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東京でOLをしながら小説を書いていた頃

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だいすきでだいきらいだった東京。
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2022年1月の記事一覧

コリドー街

コリドー街という概念は、上司から教えてもらった。

「ここはナンパスポットなんだよ、女の子なら立ってるだけで食事代には困らない」

今度連れてきてあげようか、という誘いを笑って誤魔化しながら、私はそこを、愛憎渦巻く欲望の掃き溜めと名付けた。

東京に来るまで、港区女子なんて概念だと思っていた。実在することを知った時、いつも見ていたドラマの舞台裏を覗いてしまった気がした。

彼女は恋人Aの年収100

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新宿駅の私へ

『携帯を握りしめていても思い出はできない』、この一文で、愚かにも走り出してしまう若さがあの頃の私にはあった。
所持金が5000円しかないのに、何とかなるだろと思い飲みに行けるような楽観性が、かつての私にはあった。
好きなことを好きと言っても、弱音や雑考を書き綴っても、すべてゆるされているような安心感が、確かに私にはあった。

今の私には、それが全部ない。
気づいたらなくなっていた。

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小説なんて書いている場合ではないのはわかっていた。

会社を辞めたいと伝えて2日、次の働き口を探すための準備も住処探しも退去手続きも役所手続きも保険程度の通院も全部何とかしなければならないのに、小説なんて書いている場合ではない。でも同時に、小説を書かなければ生き延びることなど不可能な気がした。

TOHOシネマのレイトショーをいつまでも予約できない。まだ夜の東京タワーを見ていない。この絶望の正体が

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人身事故

月曜日は人身事故が多い。だから遅延しても始業時間に間に合うよう、一本早い電車に乗る。
遅延した時にかなしくなっていたのは4月までだった、「ただいま遅れが発生しており申し訳ありません」というアナウンスに「誰も悪くないよ」と答えていたのは5月までだった。段々「何でいまなの」と思うようになり、「遅延したので遅れます申し訳ありません」とメールをすることに疲れ果て、そして「私だって飛び降りたいのに」と思うよ

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雪の奥のふるさと

天然のかまくらを横目に歩く。キャリケースとブーツの軌跡を、雪が面白そうに掻き消していく。

真っ白に埋もれた小さなふるさと、
消え入りそうな街の奥に、ひとりで帰った。

年賀状お雑煮おせちオードブル、お笑いの特番と箱根駅伝。年始の諸々が心に流れ込んできて、かつての思い出を呼び起こしては、私を孤独な現実に突き落とす。あたたかいストーブの前であたたためたミルクを胃に流し込みながら、心が空白で満たされて

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