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トモダチゴコチ

「絵なんて描いてたんだ?」

私の絵が初めてコンクールで入賞した時
親友は苛つきながらそう言った。

「何、この絵?どういう意味なの?」

目つきが鋭くて、私は何も答えられない。
ため息をつく彼女…。

「うちら、キャラ違いすぎて、
 友達やめた方がいいだろ」

私の心は完全に閉じてしまう。
冗談っぽい適当で曖昧な返事をして
その場を走り去った。

彼女の影のような私が彼女より
目立つなんて許されない。
私はいつも下にいる存在だ。

(妬ましいよね?見下してるもんね?
 本当は私のこと友達だなんて思ってないもんね!)

明るくて、誰と一緒でも堂々と笑う彼女が
私は誇りだった。

小さな頃から私を見つければ、
駆けてきてくれる笑顔が大好きだった。

だけどそんな笑顔を1番見たかったこの日に、
私は彼女と決別しようと思った。

(さよなら…)

彼女は私とは違う世界に生きる人だから。

「待ってよ!」
足早に帰路に着く私の手を掴んで、
彼女は怒鳴った。
「答えてよ!」
私を掴むその力は強くて振り解けない。
私は彼女の目を見ることなんてできなくて
ただ俯くことしかできなかった。

すごい力で私の手を引いた。
私の指先が水滴に触れる。
その生ぬるい感触に驚いて彼女をまっすぐ見た。
彼女は泣いていた。

「教えてよ!」
私を見つめるまっすぐな瞳の必死さにたじろぐ。
言葉がなにも出てこない。

「ゆっくりでいいから…」
彼女は泣き笑った。

「なんで絵を描いてること教えてくれなかったの?」

(そっか…)
私は何も伝えていなかったんだ。
絵を描くのが好きなこと。
私が美しいと思うモノを描いていること。
そんな自分が恥ずかしくて隠していたこと。

どうせ彼女にはわかってもらえないと
見下していたのは私かもしれない。
私が友達だって
信じてあげられなかったんだ。
私はその手を握り返した。

この美しい笑顔をどこかに残したくて
描かせてほしいと伝えた。

彼女はいつも通り大袈裟に笑って見せた。
(そうだった…)
私はこの笑顔が眩しくて
いつだって心地よかったんだ。

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