅を持たせた上で、利用頻度の高低や目的に応じて個人が選択できる状況を作ることが必要ではないでしょうか。