
栄養教諭「ゼロ」は市場経済の必然
栄養教諭「ゼロ」
教員不足が全国的に問題になる中、高知県では給食の実施さえ困難な状況にあるというニュースが報道されています。
授業を行う教員だけでなく、栄養教諭などの学校を支える立場の職員に関しても不足が表面化し、公教育崩壊が始まっているのは間違いないでしょう。
「人材確保のためあらゆる方策」という大嘘
記事内には以下のように教育委員会の職員のコメントがありました。
県小中学校課の宮本雅之課長補佐は「人材確保のためあらゆる方策をとっており、引き続き努力を続けたい」と話しているが、新規採用のめどはたっていない。
ここで「あらゆる方策」を取っているという高知県の努力をまずは見てみます。
高知県では3月に教育長が自ら街頭に立って、ティッシュ配りをして教員募集活動を行っています。
こうした草の根の活動が「あらゆる方策」を当地では表現するようですが、正直なところこれは無駄な努力という表現が正しいように感じます。
そもそもこれまで教員不足が問題にならなかった原因は、学校職員の善意に依存して現場に負担を押し付けてきたことにあります。
それが日本全体の人手不足と働き方改革などの人権やコンプラ意識の向上によって他業種に労働力が流出したに過ぎません。
にもかかわらず、やっていることが根本的な業務改善ではなく、募集活動というのでは問題の解決をする気がないと批判されても致し方ないでしょう。
「適正賃金」
人手不足を解決する最も簡単で単純、かつ効果的な手段は賃金を引き上げることです。
実際、給与が高ければ募集は増加しますし、ブラックな企業だとしても求人が埋まると言われています。昨今、一流大学卒業生がコンサルを希望するのも収入が高いことが一番の理由として挙げられます。
実業家のひろゆき氏は以下のように語っています。
「『適正な賃金で日本人の応募がない』というのは日本語の使い方が間違ってます。労働者と経営者が合意出来る金額が適正な賃金です。労働者が応募しない不適正な賃金を『俺の考える適正な賃金』と言い張ってるだけです。居酒屋の店員を年収1000万円で募集したらすぐに埋まりますよ」
これは適正な賃金で日本人労働者が集まらないと主張する経営者とひろゆき氏のX(旧Twitter)上でのやり取りです。彼の人格的な評価は別として、この件に関しては至極真っ当な意見です。
適正な賃金とは労使が合意できる金額のことであり、今回の高知県においては合意がなされないゆえに応募がないだけなのです。
にもかかわらず、高知県教育委員会の主張する「あらゆる方策」には賃金は含まれていないようで、今回の不足に関しても賃金に関するコメントは一切ありません。
適正な賃金への変更さえ行わず、これで「あらゆる方策」とはあまりにも出来の悪いジョークでしょう。
本当に人がいないのか
高知県には教員志望者が本当にいないのでしょうか。
高知県の場合、採用試験全体でも5.5倍、栄養教諭に至っては12.7倍という高倍率であるにもかかわらずどうして不足なのでしょうか。
一つの原因は高知県の教員採用試験が6月に実施されるため、他県のお試しとして受験者が多いということが理由に上げられます。
そのため実倍率はそこまで高くない、ということになります。
しかし、そうであれば歩留まりを考えて合格者を出せばよいのそうしていません。
こうした理由は定かではありませんが、正規採用を避け非正規、臨時的任用教員として人を使い潰すつもりがあるから、という疑いをもたれても仕方ありませんし、そのような空気感を感じる若者が多いゆえに臨時講師の不足が発生しているのではないでしょうか。
こうした教育委員会、文科省の姿勢そのものがもしかすると教員不足の根本なのかもしれません。