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孤独を優しく象る|米津玄師2023TOUR『空想』備忘録
※これは、米津玄師さんの2023年ライブツアー『空想』に参加したあと、自分にとっての救いについて綴った備忘録です。参加前の方はどうか、ライブを楽しみ終えたあとご覧ください。
米津玄師さんは私にとって、「誰にも言えない絶望を見つけてくれる」人でした。
私は幼い頃からずっと、頭のなかに文章が流れていました。それは、過去と未来が入り混じったものであったり、現実と空想の合間のようなものであったり。かなしいとかうれしいとか、今存在する言葉で形容できないものばかりでした。
いつからか、救われたい、と強く願うようになりました。でも、自分を救えるのは自分しかいないと知ってしまった。その孤独に、私は耐えられませんでした。
救われたくて救われたくて、必死で文章を書きました。そんな自分は、化け物みたいに醜いのではないかと、ずっと思っていました。
私を生かしてくれたのは、頭のなかでつくった物語でした。私しか知らない主人公、私しか知らない世界、私しか知らない物語。それは逃避だったかもしれないけれど、間違いなく救いでもありました。
大人になってからも、ずっと、そうです。
どうしようもない不幸があったとき、私は物語を書きました。救われたい、さみしい、助けて、と思うたび、私は物語を書きました。見つけてほしかった気もする。見つけてほしくなかった気もする。ただ、私は、救われたかった。でも、物語がただのエゴの塊になってしまうことへの原罪感も、ずっと抱いていました。
何を書いても世に出しても、何か、ちがう気がした。
どこへ行ってもどこへ逃げても、ここじゃない気がした。
遠くへいきたい、遠くへいきたい、そう願いながら東京にやってきて、それでも私は、ここじゃない、と思った。書いて書いて書いて書いても、私が思うかたちにはならなくて。この感情を象ることばが、どこにも見当たらなくて。
くるしくてくるしくて、どうしようもなく孤独でした。誰にどう相談すればいいかわからなかった。夢見がちで憂いがちな痛い人間だと思われてしまうのがこわかった。わかってもらえない、という絶望に耐えられるほど、私はもう若くありませんでした。
だからあなたが、空想についての話をしてくれたとき、私は本当に、崩れ落ちそうになってしまった。あなたはこのくるしみを、これ以上のくるしみを抱えながら、創り続けてくれるのかと。
*
米津さん、あなたが大切に、大切に、紡ぎ出してくれる言葉は、私の絶対を、やさしく、象ってくれるものでした。心の奥底のくるしみを、そっと、形作ってくれた。
あなたと目が合った気がした、きっと幾人の人が、あのときそう感じたと思います。私もその一人です。それが、都合のいい空想だったとしても。少なくともあの瞬間は、私にとって「救い」でした。
創り続けること、誰かに見られること、届くこと、届かないこと、崇拝されること、きっと、私たちには知り得ないくるしみが、たくさんあるのでしょう、たくさんあったのでしょう。だから、軽々しく「救われました」なんて言えません。神様のように見えるあなたは、ひとりの人間で。神様と崇められる人の孤独は計り知れないから。
あなたの創るものの奥底にある、宝石のような輝きを、見つけていたい、と思う。その輝きに照らされることで、救われた一日がどれだけあったかしれません。
あなたは言葉によって、いつも、言葉以上のものをくれます。私が勝手に、もらっているだけかもしれないけれど。あなたのつくる音楽とともに大人になれたことは、まちがいなく祝福です。
*
そばで歌うあなたは、近くて遠くてまぶしくて、どうしようもなく美しかった。あなたが思う救いの話を、もっと聞きたくなった。私が思う救いの話を、もっと書きたくなった。あなたと言葉を交わせたら、どんな世界が見えるだろうと、美しい空想が止まらなかった。
人生なんて、劇的に好転するものではなくて。くるしみもかなしみも尽きなくて、悩んで吐いて吸って生きて、私はまた書くのでしょう。
私は私の空想を、救いというかたちにしていきたい。あなたがそうしてくれたように。
ありがとう。
いつか、また会える日を願って。
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