税理士試験振り返り【消費】
会計事務所で働くアラフォーの”元”銀行員です。新卒で入った銀行で15年以上勤め、令和4年11月に転職しました。
令和6年度試験で5科目そろい、晴れて官報合格となりました。さっそく税理士登録申請書を取り寄せ作成中ですが、なかなか面倒くさい手続ですね。。
簿財に引き続き、今回は消費税法の振り返りを書かせていただきます。受験歴は以下のとおりです。
簿・財 令和3年（第71回）合格
消費 令和4年（第72回）合格
相続 令和5年（第73回）合格
法人 令和6年（第74回）合格
１．消費税法の個人的感想
・計算については簿記論並みにボリュームが多く時間がまったく足りない。簿記論同様、問題文を早く正確に理解する「国語力」が消費税法の計算にも必要。いや、簿記論と違い時間さえあれば解ける問題も多いのである意味タチが悪い。
・また、「解ける問題に手を出す」という取捨選択が税理士試験の鉄則であるが、消費税法は個別問題が少なく”地続き”の問題が多いため部分点をどう取りに行くかわかりづらかった印象。予備校の配点が正しいとも限らない。
・先人達のブログを見ると「余裕があれば国税庁の通達等も見ておくべき」と言っている方を見るが、消費税法はまさにそうした方が良い科目ナンバー１。課税・非課税・不課税の判定については単に知っているか否かで解ける問題であるが、本試験では予備校のテキストではカバーし切れていない事例がかなりの確率で出題される（という印象）。タックスアンサーやQ&Aに掲載されている事例は必ず目を通し知識を補強しておくべき。
・理論については相続・法人をやった後だから感じるが、消費税法のボリュームは相当少ない。税法初学者がやるには登竜門的で良いと思っているが、インボイスやってない世代なので何とも言えない。インボイス関連は実務やってた方がおそらく、間違いなく有利。
・納税義務判定や高額特定資産など一部の理論は非常に覚えづらかった。事例問題（答練の理論や計算問題）をもっと繰り返しやりながら覚えるのが吉だった。
・受験者数が税法科目では最も多く、一番受かりやすい税法科目という印象。仮にもう一度税理士試験をやるとしても消費税法は外さないと思う。
・簿財はスタディング推し派であるが、税法はスタディングを使うことはおススメしない。※令和4年度しか知らないのでその後カリキュラムが改善されているかも。
２．振り返り
・簿財の受験終了後まったく手応えを感じらず不合格を覚悟していたので、次年度の試験に向け簿記の知識維持＋αを狙い、8月から「簿記1級」の勉強を始める。
・しかしどうにも身が入らず（というか工業簿記けっこうムズイ、独学ではしんどそう）、やはり税法をやっておこうとスタディングで相続税法をスタート。
・簿財同様、スタディングは講義ペースが緩やか、時間が余る。序盤は復習する論点も少ないのでなおさら。なお、この時点では理論暗記が何たるものかよくわかっていなかったので理論暗記は何もしておらず。
・ふと「相続税法は最終科目として選ぶ受験生が多いのでライバルが強い」というブログ記事を目にして怖気づく。
・10月中旬、消費税法に転換、みたびスタディング。
・しかしながら講義わかりづらい、トレーニング問題も少なく地力がついている感触が得られず。
・税法は条文や規定が多いので理解に苦しみ、テキストを見返すことが多くなる。しかしながらスタディングは紙テキストがないので見返したい論点はいちいちWebを開かないと見に行けない。簿財では一切感じてなかった不便さを感じる。
・12月、TACのWeb通信に変更。TACの入会金10,000円を無料にしたいがために事前に無料講座説明会に一応参加。変な時期だったためか自分含めて3人しか参加していなかった。
・12月よりTACのWeb通信で消費税法開始。二宮講師めちゃくちゃわかりやすい。消費税法のエース講師か。さすが大手予備校。
・回り道をしてお金と時間を浪費したものの徐々に勉強のペースを掴み、知識も一気に身について来て良い感じが。お金も安価なスタディングだったので傷は浅かった。
・理論暗記も12月から本格的に始める。相続・法人やった後だからわかるが今思うとボリュームが圧倒的に少ない。消費だったから12月からでも間に合った。この点は命拾いした。
・電車通勤だったので電車乗っている間はずっと理マスとにらめっこ。このときまだ転職前で銀行員。
・講義もずっと週１ペースなので追いつくのは比較的容易だった。繰り返すが二宮講師わかりやすい。年明け1月からの上級答練はスケジュールどおり提出。
結果は
最高：上位28％
最低：上位66％
・TACのような大手予備校で資格勉強をしたのは初めてだったが「上位30％以内」が合格水準という話は見聞きしていた。しかし上位3割に入ったのはたった一度のみ。「これまずいな・・」という焦りを感じる。
（※直前期答練も別途あったと思いますがその成績表はどうやら保存してなかったみたいです）
・特に計算が弱いと感じていた。全然時間内に解けない。調整対象固定資産や居住用賃貸建物の転用などややこしい計算が出てくるとまったく間に合わない。
・正直「やってればいずれ早くなるだろう」とタカをくくって部分もあったが、まったくスピードが伸びない。今思うと地力は間違いなく伸びていたはずだが、問題も徐々に難しくなっていたので差引ゼロだったのだと思われる。
・そしてTACの模試。結果は
理論Ｃ
計算Ａ
総合Ｂ
と正直思ったよりもいい結果だった。
・理論では仕入税額控除に関するランクAの問題も出たが、解答要求事項を大きく外し大量失点。
・計算は案の定、時間が足りずだいぶ書けなかったのだが意外にもA判定。「消費税の受験者数は税法最多」「税法一発目は消費税を選ぶ受験生が多くライバルは相対的に強くない」というのは本当なのだろうと感じる。
・しかしながら本番が徐々に近づくも何となくペースが掴めず、前に進んでんだか進んでないんだかフワフワした感じだったのを覚えている。
・この頃、息抜きや情報収集のためＸ（旧Twitter）を始めていたが、一部の受験生が理論予想をしているのを目にする。ブロックを生きがいとしている有名な「ラ〇ボス先生」なんかもよく目にした。
・そんな中気になるポストを目にする。どうやら大原ではやってるけどTACで取り扱ってない理論が存在する模様。
・このとき本番1週間前、慌てて外販の理論サブノートを購入。見比べるとたしかに輸出物品販売場関連とか総額表示はTAC（理論マスター）にはない。コピーして理論マスターに貼り付けぼんやり覚えることにしたがこれが本番で功を奏す。
・そして本番。このときまだコロナ禍真っ只中。仮に罹患したとしても這ってでも受験しようと思っていたが入口で体温図っててもしほんとに罹患してたらアウトだったかなと。（実際試験後に罹患し高熱を発症）
・理論の1題目は「特定課税仕入」のベタ書き問題。理論マスターの掲載ページ全部書けるぐらい覚えていたので、逆に書き過ぎて時間食われないように一部端折る。
・そして2題目。本番1週間前に覚え始めた大原の「総額表示」に関する事例問題が出題される。やはりにわか仕込みでは単語がすぐには出てこなかったが何とか絞り出し、結論はたしか合わせられた。
・理論3題目は各取引に関する消費税法上の取扱いを述べよ、という事例形式問題。結論ミスはたしか1題だけ。割と解けた。TACのトレーニング問題（個別問題集）には課税・非課税・不課税の判定のみをさせる問題が大量にある。そしてこれらの問題の解説にはその取引がなぜ課税・非課税・不課税になるかの思考プロセスが書いてあるものも多い。丸付けをする際解説の思考プロセスもしっかり読んでいたので割としっかり書けた。トレーニング問題の解説のように書けば良いんだろうと思って割と筆が進む。書き過ぎないように時間に注意しながら。
・そして計算。原則課税と簡易課税の2題。簡易から手を付ける。たしかケーキ屋が主人公。軽減8%と10%が入り混じった意地悪な問題。適当なところで切り上げ原則の問題に。
・原則の納税義務判定は事後設立というやっかいな論点。というか知らない論点。にもかかわらず手を付けてしまう。のちに解答速報を見るが完全に捨て問だと思われる。10分くらい時間を食われたうえにミス。
・原則の計算も軽減8%と10%が入り混じった問題。飲食店の折詰めが軽減か標準かなんて知らない。部分点狙いで貸倒れや売上返還には先に手を付けたが、納税義務判定間違ってたのでおそらく合っていなかったような。
・しかし計算は相変わらず時間が足りない。数字の転記は終わったが電卓を叩いた集計はほぼできずタイムアップ。課税標準の算出と課税売上割合までは最終値を一応出した、絶対間違ってるが。
・帰り道、電車の中で
「納税義務判定やらなきゃよかった・・」
「最終値出せずあんな数字の転記だけの答案じゃ厳しいか・・」
「でも理論は割と書けたと思うからワンチャンあるか・・」
などとモヤモヤしながら家路についたのはけっこう鮮明に覚えている。Xも見ると時間が足りなかったという声が多数。ちょっと安心しつつも。
また、TACに限らず各予備校は本試験直前に理論の出題予想をしている。TACの予想は外れていたが、Twitterでその点について二宮講師を批判していた受験生を数人見かけた。最後の最後にヤマにすがるということはまったく普通のことだが、予想理論だけに絞って講義で教えているわけではなく、ひととおりすべての理論を教えている。自分の勉強が不十分だったことを他人のせいにしているのを見るのはあまり良い気持ちがしなかった。
３．あとがき
簿記論同様、消費税法の計算も最後は「国語力」。スピードアップには読解力が必要。何度も問題文を読み返していたらそりゃ時間が足りなくなる。一度読んでスッと理解できる地頭が欲しい。
とはいえ合格できたので平均点以上の国語力は有しているのだと思う。国語力に影響していると言えば1つは「銀行員」だったということ。銀行には細かいルールがたくさんあり、理解するためには文章を読まなくてはならない。そして理解しなければならない。仕事で培われてきたものもあるのだろうと思う。
もう1つは小説好きだという点（かもしれない）。経済小説が好きで高杉良、黒木亮、高任和夫、池井戸潤などの本はあらかた読んでいた。
理論についてはやはり消費税法はボリュームが少ないので精度は多少落ちるが捨て理論は作らずＣ理論まで覚えた。
初めて職業訓練給付金を使ったが、受講料が安い消費税法で使ってしまったのはもったいなかった。１回使うとたしか３年空けないと二度目は使えず、受講料が高い相続や法人で使えばよかったとのちに後悔。