養護教諭の不足と過重労働問題
養護教諭不足問題
多くの教員が不足しているのと同様に養護教諭の不足もまた問題となっています。
より正確に言えば、養護教諭の募集倍率自体は小中学校教諭のように極端に低い倍率の自治体は存在していません。
ところが実際の教育現場においては「不足感」が蔓延しています。
また多くの養護教諭が現場での過重労働に悲鳴を上げているにもかかわらず、その状況が改善傾向にありません。
一校一人体制
「不足感」を感じる最も大きな要因は一つの学校に一人の養護教諭しかいないことが原因です。
大規模校や高校などの場合は複数態勢の学校も存在するようですが多くの場合は校長や事務職と同様に一人職となっています。
そのため学校全体の生徒のケアを一人で担いがちです。
特に現代において保健室の業務を圧迫しているのは不登校生徒の存在が大きいと言われています。
不登校生徒の数は中学校の場合、1クラスに1人、小学校でも3クラスに1人は存在すると言われています。
ということは小学校の場合、規模の小さい学校でも10人強~20人弱の不登校生徒が存在します。そしてその半数が保健室登校をしているとしたら、一人の養護教諭でその生徒たちのケアをすることは到底不可能です。
養護教諭の仕事はケガや病気などの応急処置だけでなく、各種統計の資料を揃えたりするなど、多岐にわたります。最近はカウンセラーとの情報交換なども存在しています。
不登校の生徒が保健室に大量にいる状態で業務を行うことは難しい上に、生徒のケアも十分に行えないでしょう。
採用数の問題
それほど忙しい養護教諭ですが、採用試験の倍率は高止まりしています。
リンク先にもあるように全国倍率は8倍を超え、合格をするにはかなり難しい状況です。
その原因は明らかで、学校に一人しか配置をしていないためです。
これは保健室登校などが一般的でなかった時代の態勢から現在も変化していないために起こった問題です。
(この問題の間接的な原因に現場の教員が自助努力でどうにかしてしまっている、ということがあげられます。これ自体には頭が下がる思いですが、それが原因となって事態がややこしくなっています。)
養成課程の問題
また養成課程が少ないことも問題です。
20年前であれば、一部の国立大学でしか養護教諭免許は取得できませんでした。また1年間の専攻課程を大学卒業後に修了する必要がありました。
ところが現在はリンク先の大学で養護教諭の免許が取得できるため、機会自体は増加しました。
しかしそれらの内訳を見ると、多くが看護師養成課程に付属した形になっていることが多く、専門の養護教諭を養成する過程ではありません。
医療的な知識に関しては看護系の方が有利なのかもしれませんが、心理的なケアなどの場合は教育学部や心理系などの方が専門の適性が高く、この辺りも現状と養成課程の構成がミスマッチを起こしているといえるでしょう。
結局は予算の問題
結局のところ、養護教諭の配置基準を見直さない限り、現状の問題が解決しないことは明らかです。
根本的な原因がマンパワーの不足だからです。
だからこそ、教育予算の拡充、特に採用数の増加と配置数の見直しを行うことがこの問題を解決するための最も効果的な方法でしょう。
文科省や国会における教員不足の対策への的外れ感を見ると、期待するのはなかなか難しそうではありますが。