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短い夏休み

今年の夏休み第1弾は雨と共にあっけなく過ぎた。GO TOキャンペーンを狙い、どこか出かけるぞと息巻いていたら第2波疑惑で全ての予定をキャンセル、あこがれの列車紀行も未来へすっ飛んで行き。

大学を卒業してこのかたお盆休みという風情豊かな季語は残念ながら私の辞書にはない。いや、休みを取ろうと思えば取れるが、私はいつも9月とか、年明けて2月(誕生日を挟んで短い春休み)とかそんな感じで毎年休みを取り、バカンスを楽しんでいた。

今年は連休が2回もあるしそんなに休み取らんでも旅行行けれるわ、と浮かれていたが蓋を開けてみたらそれどころではなかった。
おまけに雨。低気圧による頭痛で頭を抱えざるを得なくなり、朝寝坊夜更かしの、ぐうたら三昧になってしまった。

そんな低気圧に悩み、雨を恨んでいた私は時を同じくして世の中で話題になっていたニュースに言葉を失った。

連休に入る数日前、とある俳優が、若くして旅立った。

ふと思った。何を思い、これまでの日々を過ごしてきたのだろうかと。奇しくも訃報のその日の夜が彼が出演していた映画の地上波放送だった。

画面の中にいる彼がもういないなんて。

恋空で知り、多部ちゃんとの共演ドラマで知った。映画も見た。

あるとき、キンキーブーツでキラキラ輝きながら歌い上げるシーンをそのまま歌番組で再現したあのステージに引き込まれるような魅力を感じた。目力強く不敵な微笑みにおおってなって。

訃報を知った時、嘘だろうと思った。

けれど一方でああもう、彼のその輝く姿を、歌声を聴けないんだと思うと寂寥を覚えた。 


悩みをうまく言えず正論だけをぶつけられたときの絶望を一度経験すると悩みをこぼすのが怖くなる。

そんな私に対して、なにかきっかけがあったのだろうか、学生ぶりに再会した友人がポツリポツリ近況を話してくれることに耳を傾けられたとき、同じような思いをさせてしまうことにならないだろうかと不安だった。
だけれど相手が安心して話してくれたときの顔は忘れられなかった。


人は悩み、もがき、吐きそうなほどの嫌悪感に嫌気が差すけれど、それでも生きる。食べるし、寝るし、甘いものには目がないし褒められたら舞い上がるし、けなされたらへこむし。
誰のことか?私のことである。

だけれど人一倍誰かの振る舞いや言葉に、やや敏感で、人間関係の機微にはたぶん疎くて、それが家族であれば"折り合いをつけてもらってる"状態で。

自分の存在がゆらいでどうしようもない孤独を感じると一ミリの言動で傷つけてしまいかねなくなり、距離を置きたくなる。


そんなとき、写真の中のモデルさんの凛とした佇まいとか、映画の中で魂を込め、拳を上げて歌い上げるフレディとか、スケボーに乗って雨の中を歌いながら走るあいみょんとか、森山直太朗の綺麗な歌声と歌詞とか。

生まれ育った故郷に沈む夕日とか。ひょんなことで知った作家さんのnoteとか。

芸術特に音楽とか写真とか言葉とか。それらに救われている自分がいる。

脆いな私、と呆れるけれど、確かに救われてきた。

春をかけゆくように生きてきた彼を想い、祈ることしかできないけれど、できることなら輝いてる彼を覚えていたい。同世代の人として。


5年後、あなたの年に追いついた頃、どうしてるか分からないし、笑っていられてるかも分からないけれど、生きるよ。だってあなたたちに励まされ助けられてきたんだから。


ありがとう。

次の春はあなたのような美しい桜が咲き誇り、その並木の中を人々が穏やかに行き来できる日を。


この短い夏休み第1弾、唯一できたことはFire TVの購入とセットアップ。
さっそくYouTubeを開いて、森山直太朗と中孝介の花を歌った。祈りを込めて。

気づけば雨は止んで泣き笑いの空が広がっていた。


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