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2度別れた恋人と結婚する友人


2度別れて2度復縁した恋人と、結婚する友人がいる。
深夜1時のサイゼリアで、私はその話を聞いた。

「どうしてそのひとだったの」

と問う私に、

「そのひとだったから、としか言えないな」

と彼女は答え、チョコレートパフェを美味そうに頬張った。

彼女のことも、彼女の恋人のことも、私はよく知っていた。大学のゼミが同じだったからだ。彼女は聡明で弁論がうまく、思ったことはその場でズバズバ言うひとだった。対して彼女の恋人は温和でおとなしく、いつも誰かの聞き役に徹するひとだった。

「あのひと、何考えてるかわかんないんだよね。思ってることがあるならすぐ言えばいいのに」

恋人とうまくいかなくなる度、私は彼女の愚痴を聞いた。深夜の磯丸水産で。夜明けのカラオケボックスで。6畳間の私の部屋で。

「僕は彼女のことが大事なんだけど、大事だからこそ、言えないことも、距離を取りたくなることもあるんだ」

彼女の恋人もまた、時折私に弱音をこぼした。ドトールコーヒーの窓際席で。騒がしい学校の食堂で。ゼミ終わりの帰り道で。

「もう別れる」
「別れた方がいいと思う」

彼女たちはそう言って2度別れ、

「あ、恋人に戻ったよ」
「お騒がせしました」

そう言って2度復縁した。

そして来月、結婚するという。
私は薄いコーヒーをすすりながら、幸せそうに生クリームを咀嚼する彼女を眺めた。

「どうしてあなたたちは、2度も別れたのに一緒にいることを選んだの」

と私は尋ねた。
彼女は少し考えてスプーンを置き、

「ずっと一緒にいたい、とお互いが思えるようになるには、2度別れることが必要だったんだよ」

と答えた。

「喧嘩したり別のひとを好きになろうとしてみたり言動を変えてみたり考え方を変えてみたりやっぱり元に戻したりして、二人にとって一番いい形を見つけるために、私たちは2度別れて2度復縁した。それだけのこと」

真っ直ぐな瞳をして、口の隅にチョコレートをつけた彼女のことを、私はただただ、かっこいい、と思った。

「世の中の恋人たちはさ、あの遊園地に行くと別れるとかあの水族館に行くと別れるとか、復縁はうまくいくとかいかないとかくだらないこと考えてる暇があるなら、その時の気持ちに素直になって全部やってみればいいんだよ。それでだめならだめだったってだけ。もし一緒にいたいって思えたら、ネットにのってる恋愛必勝法みたいなやつに中指立てながら、笑って結婚しちゃえばいいんだよ」

そう言い切る彼女が、いつかの夜、
彼のことが好きだ、でもやっぱり嫌いだ、別れたい、でも別れたくない、と言って泣いていたことを思い出し、

あなたはきっと幸せになれる、と思った。いや、なれ、と思った。

「私たちのこと、小説にしていいよ」

私が物を書いていることを知っている彼女は、そう言って笑った。メイクの落ちた、深夜1時半の顔で。

私は彼女のことを、心の底から美しいと思った。


来月、私は彼女たちの結婚式のスピーチをする。
散々愚痴を聞かされたことも、何度もカラオケに付き合ったことも、その倍くらい惚気話を聞いたことも、全部話してやろうと思う。

最後に何と言うかはもう決めている。


『せいぜい、末永く幸せになりやがれ』


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※この物語は***です。

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夕空しづく/詩人・小説家
眠れない夜のための詩を、そっとつくります。

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