
川なのか海なのか、それとも湖なのか池なのか。
川なのか海なのか、それとも湖なのか池なのか。
どこだか分からないけれど、
私はずっと長い間、溺れていたのだな、と思った。
今は、その川の底か海の底か、とにかく足が着く場所を見つけて、水の抵抗を感じながらも、少しずつ地上に向かって歩いているということを感じている。
水の深さはおそらく太腿か膝のあたりだろうか。歩きにくい、だけれど、歩いている。
確かに私の足は底に触れていて、砂のざらざらした感じ、小石や岩を感じながら、そして時折足をくすぐる小さな魚や水草を感じながら、着実に歩んでいる。
溺れていた頃は、前も後ろも、右も左も、自分がどこにいるかも分からなかった。
ただ息をするので精一杯で、水の中に沈みもがく中で、いっそのこと溺れて死んでしまった方が楽だと、何度思ったことだろう。
そうやって、私は苦しみ、疲弊し、ある時急に現れる、水に浮かぶ何かにしがみつきながら、かろうじて生きてきた。
ただその何か、例えば流木であったり、ペットボトルであったりは、役目を終えるとどこかへ行ってしまって、私は再び溺れる世界に戻るしかなかった。
一時助かって、また溺れる。
そんな終わりのない苦しみを繰り返していた。
しかし、今、
私の足は、地に着いている。
足が地面に着くことで、私は「私」を感じ、「世界」を感じるようになった。
空気の匂い、空の色、鳥の声。私の手の感触、足の感触。
今まで気づかなかった、この感覚。
「生きている」という、初めての実感。
こんな感覚があるだなんて、知らなかった。
深く呼吸をして、「私」がこの世界にいることを感じる。
あぁ、これが、「生きる」ということなのか。
きっとまた、嵐や波が来て、また足の着かないところへ連れ去られてしまうこともあるだろう。
けれど、水に流されながらも、この足の着く場所を忘れないようにしよう。
私はもう、この場所を知っているのだから。