近況 2022.3.26

わたしは、生きていていい人間なんだろうか

床で動けないままぼんやり考える。

これは、生きている故の罰なんだろうか。

吐き気と動悸とフラッシュバック、先に耐えられなくなるのは、身体だろうか、心だろうか。

*

アマプラで『ずっと独身でいるつもり?』を観た。その勢いで、『東京男子図鑑』を観た。

しんどかった。圧倒的に東京だった。
東京のことそんなに知らないけど、1年も付き合えばわかることも増えて、だからしんどかった。

東京で働くようになってから、ドラマや映画で見る町並みを「ここしってる!」と思うようになった。思うようになって、でもそれだけだった。

わたしは遊びたいわけではなかった。
収入とか住む区とか顔とか優良物件とかそういう話が大嫌いだった。どうでもよかった。

ただ安心して生きたかった。
明日のパンを一緒に買ったり、一緒に帰ったりしたかった。

東京にいけば、東京にいけば、
安心して生きられると思った。
安心して死ねると思った。

ちがった。
結局のところ、場所はただの場所だった。

仕事帰りに東京駅で、圧倒的な孤独を浴びた。新橋の客引きはみんな諦めたような顔をしているから好きで、渋谷の客引きはぎらぎらしているから嫌いだった。
人肌恋しいと思うくせに、知らないひとの温度を両側に感じながら乗る電車は嫌いだった。つまらない仕事も高いだけで美味しくないごはんも薄っぺらいコンテンツもシャットダウンしたい出来事も、みんなみんな嫌いだった。

不安から逃れるように食べたくないものを口に押し込んでは気持ち悪くなってすべて吐き、眠れないと言って処方された眠剤を噛み砕いてそれでも眠れず鼈甲飴を噛み砕いて、深夜3時くらいまで歯ぎしりを繰り返す。誰かに助けてほしかった。病院は何ヶ月先まで予約がいっぱいだった。

死にたかった。

死にたいと思うのは、死んでしまえば、死ぬのが怖いという不安から解放されるからだった。

ベランダから下を見て、どうやって飛べば確実に死ねるかを考えた。Googleで死にたいと検索するとヘルプダイヤルが表示されて笑った。こんなもので救われるんだったら私はとっくに救われている。

中央線沿いに住んでいる先輩が、人身事故多いんだよねと笑っていた。私も笑った。その日のランチセットは2000円だった。

死にたくなかった。
正確に言えば、ひとりで死ぬのがこわかった。

今死んだら誰が私の証人になってくれるだろう、
誰が私の骨を撒いてくれるだろう。

周りでは結婚や離婚の話が増え、年下のクリエイターが増え、新しいコンテンツがどんどん生み出されていく。渋谷のスクランブル交差点は人々が吐き出したカラフルな吐瀉物みたいで綺麗だった。私だけどこにも行けていないような気がした。

朦朧とする頭で考える。
私に与えられた罪はなんだろう。

どう償っていけば消えるんだろう。

私にしか生み出せないものとか、そういうのもう、くだらないんだろうけど、
そういうくだらないものに縋ってないと正気なんか保てないんだよ。

くだらないって最高だろうが。

ねえあなたの救いはなんですか、
私はどうしたら救われますか、

わかってます、とっくにわかってます。
自分で救うしかないって、痛いくらいわかってます。

どうか私を、ゆるして

2022.3.26

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夕空しづく/詩人・小説家
眠れない夜のための詩を、そっとつくります。