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近況 2022.4.3

 泣き腫らして10時半。

 私に処理できる問題と、処理できない問題は分けて考えなきゃ、と思い至る。 
 
 血縁のこととか、考えるとおかしくなっちゃいそうなこととか、色々悩みはあるけれど、私が泣こうが喚こうが、どうにもならないことはどうにもならない。

 せめて私は私の暮らしをやるしか、ない。
 
 最近は暮らしが崩壊していた。転職と引っ越しを同時に行うことになり、その準備とこれからの不安で息が出来なくなる。大丈夫だろうか、大丈夫だろうか。

 誰に何を責められても、私は自分で選んできた人生を後悔したくないと思う。自分で選んだといっても色んなひとに支えられてきて、そのことは自分が一番よく知っている。ありがとうと思う。だからこそ幸せに生きたいと思う。不幸の前に跪いていたくないと思う。

 呪いは断ち切らなきゃいけない。 
 不幸は叩きのめすのではなく、飼い慣らしていい具合に味方にしていくしかない。 

 今まで楽しかったことを考える。
 これから起こりうる楽しいことも。

 対価がないと誰もいなくなる、とパニックになり泣く私を、大丈夫だからと信じさせようとしてくれている人のことを信じたいと思う。
 
 信じる、で思い出した。
 
 ディズニー映画『アラジン』の有名シーン。魔法の絨毯で空を飛ぶ前のシーン。アラジンがジャスミンに手を差し伸べて、「僕を信じて」と言う。(数年前に公開された日本語版だと中村倫也ボイスで)

 もうひとつ。江國香織さんの小説で好きな台詞。「ひとは信じたものにしか守られ得ない」。

 ひとは何かを信じたとき、その存在に守られ、飛ぶ勇気が得られる。この事実を、胸が抉れるほど実感する。

 この1年で、元々抱いていた人間不信が病的に強くなった。けれど厄介なのは、私は人間不信のくせに人間が好きなところで、ずっとそのジレンマに首を絞められている。ひとはこわい。でもひとが好きだ。誰を信じればいい。本当はひとを信じたい。

 だからこそ、何も信じられないどこにもなにもない、と言って泣く私のそばにいてくれたひとのことを、大切にしていたいと思う。

 そして、信じることの本質はきっと、それを信じた自分のことを信じるということだ。
 だから自分に対する信頼を回復するために、自分を好きになりたいと思う。起きたらジャスミンになっていたいが、私は疲れ果てたしがないOLである。否、OLの仮面を被った小説家である。と呟くただのひとりの人間である。

 窓を開ける。ぬるい夜風がにやつきながら通り過ぎていく。魔法の絨毯がなくても私はここから飛んでいけるだろうか。数日前アラジンを、否、ヤマト引越便を予約した。
 
 東京はどえらいところだった、と思っていたけれど、私を殺していたのは東京ではなかった。
 東京は人間の中に潜んでいる化け物にとって、絶好の餌だった。それを喰った化け物が私の内部から私を食い尽くそうとしていることに気づいたから、私はここを出ていくのだ。

 こいつを飼っていることに変わりはないのだけど、小さい犬くらいにして可愛がってやれたら僥倖だと思う。
 
 こっちの桜は散り始めているけれど、引っ越す予定の街の桜は、これから咲く。

 大丈夫じゃないかもしれないけど、今日だけは、大丈夫と言い聞かせて眠る。

2022.4.3

 
 
 

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夕空しづく/詩人・小説家
眠れない夜のための詩を、そっとつくります。