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【海外の職場の人事事情#1】部下にお茶を頼んではいけない?
誰もが一度は、上司や先輩に、「お茶を出して」と頼まれたこと、ありますよね。海外で働く上では、日本では当たり前の慣習が現地の文化やルールと衝突することがあります。今回はポーランドの事例をもとに、その背景や注意点をご紹介します。
部下にお茶を頼まない方がいい理由
雇用契約に基づく業務内容の明確化
日本では、新卒採用が主流で、入社した新人が雑務からスタートし、徐々にスキルアップしていく仕組みが一般的です。勤務年数が長い上司や先輩が、年下の社員に「お茶を淹れて」と頼むのは特に問題視されません(最近はこの文化も変わりつつあるとは思いますが、あくまで一般的に、です)。
一方、ポーランドでは新卒採用の文化がなく、特定のスキルを持つ人がそのポジションに応募し、面接で条件を確認し、採用されています。多くのヨーロッパ諸国では、業務内容は雇用契約で細かく規定されています。
お茶を淹れることは、たいてい受付の仕事とされており、それ以外の社員に頼むと「自分のスキルが軽視されている」と感じさせたり、受付の社員には「仕事を任せてもらえない」と受け取られる可能性があります。
「お茶淹れ」は分かりやすい例として挙げましたが、マーケティングの業務はマーケティング担当者が、セールスの業務はセールス担当者が行う。一見当たり前のように聞こえますが、海外では特に雇用契約に記載された職務内容に基づき、それぞれが責任を持って業務を遂行することに徹底しています。
各自が自身の職務に対して責任を果たすことが、給与を受け取る根拠となり、職場全体の円滑な運営に繋がる、という考え方であり、ビジネスの文化なのです。
「契約書に記載されてない仕事には責任を持てない」という考え方
ポーランドでは、たとえ上司からの依頼でも、契約外の仕事について「これは私の業務ではありません」と断るケースがあります。これは嫌がらせや怠慢ではなく、「契約書に記載されていない仕事に責任は持てない」というプロ意識から来るものです。
もちろん、上司の依頼を快く引き受ける人もいますが、依頼内容が契約に基づいていない場合、後で人事や法務的な問題に発展する可能性があります。このため、現地の人事部門としっかり連携し、業務内容を確認しておくことが重要です。
異文化環境でのビジネスの心得
1. 現地の「働き方」を尊重する
日本の働き方には多くのメリットがある思いますが、現地の文化を無視して、日本のやり方を押し付けるのは避けるべきです。日本の会社で働く人に、急に「今日からアメリカ人と同じ働き方をして」と言っても無理がありますよね。ビジネス文化が違うことを受け入れる。それが海外での成功の第一歩です。
2. コミュニケーションと信頼関係の構築
日本の働き方や価値観を伝えることも大切ですが、まずは相手の文化や働き方を尊重する姿勢を示しましょう。日々の挨拶や何気ない会話を積極的にすることで、現地の「働く文化」をよりよく知ることができます。今後効率よく仕事を進めるためには、このような積み重ねが大切です。
3. 現地の人事部門と連携する
訴訟問題や労働法違反を避けるためにも、事前にしっかりと社員の職務内容を把握しましょう。また、現地の人事部門と何度か打ち合わせをしながら、人事的な観点での現地の「働き方」が日本とどう違うか、何に気をつけるべきかを確認することをおすすめします。
コミュニケーションがとれていれば大きな問題は発生しない
初めて海外で働くと、文化的な違いだけでなく、制度の違いにも驚くことが多いものです。国が違うのだから当然ですよね。重要なのは、その違いを受け入れ、日常のコミュニケーションを通じてトライアンドエラーを繰り返しながら信頼関係を築くことです。こうした努力を積み重ねることで、大きな問題が発生する前に気づき、対応することができるようになります。
海外勤務では、柔軟性と粘り強さが鍵です。相手を理解するための努力を惜しまないことが、成功への第一歩となるでしょう。
※この記事ではポーランドを例に挙げていますが、国や企業によって社内の文化は異なります。お茶淹れひとつとっても文化の違いがあることをご理解いただけたと思うので、今後のリサーチやコミュニケーションの参考になれば幸いです。
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