おいしいがキライだ
「おいし〜い! 」「おいし〜い!」
店内にひびきわたるはタレントさんの声。わたしの後ろのテーブルだ。
飲食店で、なにかが始まりました。
(1720文字)
なんかヘンだな
何度か行っている飲食店。
理由は、広くて静か。
テーブル席2つと、遠くの窓側にカウンター席がのびている。Free Wi-Fi 完備。
店長さんは「ちがう畑」からやってきた来た感がある。そのぶん、スタッフさんが親切で愛想がよい。
きょうは、いつものスタッフさんがいない。店長さんが立っている。
あたりまえながら、すこしの異変。
そういえば、お店の前に黒い車。
何人か店の前でおしゃべりしている。
なんかヘンだな。と、思いつつ。
たてものに入ってしまった。今回の席はカウンターのすみっこに。わたしは、いつもテーブルに座るけど。
なんとなく、きょうは。
わたしのあとに女性グループがテーブルに座った。
店長さんが女性グループに
「〇〇を持ってきましょか?」
「▲▲は当店オリジナル」
さかんに、すすめている。
お客さんのほうから注文しない。
ヘンだな。
店側がメニューを決めてテーブルに運んでいるようだ。
みなさん、べつに写真も撮らないし。
わたしが座る遠くのカウンターから、 2つのテーブル席が見える。
1つのテーブルに、この女性グループ。
1つのテーブルは空いている。
この女性グループは何だろう?
運ばれてきたものを食べている。
カウンターに座っている別のお客さんも、そう思ったのにちがいない。
にぎわってますね
またグループが入店してきた。
すこし多い、7~8人くらい。
「にぎわってますね」
リーダー格のひとが店長さんに話しかけた。
このコトバが、ほしかったの店長さん?
なんとなく状況が飲みこめた。
女性グループのテーブルに、お皿がたくさんならんで華やかだ。
お店がにぎわっている、この画が、ほしかったのだ。
リーダーも店長も。
撮影開始
7~8人のグループのうち、テーブルに座ったのは1人だけ。
あとのひとは、テーブルのまわりをぐるりと囲む。おのおの手には、機材を持って。
撮影隊だ。
テレビだか、SNSだか、紙媒体だか知らないが。
座ってるひとはタレントさんだ。
見たことある。
店長さんがタレントさんに、お皿を運ぶ。打ち合わせズミなのかアドリブかは、わからない。
おいし~い!
おいし~い!!
おいし~い!!!
タレントさんの声が合計3回。
ほかに言うことは?
どうおいしいの? 食べたの?
おいしいの? ほんとに?
おおきな声だ、そんなことを考えながらテーブルに視線をうつす。
タレントさんのグループは、もういなかった。
テーブルに、お皿はなかった。
店長さんが片づけたようだ。
女性グループは、まだ食べていた。たくさんのお皿がヒラヒラ。うつくしくテーブルに舞っているよ。
あなたたちは「とまり木」。
サクラという名の。
事前に断りなし
しかし店長さんからは、ひとこともなかった。
「まもなく撮影があり騒がしくなりますが、いいですか?」
みたいな事前に告知があれば入らなかった。食べなかった。
貼り紙でもあれば入らなかったのに。
おいし~い
おいし~い
おいし~い……
飲食店とメディアのほしいコトバ。
「絵づら」はわかるが、「字づら」は、つまらない。わかりにくい。
わたしは「おいしい」だけは書かないぞ。
写真は撮るが、これを「おいしい」といわないほうが、おもしろい。
食べ終わって、店長さんに一礼して店を出た。
ごちそうさまは忘れた。
なんだかな
きょうのわたしの「絵づら」は
よくなかった。
「うばザクラ」のしぶんが。
いつも こころに うるおいを
水分補給も わすれずに
さいごまで お読みくださり
ありがとうございます。