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授業の準備に関する雑感:「長期休みで準備を完成する派」と「直前で準備する派」
学校の教員にとって、授業の準備というのは最も重要な業務になります。
近年はこうした授業に付随する業務を行う時間が少ないことが、教員という職業にとっての課題になりつつあります。
この問題は現状で小学校、次いで中学校の教員の職務遂行を困難にする要因でもあります。
特に小学校ではその影響が顕著で、担任がすべての授業を行うことが原則であり、空き時間の無いケースも多いため授業準備まで手が回らず崩壊状態を助長するなど、経験の浅い教員の退職理由にもなっています。
こうした課題の解決は学校の目的の最も根本にかかわるものであり、働き方改革の本丸と言えるでしょう。
高校での授業準備の現状
高校においては小中学校と比較すると授業を準備する時間を確保できているケースが多いようです。
とはいっても、様々な業務を並行して行っている教員にとってその時間を業務時間内で終わらせることは困難です。
必然的に残業になったり、持ち帰りになっているケースもあり、こうした状況も決して好ましいものではありません。
私の勤務するような私立高校においては、公立ほどの公文書的な書類業務はありませんが、それでもデスクワークの比率が多く直接生徒のために使える時間を確保することは喫緊の課題と言えるでしょう。
「いつ」準備をするか
授業の準備に関して教員間で話をすると、大きく二つの派閥に分かれます。
それは、「長期休みで準備を完成する派」と「直前で準備する派」の二派です。
「長期休みで準備を完成する派」は授業ノートなどをあらかじめ作成し、その予定に沿って授業を進める人たちです。
普段の学校業務ではそこまで時間をとれないため、あらかじめ生徒が学校にいない時期などを利用して教材やプリントも作り置きをしている人たちです。
計画やシラバスを綿密に組み立てて授業を行うため、予定通りに授業が進み、進度や生徒への確認事項なども事前に準備することになります。
基本的に単位数(週当たりの授業回数)の少ない教科の場合、こちらのやり方をしている人が多いように思います。
一方で、「直前で準備する派」は基本的に授業の直前に授業を組み立てます。次回の授業の前日や前々日に具体的な授業の組み立てと教材の準備を行う人たちです。
もちろん、生徒の長期休暇に暇をしているわけではなく、過去問の研究や新しい過程に関しては学びを深めてはいます。
ただ、「授業」という1回のパッケージとしての準備は直前でしかしない、ということです。
双方の長所と短所
「長期休みで準備を完成する派」の長所は見通しを立てやすく、授業回数と進度の調整がしやすい点です。
また、年間を通しての業務量を均すことができるため、働き方改革の観点からも効果的な業務の遂行ができます。
また、達成目標に向けた授業を行うため、生徒の反応に依存しない学習を行うことができます。
短所は生徒の理解度や反応に対応しにくい点です。多少の変更はできますが、大きな方針の変更などは事前準備をすべて無にするため、心理的な抵抗が強いでしょう。
また、教員側としては予定調和の授業となりやすいことが多いように感じます。
一方で「直前で準備する派」の長所は生徒の理解度に合わせて教材のレベルや進度を柔軟に変えやすい点です。
理解の難しい単元の場合、時間をかけたり教材を工夫したりといった変更を行うことが容易です。
また、授業者の視点としては授業に対して比較的「ライブ」感を感じやすい形式でもあります。
あまりに事前に準備をした内容の場合、直前で見直しても教材を作ったときや授業準備をしたときの生きた感覚を反映することは難しいでしょう。
直前での準備の場合、強調する場所や論理展開の工夫などを考えた直後に授業できるというメリットもあります。
短所は生徒の反応に授業の進度や内容が左右させられやすい点です。生徒に合わせると言えば聞こえは良いですが、当初の目標を見失ってしまったり、予定通りの進度を確保できないということは大きなデメリットです。
また、授業の日程で準備が重なり、業務量の増減が激しくなるのも欠点です。勤務時間を無駄に伸ばしてしまう原因ともなる可能性があります。
「直前で準備する派」
ちなみにですが、私は「直前で準備する派」です。
性格的にあまり前もって準備をするのがそれほど得意ではないことに加え、勤務校では習熟度クラスでの授業がほとんどのため同じ授業を1年に1回しか行わないということもその理由になります。
また「ライブ」感の無い授業が苦手ということもあります。
そのため、ほぼ前日、前々日に完成をする形での授業準備がほとんどです。
ただ、その「直前の準備」も実際には勤務時間内に終わっていることはなく、家で教材を作成していることが多々あります。(むしろほとんど帰宅後に行っています)
どちらの準備方法が良い、とは決められるものではありませんが、時間外の準備に関しては私の中の改善点かもしれません。
とはいえ、授業の準備はこの仕事の中で一番楽しい瞬間なのかも、とも考えたりします。
だからこそ、教員が授業を手放せないのかもしれません。