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いまさら「3年A組」を見て、ふと思ったこと

なんか数十年ぶりに、ドラマイッキ見とかしてしまった、まだ肉体的には若い、しょっさんです。

※ ネタバレあり

昔見た、あのドラマ

以前にイッキ見したのは、TRICK。シーズン2を見て感動したので、1を一気に見たのが2002年。およそ17年ぶりのドラマイッキ見。とは言え夜に数話ごと数日だったので、24時間以内に全部見たなんてのは、きっと初めて。

そんなドラマイッキ見をさせてくれるほど、興奮したドラマはこちら。

日本のドラマの定番といえば、刑事もの・教師もの。その中でも、熱血教師ものは受けが良い。特に今の我々よりも上の世代は、金八先生にお世話になってしまったがために、「熱血教師」に「バカチンが」と言われたら平伏するしかない。腐ったみかんじゃないし。

まぁ、そもそも、深田恭子がでてたとしても連続ドラマは見ない生活を過ごしていて、ここ最近でも見たのが Perfume が主演だった「パンセ」や、あ〜ちゃんが声だけ出演して、主題歌がTOKYO GIRL だった「東京タラレバ娘」など、Perfume が関わっているものくらい。

そんなふうにドラマを見なくなった諸悪の根源がこれ。

キムタクにミポリンを使って、まぁ正直キャラでうまくごまかした感はありつつも、日本のドラマとしては珍しい力の入ったミステリーだったと記憶してる。記憶してるってのは、もう内容はほとんど覚えてなくて「オチが思った通りすぎるやろ、これはないわ」と、最後の最後まで引っ張ってきたミステリーにしては、オチが貧弱すぎて、ドラマを見る気力がそこで一切合切失われたというのが経緯。1998年の作品だから、そこからほぼドラマをリアルタイムで見る習慣がなくなりました。レビュー見てから、見る勝ちがあるかなと思いながら、録画したものをおっかっけていく、そんな生活

あ、でも、2000年に衝撃的だった、松本人志x中居正広主演の「伝説の教師」だけは毎週追ってみてましたね、絶対つまんないはずがない。

アドリブで漫才するドラマなんて、最初で最後でしょ、こんなの。

ようやく「3年A組」を見ることができた、冬休み

さて。

そんな、ドラマ見ない生活が続いていたけれども、ずっと気になっていた「3年A組」。きっかけは、たまたま見ていた番組に菅田(変換できない)くんと永野芽郁が番宣でできてた「人質」「学校」のキーワード。金八先生から伝説の教師を経て生きてきた輩としては、引っかかるキーワードなわけです。日本の教師ものは、金八先生から派生しているか、生徒たちがたくさん死にまくる「バトルロワイヤル」や「悪の教典」などのサイコ系派生。ほかは知らん。けれども、「人質」と「学校」で、これはうまくしたら2つとも入ってくる熱血サイコ系かみたいに興味を持ったわけです。とある好きなキャラに永野芽郁が似てて、やたらと気になるのも一つの理由だけど、今は屍人荘の殺人の「浜辺美波」が一番好きです。可愛いです。ほしい。これからもっとうれてほしい。

ともかく、「3年A組」は、それだけ私を期待させたドラマだったのです。

そして、それは期待通りでした。ただ、どうしてもわからなくてレビューを見ても、脚本家の裏設定にも乗ってなくて、どう受け取っていいかよくわからないことも多く、ここは自分の信じた道を信じようと、ひとまずレビューを書いてみることにしたのです。

予定調和と予定通りと大団円

物事の受け取り方は、人それぞれだと思うのですが、私にとってこの作品は、過去に類を見ないくらいの「ハッピーエンド」でした。人が死んでしまう作品で似たようなケースでは「告白」なんてのもありますね。こっちは、笑いどこのほとんどない、橋本愛のプロモーションビデオです。

「3年A組」は、元となった自殺から鑑みると、「告白」同様ハッピーエンドと思わせるのは難しいです。難解です。あれだけ、おちゃらけネタで一世風靡した「TRICK」ですら、あとの方では後味の悪いものがほとんどです。ミステリー作品は「犯人」と「動機」が浮き彫りになればなるほど、暗く沈んだものになりがちです。「屍人荘の殺人」はこのへんうまくできてなくて、失敗した最近の映画例として、私は胸に刻んで忘れ去りました。

しかし、この「3年A組」はハッピーエンドなんです。人がひとり死んでるのに。苦しんで、苦しみぬいて、もしかしたら最後に救われたかもしれないけど、それでも死んだんです。そこの観点で見ると、ハッピーではありませんが、これを一つの盛大な「成長の物語」だとして見ると、ハッピーエンドなんです。

成長の物語とハッピーエンド

誰が成長したのか。

最後の最後で、永野芽郁は、「世の中が大きく変わったなんてことは全然なくて〜(中略)〜青春でした」みたいにひとりごちています。結局、日常の世界に変化はもたらしませんが、3年A組は全員が変わったはずです。教師もそう。ふみかもそう。一部の刑事も変わったはずです。一人ひとりが少しずつ、10日間の間に変わっていくことが、この物語の根幹です。そうです、ふつーの「熱血教師もの」です。サイコはいませんでした。残念。

ハッピーエンドたる理由はまだあります。エンディングがやばい。

内容はずっと重苦しいネタが続くのに、エンディングは毎回内容を変えてくるし、でてくるクラスメイトは全員楽しそうにしてます。ギャップがやばい。屍人荘の殺人で、終わったあと急に「再生」が流れてくるときの違和感しかないギャップくらいのギャップがあります。

Perfume 最高です。最新の Perfume は最高の Perfume です。

ともかく、エンディングにクロマニヨンズの「生きる」を流しながら、クラスメイトたちは笑っているエンディングの違和感はひどいもんでした。パット見卒業アルバムっぽいんだけど、そこまでこのクラス仲良かったかって感じの印象。どうしても、パラレルワールド感あふれるそのギャップの違和感は、ホントはこうであってほしかったものとしての対比が表現されたんじゃないかとか、考えすぎてしまう。

そして、この手の熱血教師もので必要なのは、教師の演技力です。真剣度が伝わってこないと、もーなんも響いてきません。が、しかし菅田将暉が一所懸命熱演した結果、感情的に、たいていの人は菅田くんに感情移入して、感動されたようです。レビュー見てても、菅田が良かったから的な話もあります。彼が素晴らしい演技力をもったことによって、説得力を持って受け止めることができたのは一つの効果です。

その菅田将暉の熱血指導と、社会への影響度から、近くにいる生徒はもとより教師も影響は及んでいるものと認識しました。田辺誠一も改心したし。なぜか死んでしまったことを蓋して「良かったね、これで」と思わせてしまう狂気のドラマだと感じました。

狂気と快楽の間に間に

こういったミステリーものの場合、犯人と動機、伏線と回収、自然と不自然がうまく融合して、オチに持ってこないと駄作になります。最後のオチに賭けるような脚本の場合、途中はどうでも最後のオチに大どんでん返しが待っていると救われて、面白かったーとなります。でも、ある程度の視聴者のレベルが高くなってくると、ありきたりの話では、予想されてしまって「つまんない」と思われます。かと言ってちょっと複雑だったりすると、ある程度の経験がないと、そのオチに気づかれなくなります。

評判の高い作品は、概ねわかりやすいものがほとんどです。ラピュタやカリオストロの城がわかりやすくて面白く、未だに金曜ロードショーで放映されるのは「わかりやすさ」と「オチの秀逸さ」です。万人受けしやすいネタで落とせたあの時代の名残です。今では、同じことは簡単にできません。良い意味でマンネリしている長く長く続いているものであれば、たいてい受け入れられますが、こういった所見ネタではオチが重要視されがちです。

この「3年A組」では、ずっと強大な黒幕がいるような話が続き、最後に「SNS」が黒幕であることが表明されます。この流れ、昨今の時代背景も鑑みると、カンタンに導き出せる黒幕だったと言っても過言ではないでしょう。それを理由に「オチがつまんない最低」とか「オチが見え見え過ぎ」と評価した人は、残念ながら、この物語を見ていなかったとしか言いようがないのです。

先に述べたように、この物語は「成長の物語」です。ファイナルファンタジーでいうと X です。みんなでティーダの成長を見守るあの感じです。みんなで。それも「圧倒的な成長の物語」なんです。少しずつじゃなくて、一つ一つのネタがひじょーに重い。人の死に端を発する事で、どうしても重くならざるを得ない。ドラマだから仕方ないにしても、関わっている人間が近くに多くいることで、短い時間の間で圧倒的な成長を求められる、狭い環境ができあがってます。

オチとなる犯人なんかどうでも良かったんです、この話は。結局、生徒の一人ひとりが、この10日間でどのように成長したか、成長していく過程を見せることができるかが、このドラマの本来の主題ではないかと感じています。

オチとして必要だったのは「ギャップ」とか「どんでん返し」みたいなものではなかったんです。今の社会では立ち向かえない強大な力を有したネットに対しての苦言が呈せれば十分だったでしょう。教師や警察を超えた、そのへんの半グレとは違う、もっと強大な力を持ったなにか。SFだったら、ネットが一つの大きな生命体となって逆襲してきたかたちになるようなそれ、AIが逆襲してきた。の世界線です。

最終的に伝えたかったことは、それなんでしょう。でも、ドラマ全編を通して伝えていることは「成長」なんです。それに対して成長できたことで、そして、最後にその成長を感じさせることができて、このドラマは大団円を迎えたんです。だから、菅田将暉が最後に演説をして死んで終わるのではなくて、永野芽郁が、そしてクラスのみんなが手を差し出して助けることが、本当に伝えたかったことのはずです。成長したみんなが、そこにみんながいたから、菅田将暉をみんなで助けることができた。 上白石萌歌を一人では助けられなかった永野芽郁は、みんなの力を得て助けることができたことが、クラスの成長を祝っているんだと。

だから、この物語は「ハッピーエンド」で終了して、それで良かったんです。

成長を伴わない物語はないのですが、ここまでひとつひとつ丁寧に積み上げていってくれたおかげで、最後のオチでがっかりしなくても済むように作り上げたところが、この話の上手にできていた点です。爆弾やら拳銃やら、強化ガラスに特殊な鍵にいたって、科学的根拠やら私立学校のくせにセキュリティが貧弱すぎるところは目をつむって、それでも菅田将暉の演技に支えられ、全てを忘れて、みんなの成長を喜ぶことができたのは、とても良かった作品です。

熱血教師ものは、やっぱりこうでないと。うかばれません。


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しょっさん
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