2022.7② Weekly Music Log ~The 1975、STARKIDS、BLOOM VASE、崎山蒼志、リリスクMVとファンダムエコノミー~

架空対談方式で、主にその週の新譜を中心に、音楽について緩く書く週刊記事。
諸事情により、簡易版としていましたが、今週から元に戻していきます。

Playlist ※毎週、最新の曲に更新されます

――久しぶりの架空対談形式ですね。

そうですね。しばらく別のことに時間を割いていたので、簡易版にしていたのですが、そろそろ戻していきたいと思います。

――結構前回から期間が空きましたが、なんとかなるものですかね?

何とかならない気がするので、とりあえず今回は短めで行こうかなとは思っています。

――そうですね、それがよさそうです。ではよろしくお願いいたします。

お願いいたします。今週は4曲プラスアルファです。

――では1曲目お願いします。

まずは、The 1975「Part Of The Band」です。

――2年ぶりの新曲であり、10月には5thアルバムのリリース予定も発表されました。

正直、そんなに詳しくないのですが、ここまでの大御所だと聴き逃せないですよね。聴いてみたら、しみじみと良いなぁと思いました。

――どんなところが良かったですか?

特に序盤からのストリングスの使い方が良いなと思います。全く安っぽくならずに、音のスケールの大きさを感じます。ドラマチックになり過ぎずに、この塩梅の音の質感で、表現するのは凄いと思いますし、シンプルに心地よいです。

――分かりやすく盛り上がる感じではないですよね。

そう思います。だからこそ良いと思った部分もありますね。批判するつもりは全くないのですが、やはり邦楽でストリングスを入れると安っぽくなりがちな気がするので、どうしても対比して考えてしまいました。

――ジャケットのモノクロな雰囲気や、リリックの深刻さも含めて、今のThe 1975のモードはこういう感じなんですかね。

ですかね。詳しくは分からないですが、アルバムも楽しみになる出来栄えでした。

――そうですね。次の曲に行きましょう。

次は、STARKIDS「GAME OVER」です。

――SoundCloud出身のヒップホップクルーですね。

彼らについてもそんなに知っているわけではないので、下手なことは言えないですが、まず本人たちがhyperpopというラベルを貼られることを嫌がっているので、そこは避けて考えてみますが、とにかく音が過剰なんですよね。それがめちゃくちゃカッコ良い。

――狂暴な音が縦横無尽に鳴っています。

それでいて、さらにそこに分かりやすくセルフボースティングのリリックを重ねていく様が、二重にカッコ良いです。ここまでやり切られたら何も言うことないなって思います。

――これをフロアで聴いたら、アガるに決まってるって感じの曲ですね。

そうですね。いつかライブも観てみたいですね。楽曲以上に勢いを感じるアクトなんじゃないかと思います。

――イベント「Demonia」の映像も凄まじかったですからね。

本当にそれです。

――次に行きましょう。次の曲は何でしょうか?

BLOOM VASE「SWITCH」です。

――BLOOM VASEは、前にも紹介しましたね。

そうですね、個人的にはいつの間にかTikTokでブレイクしていて印象で、改めて調べたらMステにも出演したようなので、思ったよりもマスに届いているんだろうなと思います。

――なぜ、そこまで受け入られているんですかね?

シンプルに良い曲ですよね。とにかくフックがキャッチーです。加えて、オートチューンのかかり方が、耳に馴染むんですよね。声との相性もあるんだと思いますが、とにかく心地よく響いてくる感覚があります。フックのメロディもオートチューンの響き方を考えながら作られているように感じますし、人気が出るのは納得です。

――7/15には初のアルバム『POP UP』がリリースされるとのことです。

まだアルバム出してなかったんですね。ここからまた一つギアを上げて、活躍してくれそうな気がしますね。楽しみです。

――では、最後の曲は何でしょうか?

崎山蒼志「I Don't Wanna Dance In This Squall」です。

――"I Don't Wanna Dance"と言いながら、とてもダンサブルな楽曲ですね。

ですね。これはめちゃくちゃ踊りたいし、踊れる。

――崎山蒼志というと、ギターの印象も強いですが、最近はこういった打ち込み曲も目立ちますね。

どうやら今作が初のオール打ち込みらしいですね。

――そうなんですね。MVでは、「崎山がお好み焼きのかつお節に扮して踊り狂う」という謎な仕上がりで面白いです。

はっきり言うと、最近の崎山蒼志の楽曲はそこまでピンとこないことが多いのですが、それは彼がとにかく色んなことにチャレンジしているからだと思っています。その流れもあって仕上がった謎MVなのかなと(笑)。
でも、それは本当に良い事だと思っていて、こういった様々なチャレンジをしていった先に、どんな楽曲を創ってくれるのか楽しみでしょうがないです。

――まだ19歳ですしね。

あまり年齢に言及するのは好きではないですが、そうですよね。
今後数十年と活躍していってほしいアーティストですから、誤解を恐れずいうと、たくさん寄り道をしてほしいです。

――以上、今週の4曲でした。では最後におまけに行きましょう。

今回はlyrical schoolの新MV「LAST SCENE」と「ファンダムエコノミー」についてです。

――「LAST SCENE」のMV、凄かったですね。2022/7/10現在、一旦非公開になってしまいましたが。。。

そうですね。。。残念ですが、おそらく権利的な問題から現在は閲覧不可になってますね。
それもあって、書くか迷ったのですが、再公開されることを信じて、書いておこうと思います。

※7/13(水) 0:00に再公開されましたので、以下に貼っておきます。

――はてなブログでも記事書いてますよね。

そうですね。こちらです。ご興味あれば是非。

――では、改めて内容をお願いします。

まず先に「ファンダムエコノミー」についてです。
私は黒鳥社ファンダムと言えるかもと思うほど、黒鳥社のコンテンツが好きなのですが、「ファンダムエコノミー」はコクヨの山下正太郎さんと黒鳥社の若林恵さんが中心となって編集された本です。この二人はコクヨ野外学習センターとしてポッドキャストもやっていて、全エピソードめちゃくちゃ面白かったのですが、この本もめちゃくちゃ面白く、しかも結構売れているらしいです。

――売れているんですね。なんででしょうか?

個人的には、昨今話題の話を、「ファンダムエコノミー」という観点から、縦横無尽に繋ぎ合わせることが出来ているからだと思っています。
noteにて、本の冒頭に収録されている山下正太郎さんと若林恵さんの対談が公開されていますが、これを読めば、その縦横無尽さを体験できるはずです。

――そもそも、本の紹介文を見てみれば「トレッキー、デッドヘッズ、BTS Armyから、クリエイターエコノミー、Web3、NFT、メタバースまでを縦横無尽に読み解く」とありますね。

そうでした。これが全くの誇張ではないですからね。

――それで、その「ファンダムエコノミー」がlyrical schoolの新MVとどう関係あるのでしょうか?

シンプルに、これが「ファンダムエコノミー」の一つの在り方だなと思ったんです。
改めてMVについて説明しておくと、このMVはファンから募ったチェキのみで構成されているもので、3000枚以上の写真が使われているそうです。今は見れませんが、正直ここまでやるとは狂気の沙汰だなとも思えるクリエイティブ作品でした。中心となって制作したプロデューサーのキムヤスヒロさんが自ら言っていましたが、リリスクに対する強い想いがなければ絶対に出来ないものだと思いましたね。

――なるほど、確かにあまり聴いたことがない種類のMVな気がしますが、それがどう「ファンダムエコノミー」と繋がるのでしょうか?

確かに、ファンがMVに関与するというレイヤーで考えれば、特に目新しいものではないと思います。
ただ、この作品は、生産者と消費者という概念を複数の視点からずらしていると思います。
一つは、根幹となるチェキをファンから募ったこと。これによりファンが単なる消費者ではなく、生産者の側面を持ったと思います。
そしてもう一つが、そのチェキから作られたものが、いわばファンアート的な作品であったこと。キムさん本人がTwitterでも言っていますが、これってやろうと思えば、ファンでもやれるんですよね。それをあえて運営側がやったというところに面白みを感じています。

――そう考えると、確かに面白いかもしれません。

この「ファンダムエコノミー」的考え方は、主に黒鳥社周りですが、色んなところで出てきていて、どれもが興味深いです。
例えば、「WORKSIGHT」というメディアのスペース。22分ぐらいから、生産者と消費者の分断に関する話をしています。

例えば、ライゾマティクスの齋藤精一さんのtwitch配信に若林さんが出演したときの話の中では、シェアについて話されていました。
1:23:45辺りからですが、シェアというのは「分け合う」のではなく、「持ち寄る」ことなのだということを言っています。これなんて、まさしく今回のMVですよね、チェキを持ち寄った結果出来たのですから。
また、オードリータンの「コンピテンシー」の話も出てきます。大事なのは、「リテラシー」という受け手の面からの能力ではなく、「コンピテンシー」という作り手の面での能力であると。つまり、その人が具体的に何が出来るのか?という観点から関わっていくことが重要だと。ファンはMVは簡単には作れないかもしれないけれど、チェキを応募することは出来ますよね。確定申告並みに大変だったと噂ですが(笑)。

※ちなみに、ちゃんとチェックはしていないですが、シェアの話の元ネタはこのポッドキャストだと思います。めちゃくちゃ面白かった記憶はあります。

――本当に色んな話が縦横無尽に繋がっていますね。

一つひとつは、必ずしも新しい話ではないと思うんですけどね。ただ、それが「ファンダムエコノミー」という概念のもとに繋ぎ合わせることが出来るということに、自分自身とても興味深く思っていますし、今後ももっと考えてみたいなと思っている次第です。

――「ファンダムエコノミー」、要チェックですね。

一応断っておくと、必ずしも良い事ばかりじゃないよねという話ももちろんあります。
キムさん本人がインスタライブで話していましたのであえて書きますが、リリスクの今回のMVも、ファンがお金を出して買ったチェキを活用して、運営側が更なるコンテンツを作ったという見方をすれば、結構グロテスクな産業構造にも見えます。
ただ、そういった側面がありつつも、これからは生産者と消費者という概念を組み立てなおしていくことで、新たな地平が見えてくるような気がしていているのです。

――ファンダムについては、BTSの話も色々ありますからね。今後も折に触れて考えていきましょう。

そうですね、そうしていきたいと思います。

――今月はこんなところでしょうかね。

そうしましょう。久しぶりでしたが、今回もありがとうございました。またよろしくお願いいたします。

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