放課後
まだ残暑が残っているせいか、肌に制服が張りついてくる。何度剥がしても、貼りついてくるので諦めかけていた。タオルで拭いても汗が出てくる。夏はもう終わったというのに、しつこい残暑が終わらない夏を感じさせる。
こんなに暑いのは残暑のせいもあるが、授業時間が終わってしまったので教室にクーラーが効かないせいでもある。日中は寒いくらいなのに、夕方になると暑さがやってくる。
持っている団扇であおぐことて、どうにか暑さに耐えている。
この夏で部活動を引退し、本格的に受験勉強を始めないといけないのに、暑さのせいかどうしてもやる気が出ない。机の上に参考書を広げているが、まだ数ページしか進んでいない。これも暑さのせいにしてしまおうと思っている自分がいた。
そんな僕は団扇で顔のあたりをあおぎながら、ただ外を眺めていた。
今は16時半頃で、ちょうど秋の夕陽が差し込んで世界がオレンジ色に染まる時間だ。そんな世界を教室から眺めているのが好きだった。眺めている間だけは唯一受験というストレスから逃れられる。
「そろそろ志望校を決めなきゃな…」
と独り言をこぼし、大きくため息をついた。
少しして、今日の終わりを告げるチャイムがなった。
「もうこんな時間?」
と思い時計を見ると下校時刻を差している。先生に見つかったらいろいろ面倒だと思い、急いで机の上に広げてある参考書を片付け、教室を後にした。廊下に出るとすぐ先生とすれ違った。声をかけられるかと思い内心ヒヤッとしたが、小走りで先生の横を通り過ぎた。
昇降口に行くとまだ大勢の生徒がいた。制服姿の生徒ばかりだ。同じクラスの見知った顔もいる。どうやら図書館かどこかで勉強していたのだろう。
彼らを見ていると劣等感が襲ってきた。みんな充実した顔で将来のことや志望校のことなどを話している。そんな彼らの充実した雰囲気に嫌気がさしてしまう。
吐き気がする前に急いで駐輪場に向かった。その劣等感を振り切るように昇降口から駐輪場までを走り抜けた。傍から見たら急に走り出した変なやつに見えることだろう。でも止まると劣等感に飲み込まれてしまいそうで怖かった。
「なんであいつらは未来のことを考えられるのだろう。今のことも何ひとつ分からないのに。」