すごいものを観ると人は笑う 『One Woman Show』オノ・ヨーコ
(この記事は2015年7月15日に書かれたものです)
先日、ニューヨーク近代美術館(MoMA)で開催されていたオノ・ヨーコさんの「Yoko Ono: One Woman Show 1960-1971」に行きました。映像、言葉、オブジェ、パフォーマンス・アートなど様々な形式の作品が展示されており、とても興味深いものでした。
恥ずかしながら、行く前の私は「そもそもオノ・ヨーコって何のアーティスト?」というレベルでした。アーティストだってことは知っているけれども、絵の人?写真の人?
しかし、観に行って分かったことがあります。意外にも私の第一印象は間違っていなかったのかもしれない。つまり、彼女は画家だとか写真家だとか、特定の枠にははめることのできない、あらゆるものをアートにしてしまう人だということです。
彼女の作品を観ていて、自然と笑ってしまっている自分がいました。サッカーなどスポーツで素晴らしいプレーを観たり、マイケル・ジャクソンのダンスを観たり、「すごすぎる!」ものを観ると思わず笑ってしまうことってありませんか?あの感覚です。
私が笑ってしまった理由は、彼女が「なんでもないものをアートに昇華させる」天才だったからです。普通の人は気づかないありふれたものが、オノ・ヨーコが見るとこんな風になるんだ!と衝撃の連続でした。
会場に入ると一番に目に入ってくるリンゴ。一緒に行った友人が「私にはこのリンゴに何の意味があるのか分からなかったけど、何だこれ?と思わせた時点でオノ・ヨーコの勝ちなんだと思う」と言っていました。
4つあるのに"Three Spoons"という名前の作品。ちなみに4つなのに3つのスプーンなのは、時に言っていることと実際のものは違うことがある、ということを表現したのだそう。
使っているものはなんでもない誰でも手に入れられるものなのに、それをアートとして全面に出してくる潔さ。それが彼女の作品の特徴のひとつなのだと思います。
オノ・ヨーコの直筆の字がFLYの部分。なんだか可愛くてフォントが作れそうだと思いました。その下は彼女のディレクションを別の人が書き記したもの。結局メリーじゃなくてもいいの?昆虫でもいいの?と振り回されてしまうけど、そこが面白い。
空の見える螺旋階段は、一人しか登れないもの。他にも観客が踏むことで完成する作品、観客が中に入って動く作品など、観客参加型の作品が沢山あり「美術館のものを触ってはいけない」という常識を覆すものが、この時代に既に作られていたことに驚きました。
また、当時の彼女が作ったフライヤーなどが多数展示されていましたが、今見ても全く古くないのです。当時は今のように便利なソフトなど一切なかったのに、それでそこまでのクオリティが出せることに衝撃を受けました。
この作品展は、あくまでMoMAの一部分で開催されているものですが、そうとは思えないほど見応えたっぷりでした。MoMAを後にして、なぜジョン・レノンはオノ・ヨーコに惹かれたのか?が分かったような気がしました。
「One Woman Show」は2015年9月7日まで。
The Museum of Modern Art (MoMA)
11 W 53rd St New York, NY 10019 (5-6th Avenue)