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【海外の職場の人事事情#7】良かれと思って手伝うと逆効果?
日本では、先輩や上司が後輩や部下の仕事をフォローし、必要に応じて手を貸すことは珍しくありません。しかし、ポーランドを含むヨーロッパ諸国では、各ポジションに必要なスキルを持つプロフェッショナルが採用され、それぞれの役割を明確に遂行することが求められます。
そのため、日本人が「助けよう」という善意から現地スタッフの仕事を代わりにやってしまうと、「この人は自分の業務に集中できていないのではないか?」とか、「現地スタッフの能力を信用していないのでは?」と誤解されてしまう可能性があるんです。
海外の職場で求められるリーダー像
各自の職務内容を尊重する
日本では、社長が作業着を着て現場で社員と一緒に作業する姿を見ると、「現場を理解して社員を思いやるリーダーだな」と好印象を抱きますよね。
しかし、ヨーロッパ諸国、特にポーランドでは事情が少し異なります。各ポジションに定められた職務を遂行することがプロフェッショナルとされるため、社長が現場の作業を手伝ってしまうと、「管理能力が足りないのでは?」と思われてしまうこともあるのです。
もちろん、社員を大切にする姿勢はどの国でも重要ですが、それと同時に「この人はチームを適切にマネジメントできるリーダーだ」と納得してもらえるような立ち振る舞いも求められます。
つまり、「信頼できるリーダー」とは、各自の職務内容と責任を把握し、適切に業務を割り振る人です。その姿勢を通して、チームに対して「あなたにこの仕事を任せている」「私はあなたを信頼している」というメッセージを伝えることができます。
介入ではなく「サポート」を意識する
チームメンバーが助けを必要としている場面もありますよね。例えば、他のチームや外部とのやり取りがうまく進まない、作業の進捗やクオリティが期待通りではない、といった状況です。
こうした時、リーダーとして「自分が代わりにやってしまおう」と思うこともあるかもしれません。しかし、まず意識したいのは、メンバーが主体であることです。必要以上に介入するのではなく、個別にアドバイスをしながら、メンバー自身が解決できるようサポートする姿勢が大切です。
リーダーが代わりに進めると一時的には解決しますが、メンバーの成長機会を奪ってしまうことにもつながります。また、「期待に応えられていないのではないか」「自分はこの会社に合っていないのかもしれない」と思わせてしまうことで、信頼関係を築くことが難しくなることもあります。
フィードバックは感謝の言葉から始める
ヨーロッパでは、日本と比べて転職が一般的です。そのため、自分のスキルや会社への貢献を積極的にアピールする文化があります。
このような背景から、たとえ相手を思ってのことであっても、指摘ばかりしてしまうと、最悪の場合、「転職を考えた方がいいのでは」と感じさせるきっかけを作ってしまうかもしれません。だからこそ、フィードバックでは「評価」と「期待」をバランスよく伝えることが重要です。
例えば、「詳細なレポートありがとう」「〇〇の対応助かったよ」など、事実に基づいて仕事を認める言葉からスタートしてみましょう。その上で、面談などで一緒に決めた目標を再確認し、「こういう仕事ぶりを期待している」と、具体的に論理的に伝えてあげると、相手も納得しやすくなります。
何があってもチームは「守る」
目標や実績はとことん追いかける一方で、チームの外から何か指摘を受けた場合、絶対にメンバー個人の責任にしてはいけません。
指摘の内容を検証し、仮にあなたのチームに非があったとしても、「私が指示をしました」と、リーダー自身が責任を取る姿勢を示しましょう。
これは、ヨーロッパのような転職社会では特に重要です。前述したとおり、個人の価値を証明し続ける必要がある環境だからこそ、人前でメンバーの能力について否定的な発言をしてしまうと、退職や転職につながるだけでなく、人事問題に発展するリスクもあります。
また、たとえ直接あなたがミスに関わっていなくても、雇用契約上、リーダーであるあなたに最終的な責任があるケースも少なくありません。
もし改善が必要な場合は、個別にフィードバックを行い、次につなげるサポートをし、対外的にはあくまで「リーダーである自分が責任を持つ」と示すことが、結果的にメンバーとの信頼関係を築くことにつながります。
日頃のコミュニケーションで信頼関係を築こう
仕事を通じてリーダーとして信頼関係を築いていくことはもちろん大切ですが、休憩時間などのふとした会話で、少しプライベートな話題に触れることも意外と重要です。
たとえば、「週末は何をして過ごしていたの?」「最近、子どもさん元気?」「新しくオープンしたカフェ、行ったことある?」など、何気ないスモールトークが、相手との距離を縮めるきっかけになります。
それは、「あなたに関心を持っている」「あなたを一人の人として尊重している」という姿勢が伝わるからです。業務上の指示・評価だけではなく、人としてつながることで、より深い信頼関係が生まれます。結果的に、仕事で困ったときも相談しやすくなり、チーム全体のパフォーマンス向上にもつながるでしょう。
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※この記事ではポーランドを例に挙げていますが、国や企業によってビジネス文化は異なります。働き方ひとつとっても文化の違いがあることをご理解いただけたと思うので、今後のリサーチやコミュニケーションの参考になれば幸いです。
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