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この家どうするの?(28)葬儀屋さん今昔・4
父は旅立った。監察医のもとへ。
葬儀屋さんに迎えを頼まなくては。
不謹慎なお話ですので、つらいかたはお読みにならないでください。【病院以外で人が死ぬと、こうなる例 】
お住まいの自治体・葬儀社で対応は違うと思います……。
(1830文字)
義父母は大手葬祭さんで
空っぽの父の家に、わたしひとり。電話先は大手葬祭さんの明るい男性の声、30代くらいか。
(回想シーンです)
この大手葬祭さん、オットの両親もお世話になっていた。
義父は心臓・義母は脳。臨終の際に病院で渡されたパンフレットは大手葬祭さん。
選択肢はなかった……遺言もなかった。
オットの実家は、わたしとおなじ準工業地帯の下町。雰囲気も似ている。スーパーのある最寄り駅から徒歩20分の距離。町工場と長屋のような家が連なる濃いめのコミュニティー。
なぜか酒屋と寿司屋が細々と営業していた。
サラリーマン家庭で義母は専業主婦という、よくあるスタイル。
オットは、定年退職した父だし、たいそうなお葬式は必要ないと思い……
家族葬でいきます。
しかし義母も町内会も、それを許さなかった。
「なに言ってんのアカンよ」
「ちゃんと見送らなバチ当たる」
「それは親不孝、うちら近所やし供養やと思てるし」
町内会の集会所
町内会の集会所。ここで葬儀をする慣例。
わたしはビックリしたが従うしかない。娘は三歳ぐらいでした。
近所の人たちが集会所で段取りをする。慣れている。
わたしは義母の指図でビールを運んだり、お寿司を並べたり……。
それでやっと気づいたのです。
町内の酒屋と寿司屋、あと花屋も。こういう需要があり、暗黙の地域活性化が葬儀だったのだ。
オットは大手葬祭さんに、お通夜やお葬式の依頼をする。大手葬祭さんは、その地域の業者に注文してるだけ。
平成の中ごろは、冠婚は少なくなり、葬祭が派手になっていましたね。
義母も近所の手前、見栄をはってビールや寿司を追加するし、祭壇のお花も集会所からあふれんばかり。そのぶん香典もたくさん集まったようだ。
(よそ者の嫁には触らせない、わたしも触りたくはない )
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結果的には、大手葬祭さんへの支払いは、すごかったらしい。町内会の集会所なのに。
オプション料金、四十九日までの供養セット・貸し切りバスやらモロモロ……。
義母の葬儀のときも、以下同様。
義母を亡くしたオットから、大手葬祭さんに現金を振り込んどいてくれと請求書を渡された。わたしは明細を見て倒れた……。
ご遺体タクシー代金・170000円
無言の義母、病院から家までの帰宅のときだ。
運転者らしき白髪のスタッフが、とても雑だった。面倒くさそうに義母を担架で運んできたのだ。人材センターのバイトかなんか? 大手葬祭の研修を受けていないような。
そうそう、末端の業務は外部発注。間違いない。
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その後、別の人が棺桶をたずさえ家に来て、丁寧な挨拶と丁重な入棺の儀となった。白装束の説明やら六文銭やら、最後の旅立ちのしたくを……。
先ほどの失態は薄らいだが
ここは大手葬祭さんのスタッフだろうなと思った。
(回想シーンおわり)
今回の大手葬祭さん
真夜中の問い合わせ。父の家、父が使っていた固定電話から。
大手葬祭の明るい声の男性、芸人のヤ(スムラ)さんみたい。
時代は変わったのか、疫病で世間が暗くなったのか。わたしには判断はつかない。とにかく。
明るいヤ(スムラ)さんは、個人情報、わたしに全部言わせてる。
わたしの住所イランのでは?
イヤ、いります。請求書送付。
問い合わせだけなのに。
個人情報は、どこかに売り飛ばすのだろうか。
だんだん気分が……眠い。警察のガサ入れもあり、きょうは疲れた日だった。
……思い出した。
あんときの17万円……。タクシー代。
父のお迎えが要るんやった。タクシー代は、もっと値上がりしてるやんな。
それでも迎えにいってもらわなアカンのやわ。
大阪弁で失礼しました。
もう疲れてきて……変なことしか浮かばないのです。
わたしは、明るいヤ(スムラ)さんに事情を説明しました。
・父は自宅死。監察医事務所に解剖に出かけている。
・終わったら葬儀屋さんwith棺桶で現地へお迎え要請。
・それは、いつか誰も知らない。
説明するわたしも、よくわかっていないのです。こんなことは初めてなので……
明るいヤ(スムラ)さんの答えは……
監察医事務所ってドコですか?
(不謹慎ながら次回へ続きます)
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「親の持ち家」の日
いつも こころに うるおいを
水分補給も わすれずに
さいごまでお読みくださり
ありがとうございます。