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教員免許のない第二新卒は教員を志望するわけがない
東京都の教員採用試験が、教員免許を持たない25歳以上の社会人でも受けられるようになるというニュースが出ていました。
もともとは(といっても2022年導入のようですが)40歳以上を対象にした制度だったものの対象を広げるようです。
受験、合格後2年以内に教員免許を取得することが条件のようです。
従来の免許制度との整合性
そもそも、教員採用試験は教員免許を取得した人が受験できる制度です。
この試験を免許がない人も受験できるというのは、従来の試験とどのように整合性を取るのでしょうか。
教員免許を取得しているにも関わらず、採用試験に不合格となる人は現在においても結構な数存在します。
これは、教員免許の取得よりもさらに採用用件を上位に設定していると考えるのが妥当です。
つまり、教員免許だけではその資質を測ることができないために、採用試験を実施している、と言えます。
ところが今回の制度では教員免許を持たない人であっても、その資質は採用試験で十分に測定できるというものです。
これであれば、教員免許などという制度自体がその存在意義を失うのではないでしょうか。
臨時講師の存在
一方で、教員免許を持っているにも関わらず採用試験に合格していない人についての取り扱いも不明確です。
そもそも、教員としての教壇に立つ条件を持っているが、自県の職員に相応しい適性や能力を欠いているとして不合格を出しているのが従来の試験の不合格者の取り扱いです。
ところがそうした「相応しくない」とした人間を臆面もなく単年度採用という「人材使い捨て制度」で臨時講師として利用して現場を回しているのが公教育の実情です。
実際に教壇に立っているが、自治体の求める能力を見たさない講師の教えた生徒には単位取得を認めています。
それに対し、自治体の求める能力を持った合格者は免許が無いために教壇には立たせないが、そのために2年間もポストを空ける約束をして、免許のある現場の教員を弾き出すというのが今回の制度です。
こんな扱いしか受けられないのに、東京都で講師をしたいという人はどれほどいるのでしょうか。
第二新卒はクレバーな集団
現在の教員不足の原因は教員採用試験の受けにくさや教員免許取得の問題ではなく、教員の待遇の問題が大きいというのは明らかです。
給特法による定額働かせ放題システムや、ボランティアという名の強制労働としての部活動、無意味な書類仕事の増加や保護者対応など、労働環境の問題が受験者の減少を生んでいます。
(実際、高校教員の倍率はそれほど低下していないのは小中学校の教員の負担が極端に高いことを示す良い例です)
つまり教職が「ブラック」であるということが新卒者、求職者の認識として一般化しているということです。
一方で、第二新卒と呼ばれる人の多くは新卒で就職したが職場環境の問題で退職をした人達の集団です。
彼らは企業側の表面を取り繕った広報に騙された経験を持ち、「ブラック」に対して極端なアレルギーを持っていることが多いでしょう。
そんな彼らが果たして「ブラック」と評判の公立教員を受験することがあるでしょうか。
しかも、免許取得の猶予まで与えるというのです。まさに羊頭狗肉とはこのことでしょう。
制度設計の根本的な見直しが必要
免許後出しの採用試験の示すところは、教員免許制度の根本的な見直しが必要だ、ということではないでしょうか。
そもそも、採用試験後に免許取得をするのであれば、現状のように大学で教員免許課程を取得するというやり方ではなく、採用後に業務研修を行い、免許を発行するという形でもよいはずです。
この場合、採用後に教壇にいきなり立たされることもなくスムーズに業務を覚えていくこともできるでしょう。
教員免許自体が都道府県の教育委員会による管轄のものであり、国家資格でもありません。
また、免許取得の試験もなく単位をそろえれば取得できるのですから、それほど現状変更に困難があるとは思えないのです。
いずれにしても、現行の制度が制度疲労を起こしているのは間違いなく、そこを変えなければ減り続ける教員採用試験の倍率に歯止めがかかることはないのではないでしょうか。