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セットリストを剥いて見えたユニゾンの確固たる意志――UNISON SQUARE GARDEN Tour 2023 Ninth Peel 感想

私の大好きなバンド、UNISON SQUARE GARDENのツアー「Ninth Peel」がとてもよかったので、勝手気ままに感想文を書く。それだけである。1万文字を超えた。
音楽の知識はまるでないので、そのへんのことは薄い。


「アルバム全曲はやらないよ」とは?

まずはアルバム「Ninth Peel」が発売されたころのインタビューを引用する。

全国ツアーに関してはアルバムツアーを2回やるというのを先に発表したかったのが大事なところだ。
ロックバンドが今一番いいライブをすることを目的とすると、そのためには必ずしも新曲が必要なわけではない。となるとアルバム全曲やらなきゃいけませんというのはちょっと矛盾するんだよね。
ツアーが2回あればなんとか全部演奏できるっしょ。そんな軽い気持ちで今年の計画を立ててみた。まだセットリスト完成してないけど。

「小生田淵がよく喋る2023年1月  2023.01.22 UP」より
https://unison-s-g.com/blog/member/

『今年はアルバムツアーを2回やるんです。アルバムを出してもAパターンとBパターンで全国一周ずつすればいいんじゃないかというのを数年前にポロッと言ったことがあって。両方のライブに来たらアルバム曲を全部聴けるというのがいいんじゃないかって。そうすればアルバム曲をセットリストに入れるのは5〜6曲で済む。そういうのも選択肢としてはアリなのかなと。結構センスと知恵が必要なのでもうちょっと練ります!』

「“Ninth Peel" SPECIAL INTERVIEW」より
https://unison-s-g.com/ninth-peel/interview/interview.html

これを読んだ物好き私は、適当な予想を立てた。

【私のてきとうな予想】
01.スペースシャトル・ララバイ:やる。無根拠

02.恋する惑星:やる。MV出したし

03.ミレニアムハッピー・チェーンソーエッヂ:アンチ・トレンディ・クラブとどっちかはやらない

04.カオスが極まる:やらない可能性もある。ficで核になってたし。でもkpfのほうがやらない可能性高そう

05.City peel:やらないかも。曲調Nlagと似てるし、やるならMV出したNlagだと思うし

06.Nihil Pip Viper:やると思う。ミュージアムの冊子で田淵さんが「ずっと組み込めなくてごめんね」みたいなこと言ってたし

07.Numbness like a ginger:やる。MV出したし

08.もう君に会えない:やらないんじゃない? 生配信とかDRIP TOKYOでやったのはライブでやらないからだと思う

09.アンチ・トレンディ・クラブ:ミレニアムハッピー・チェーンソーエッヂとどっちかはやらない

10.kaleido proud fiesta:やらない可能性ある。kpf・ficという2つのツアーで核を担っていたので今回は落ちるかも

11.フレーズボトル・バイバイ:やるんじゃない? アンコールの締めとかで

こんなへんぴな記事に来ている方ならばわかるだろう。大外れだ。ほとんどやった。アルバム曲、ほとんどやった。確かにやってない曲はあったけど、そう言わなかった今までのツアーでも1〜2曲やらない曲はあった。それがユニゾンのデフォルトだった。

私は、早とちりかもしれないけど私は、半分くらいしかやらないものだと思ってたよ! ヨッセトリの天才!! いっぱい曲が聞けて嬉しかったです!!

セットリストを追いながら剥いていく

セットリスト

01.夢が覚めたら (at that river)
02.シュガーソングとビターステップ
03.ミレニアムハッピー・チェーンソーエッヂ
04.Nihil Pip Viper

05.City peel
06.静謐甘美秋暮抒情
07.WINDOW開ける
08.シューゲイザースピーカー
09.アンチ・トレンディ・クラブ
10.MIDNIGHT JUNGLE
11.Phantom Joke

12.Numbness like a ginger
13.お人好しカメレオン

ドラムソロ~セッション
14.スペースシャトル・ララバイ
15.放課後マリアージュ
16.徹頭徹尾夜な夜なドライブ
17.カオスが極まる
18.恋する惑星

おまけ01.ガリレオのショーケース
おまけ02.kaleido proud fiesta

改めて思う、いいセトリだなあ。

それぞれの曲の感想

ぼんやりと流れに沿って感想をつらつらと書いていく。
ライブの話じゃなくてこの曲のここが好きなんだみたいな感想ばかりになった。
「また後で長々と書く」と書いた曲は、以降の「セットリストをまるごと剥いてみる」パートで触れている。
4000文字以上あるので適度に読んでください。


01.夢が覚めたら (at that river)
びびった。
kpfのharmonized finaleといい15thのお人好しカメレオンといいCITSの黄昏インザスパイといい、ユニゾンではミディアムバラードからセトリが始まるのはそれなりにある。けど、まさかこれが来るとは。ftH8でやってたからしばらく来ないと思ってたんだけど、やってたからこそ来たのかも。
ふわ〜〜っと上がってく薄青の照明が好き。

02.シュガーソングとビターステップ
この曲って強いんだよな、と最近よく思う。どこに入れてもなじむのに、どこに入れても問答無用でテンションが上がる。
まず前提として、盛り上げ方が巧すぎる。「Q.E.D!」と「世界中を、驚かせ続けよう。」の二段構えでブチ上げてくるところなんか本当にすごい。曲自身の知名度が高いのもあって「きたきた!」という「要石」にもなる。
でも、かなりポップ寄りのロックだから「軽さ」もある。ライブの鉄板! みたいな曲はたいていある種の「重さ」があって、一気にたくさん来たら胃もたれしそうになるけれど、この曲はそれが薄い。
つまり、この曲は、知名度と構成が盛り上げ役に適しているのに、盛り上げ役にはちょっと珍しい「軽さ」があるのである。

だから、色んな位置で色んな役割を持つ曲になれるのだ。頭から2曲目に入れても、ラスト2曲目に入れても、アンコールの2曲目に入れても、どこに入れてもいい仕事をする(私はkpfのアンコ2曲目という位置が天才的だったと思う)。今回は会場のテンションを一気に上げる役割だった。私は毎回これでテンションが上がりすぎてしまった。今回はゆっくり落ち着いて見ようかな、なんて日も、シュガーソングとビターステップが流れてきた時点でその思いはご破算だった。
ユニゾンを世間に知らしめた曲であるという意味でもこの曲は「特異点」なんだろうけど、ライブのセトリを考えるという意味でも特異点になると思う。本当にライブで重宝するのでは? いい曲です。

03.ミレニアムハッピー・チェーンソーエッヂ
アルバム曲キタ! これはほんとにNinth Peelツアーなんだ!になる曲。アルバムと同じく3曲目なんですね。
イントロのドラムめちゃくちゃかっこいい。
2番のディズ二一のとこが好き。裏側見れない、そこが良いのさ。
ワヨワヨゾーンめちゃくちゃ好き。ミュージアム冊子の斎藤さんによればイヤイヤゾーンらしいけど私にはワヨワヨ聞こえるのでワヨワヨゾーンと言っています。

04.Nihil Pip Viper
強めの幻覚を見てるみたいなレインボーの照明が好き。
「審判見てないけどズルなんかできるか 育ちが違うので」と「大事なことはそう 自分で決めようぜ」という歌詞が本当に好き。田淵さんの歌詞のこういうところが好き。ロックバンドが普通に新曲を出しま~す、という曲にこういう歌詞をさらっと入れてくるところが好き。
ところでニュージャージーみたいなポーズって何?

ここの間、実質休憩ないのすごい。(私が)きつかった。

05.City peel
沁みる。
照明がふわふわと移り変わっていく感じが、午後早い時間のうららかな情景を予想させてとても良かった。
セトリ上ではかなり役割を持った曲な気がする。また後で長々と書く。

06.静謐甘美秋暮抒情
沁みる……。
好きな曲なので叫ぶかと思った。高音が毎度きれい。
また後で長々と書く。

07.WINDOW開ける
この曲ってかっこいいなあ。(思考停止)
シンプルな照明の潔さが良いね。
また後で長々と書く。

08.シューゲイザースピーカー
参戦初回、ある歌詞で大爆笑してしまった。面白かったんじゃなくて、密かに思っていたけどきっと私しか思ってないんだろうな、ってことをまさにバチンと当てられた感じで。
私の好きなバンドの、私が好きになった部分が詰まっていたよ。
だから、UNISON SQUARE GARDENが好きなんだよ。
また後で長々と書く。

09.アンチ・トレンディ・クラブ
Foo〜〜〜〜〜!!!!
シューゲイザースピーカーのアウトロから、足元の……なんていうの……ペダル? エフェクター? を踏んでイントロに移るところ本当にかっこいい。
また後で長々と書く。

10.MIDNIGHT JUNGLE
暴れた。私の初回公演では頭が真っ白になったことをよく覚えている。
公演を追うごとに「MIDNIGHT? JUNGLE〜〜〜〜〜〜〜〜↑↑」のタメが長くなっていたのは気のせいではないと思う。本当に本当に楽しかった!!
正直ミレニアムハッピー・チェーンソーエッヂが入ったセトリでやらなければ嘘だと思っていたので、本当に嬉しかった。「僕は夜と遊ぶ、テキーラ!」と「ソーダが足りない ウイスキーもちゃちい」はアルコールコンビだから。
そしてこの曲が来た瞬間にカオスが極まるのセトリ入りを確信した。「オフサイドのホイッスル響いて容疑者の検証が始まる」という歌詞とサッカーアニメの主題歌を合わせない選択肢はないと思っていたから。そしてこの曲の次に来るとさえ思った。違ったけど。

11.Phantom Joke
入りの「Phantom Joke……」にしびれた。
先述の理由からMIDNIGHT JUNGLEの後にあのカオスの同期音が来ると思っていたのでちょっと驚いたけど、改めて聞くとこれも超いい曲。たかおの手数がもう。阿修羅?
いつぶりに聴いたんだろうPVかな。余裕さえ感じる演奏っぷり、さすがです。

NPVの後のセッションで水分補給してないとここまでノンストップ。死ぬかと。

12.Numbness like a ginger
なんか……本当に、いい曲だよなあ。これ。
適度な突き放し方が心地良い。

13.お人好しカメレオン
え!? UNISON SQUARE GARDEN、解散しちゃうの!?
初参戦でそう思いました。よくやったなこれ。
心が不安定なときに聞いて泣きました。ありがとう。

ドラムソロ~セッション
鈴木貴雄はたぶん我々の5倍速で動いている。
ベースの入り最高。
カウントダウン本当にワクワクした。

14.スペースシャトル・ララバイ
ラストスパートの幕開けがこれで良かったなあと思う。なんだか本当に感動しちゃって記憶がない。歌詞がすごく好き。
「Ninth Peel」ネオンだけだと思ってたから、新たに色々なネオンが下がってくるのに大興奮した。バンドマークとバンド名ネオンが横からゴロゴロ来るのもよかった。
シエラレオネ色の照明になる瞬間があったよね。ファミマ色ともいう。
この曲でテンションが自然と上がるけど、それは2曲後で存分にはしゃぐための素地だったんじゃないかなと思う。

15.放課後マリアージュ
ドラムスティックの「カンカカンカカン」でとても驚いた!! やってくれるとは! 思わなかった! 楽しかった! ベースの動きがかわいい!
また後で長々と書く。

16.徹頭徹尾夜な夜なドライブ
ドラムさんの「3,4,5678!」でビビった。え!? ここでまた「こういうゾーン」に入るんだ!?!? という驚き。12.Numbness like a ginger〜15.放課後マリアージュで、なるほどゆっくりとクライマックスへの道を歩んでいくんだなと思ったら、いきなりこれが始まるんだから!
声出し解禁の夜な夜な本当に楽しかった。個人的に15thの夜な夜なを彷彿とさせる沸騰具合だった。
この曲は「5,6,7,8」でサビに入って、「存在で10点満点!」だから今回のセトリに入ったのかな? と少しだけ思ってる。9だけ抜けてるから、このツアーに入れて9を補う、的な?
あと「もう18時」から「夜な夜な」で時の流れ的に繋がっているのだろうか。そういえばこの前に「時計はそろそろ13時を指す」もあるね。でもMIDNIGHTなJUNGLEもこの曲より前にやっているから、繋がっているのはマリアージュだけかな。

17.カオスが極まる
イントロの同期音が天才。夜な夜なからの流れでこんなの出されたらぶち上がるしかない。
MIDNIGHT JUNGLEの時点でこの曲を期待していたので、焦らしに焦らしてここで爆発させられたのがなんかもう最高で、本当にこのセトリうますぎるなあと。テンションが上がりまくって暴れすぎて記憶にない。めちゃくちゃ楽しかったとしか言えない……

18.恋する惑星
「ラスト!」デンデンデデデン←つよい
前2曲で後先考えずに暴れてしまったけれど、この最高潮をどう持っていくの? 体感時間的にはさすがにそろそろ終わるんじゃね? でもどう終わるの? こんなバチバチの空気をどう締めるの? と考えるとこの曲一択だったなと思う。
ここで満を持して登場し、会場の空気を一変させるのはさすがリード曲だなと思う。圧倒的な明るさ・楽しさ・多幸感を併せ持つこの曲が一気に感情を真逆に持っていくし、上がりきってもう上がる余地がないテンションに「多幸感」という新たな要素を注ぎ込んでくるから、さっきとはまた違う最高の感情でいっぱいになる。そして、まるでジェットコースターに乗った後のような心地よい疲労感を感じながら、ライブは終了する。今思い出したって幸せ。
実はここで来るまで「まさか恋する惑星がセトリ落ち枠?」と思わないでもなかったので、そういう意味でもとっても嬉しかった。カオスが極まるを含め、焦らしにきていたのだろうか。
ところでこの「カオスが極まる→恋する惑星」の流れ、MMMEの「MIDNIGHT JUNGLE→君の瞳に恋してない」に通ずるものがあるなと思った。バッチバチのロックでかっこよく決めた後に多幸感をプラスしてくる感じ。大好き〜。

本編終わりアンコール待ち。
ここの間本当に短かったし、回を追うごとに短くなってなかった?
「アンコールはもう形式ばったものになっているから、変な時間は減らそうか」とか思ってるのかな。

おまけ01.ガリレオのショーケース
がっそう!!!! を声出しでやれるの楽しかった〜。
毎回超絶仲悪いのはもうなんかはい。微笑ましく見ている。バンドメンバーが楽しそうで私は嬉しい。
田淵さんのマイクで斎藤さんが歌う回に参戦したことがあるんですが、田淵さんのマイクってかなり音量小さく設定されてるんですね。

おまけ02.kaleido proud fiesta
ここで客電点くの天才かと思った。思い思いにライブを楽しむお客さんたちを見て、誇張でなく泣いたことがある。私にとっての「綺麗すぎて忘れられない景色」がまたひとつ増えたな、と思う。ライブって楽しいよ、最高だよ。

セットリストをまるごと剥いてみる

本編。
曲どうしの繋がりや流れから、「UNISON SQUARE GARDEN Tour 2023 Ninth Peel」をまるごと剥いてみる。


背骨としての「City Peel」

題のとおり、このセットリストの背骨は「City Peel」になると思う。
いろいろ繋がっているところがある。

まずは「夢が覚めたら (at that river)」。
だから だから どうか映画みたいに この答えが少しは報われてほしいと思うから」と
あの映画みたいな恋だったよ って薄目のままでぼんやりしてる」は、「映画」というワードで繋がっている。
そしてこのセットリストで「映画」と繋がるのがもう1曲ある。「恋する惑星」だ。同名の映画があるのは有名だろう。
ミュージアムの冊子で田淵さんが「リリースまでに見とこうと思ったけど間に合わなかった」と書いているから前2曲の「映画」が「恋する惑星」を指すかどうかは定かではないが、映画の縁|《えん》の中に含めてもいいんじゃないかな、とは思う。

静謐甘美秋暮抒情」には何度か「モードなムード」と出てくるが、これには収録アルバム「MODE MOOD MODE」のタイトルと繋がりがある。どちらが先か、とか、どういう意図があるのか、とかは置いておいて、とにかく「静謐甘美秋暮抒情」にはアルバムタイトルとの繋がりがある。
タイトルから見てわかるように、「City Peel」も然りだ。インタビュー類を見るに「曲が揃ってから言葉を取ってタイトルを決めた」らしい。語り口から見てそんなに大きな意図が込められているわけではなさそうだが、アルバム「Ninth Peel」はこの曲からタイトルを取ったのだ。その事実は変わらない。
MMMのときも今回もそうだったが、ユニゾンといえばポップ寄りロックなので、このようなミディアムナンバーがアルバムの顔たるタイトルを担っているという事実は私にとってとても驚きが大きかった。ユニゾンも大人になったのかな♪なんて思っていた時期もある。私は彼らより思いっきり年下なのに。
ともかく、「アルバムのタイトルとリンクするミディアムナンバー」がセットリスト内で隣り合っていることが私はなんだか嬉しかった。Ninth Peelは肩の力を抜いたアルバムだという旨の話をどこかのインタビューで見たことがある(気がする)が、そういった余裕とか大人っぽさ、落ち着きなどがこの流れに現れているような気がしなくもない。
次もCity Peelが入るなら、同じくアルバムのタイトルとリンクする(ユニゾンにしては)おとなしいナンバーである黄昏インザスパイとか来るかな。どうかな。

そして「それを知らないまま大人になんてならないで」が「放課後マリアージュ」の「これが大人になる手順だから ポッケに入れとこうね」で回収された綺麗さにはしびれた。だから放課後マリアージュはセットリストに入ったのかな。
次もCity Peelが入るなら、ガラリと趣向を変えて「Watch your step! ああ 大人を舐めるなよ」の天国と地獄が来るかな。君が大人になってしまう前にかな? どうかな。

最後は後半で上から下がってくるネオン。
ブレーキの音に跳ぶ猫、13時を指した時計、Peelされたリンゴ。楽譜は「だからこそ今日も歌が生まれたし」を指しているような気がする。
さらにさらに、考えすぎの真骨頂かもしれないが、「夢が覚めたら (at that river)」には「ネオン消えて点いて繰り返していつかは」、「MIDNIGHT JUNGLE」には「ネオンサインなんてやぶれかぶれ」という歌詞がある。ただ単にMMM内で繋がっていただけかもしれないが、よりによってNinth Peelのセットリストに含まれている2曲に共通する歌詞だから、深読みしてしまうなあ。

こう見ると、ライブの前半から後半まで繋がっているこの曲は本当に背骨だなあと思う。位置もアルバムと同じく5曲目だし、そもそもアルバムタイトル・ツアータイトルを関する曲だし。これらもきっと意図的なんだろうな。
まあ「考えた人そこまで考えてないと思うよ」案件もいくつかあるのだろうが、全てがそうだとは思わない。田淵智也とはそういうアーティストだと思っている。


「1位」へのアンサー

UNISON SQUARE GARDEN 9th Album “Ninth Peel“は、アルバムランキングで1位を取った。

帯に「多数が正義じゃないのでは?」とあって、
多数みんなが好き なものだけが正義」という反語から始まる曲があって、
ランキングなんか全くの大爆笑」という歌詞もあるアルバムが、
アルバムランキングで1位を取った。

そのアルバムツアーで、以下のようなセットリストが組まれた。

07.WINDOW開ける
08.シューゲイザースピーカー
09.アンチ・トレンディ・クラブ

これらには、以下のような歌詞がある。

流行リモノが廃れてく ほら おしまい おしまい さよならよ
どんなヒットソングにも 救えない命があること いい加減気づいてよ ねえ だから 音楽は今日も息をするのだろう
多数みんなが好き なものだけが正義(中略)はずれ者は廃棄 美しいこそがトレンディ(中略)本当に…本当に?そのスイッチ入れたら 君のことも 忘れちゃわないか?

……ずっともやもやしていた。
1位を喜ぶような褒めるような、なんかとにかくポジティブな投稿を割とたくさん見たことに。
こう投げかけているアルバムが、多数になったことを、ランキングの頂点に立ったことを、喜んでいる姿に。

帯にある言葉すら受け取っていないのか?と、煮えたぎるような何かが頭の中で渦巻いていた。
でも私が考えすぎであること、敏感になりすぎであることもわかっていて、だからどこにも誰にも言わなかった。

そもそも、ランキング1位を取ったこと自体は当たり前のように喜ばしいことなのだろう。
なんのかんの言ったってUNISON SQUARE GARDENは「職業:音楽家」である。彼ら自身それでご飯を食べているし、彼らの活動を支えることでご飯を食べている人だっている。彼らの音楽が売れないと路頭に迷う……とまではいかない(これは会社という仕組みに感謝)けれど、少し困ってしまう人が出てくるはずだ。
だからまあ、売れたことを示すランキングというのは、高ければ高いほどよく、その頂点である1位を取ったというのは、素直に素晴らしく良いことなのだろう(集計期間により変動する相対的なものとはいえ)。
それに、自分が好きなものの人気が認められるのは、単純に嬉しいことなのだ。共感されると嬉しい、この思考回路は私にもある。同担拒否という言葉もあるが、その話は今しない。
なんにつけ、私が屈折しすぎなのだ。ちなみに同担拒否というわけではない。

まあ、こんなのきっと私しか思っていないんだろうと思っていた。だからそんなに大っぴらにはしないけど、それでも「思いを持つ」くらいは誰に咎められることでもないだろうと思っていた。ぐつぐつとした感情も放っておけば冷めてくるだろうし。

というわけで、「そんな感情を持ってたこともあったね」状態でこのツアーに参戦して、この3曲の流れで殴られたような衝撃を受けた。
気づいた瞬間にちょっとだけ泣いたし、彼らのスタンスが変わらない限り絶対に彼らの物好きを続けるんだろうと思った。

「流行リモノ」「ヒットソング」「多数」と言ってもいい数字を出した彼らの、曲がらぬ矜持をここに見た気がする。
みんなとか数字とか、そういうことじゃない。ただただ、自分にとって「強くてやさしい僕たち」が「お気に召す」なら「一緒に居ようぜ」って、「最低でも半数は見放してく僕の手」を「離さないなら遊びに行こうよ」って、そう伝えてくれたんだと思う。

なんのことはない。UNISON SQUARE GARDENの音楽は「他人とか多数のことなんか関係ないうえに誰も君の代わりはできないんだから、他の誰でもない君が君自身の意志を持ち、しっかりと君の人生を歩め」とずっと言ってきたし、今回もそうだったというだけの話だ。

しかも、WINDOW開ける→シューゲイザースピーカー、この流れは2014年のツアー「Catcher In The Spy」と同じらしい。
つまり、彼らはその頃から全く変わらない意志を持っているのだ。
約10年前から、彼らを剥いたら同じものが見えるのだ。

「みんな」に引っ張られ、ブレていたのは私だ。みんなが大好きな物語の中では呼吸がしづらく、ヒットソングにどうも救われなかった私は、ユニゾンのそんな歌詞に救われていたし、今回もそうだった。このセットリストの流れが、見失いかけていたそれを気づかせてくれたと思う。

だからここでみんなと違う意見をつらつら書いているのだ。

違うかもしれない、ズレているかもしれない。でも私はそう思っている。私は彼らのそういう歌詞を糧に生きている。今回のセトリで改めてそう思えた。それだけで充分だ。

剥いてみて見つかった答え

「Ninth Peel」と検索して最初に出てくるサイトをクリックすると、こんな文章に出会う。

剥いたら答えがあるのでは?
ユニゾンの9枚目のアルバムが満を持して完成した。
2022年にリリースした強烈なアニメ主題歌2曲を含む全11曲はこだわりがあるようでないようで、解釈が難しい。
ソングライターの田淵曰く「普通にやってるロックバンドの、普通の最新アルバム」らしい。
結成20周年を目前に控え、何を「最新のユニゾン」として提示するのか?
剥いてみよう、答えが見つかるかもしれない。

Ninth Peel SPECIAL SITEより
https://unison-s-g.com/ninth-peel/

さて、アルバムツアー前半を終え、いくらか剥けた彼らに、何を見出すのか。
少しだけ熟した、彼らの変わらぬ核を見た。これが私の今の答えだ。
でも、ちょっとだけわかったような気になっているけれど、まだ置いておこうかなと思う。
後半のツアーもあるしね。


高崎のサイネージ

何かあって、コメントで全世界に晒すのはな~って感じであればこちらにどうぞ。
こうやってネット上で公開しているのは、読んだ人と何か化学反応が起きればいいな~って思っているからなので、ちょっとでも何か送りたければお気軽に。
https://forms.gle/HtkfzFU7rFJzF81W6

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#NinthPeel


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