上野駅
きみはかなしい話ばかり書く。あなたが言って、冬が来た。桜の咲かない上野駅。
三日月を剥ぎ取り手首を切った、流れたのは夜色の血。私の中の夜の中、星はたったひとつもない。
口を開いて嘔吐未遂、忘れたい記憶痛みかなしみ、全部なかったことにしようとした。吐き出した青いガラスが、喉を切り裂き私の声を奪った。
だから透明な歌を歌った、誰もかなしくならない歌を。数多の歌があざ笑い、靴が私の哀を踏む。
きみは孤独じゃないのに、孤独みたいなひとだ。あなたが言って、冬が来た。雪の降らない上野駅。
届かないのなら私の言葉なんて、何の、何の意味もない。でもこの世のものはすべて、何の、何の意味もないよ。
じゃあなんできみは生きようとするの、なんで私に生きようとさせるの、きみがいない冬なんて、私には何の価値もないよ。
いいなと思ったら応援しよう!
眠れない夜のための詩を、そっとつくります。