きものの補整について
多くの着つけ教室では、タオルや市販のグッズで「体型補整」をするのが常識のようですが、私は基本的には補整はいらないのやないかなと思っています。
舞台や式典のときは鎖骨のあたりに少し脱脂綿などを入れることもありますが、ふだん補整することは、まずありません。日本舞踊家で日常的に補整してきものを着ている方は、うちの師匠をはじめ、あんまりいないようです。
着つけにかかる時間をできるだけ短縮したい。稽古では汗をかくので、余分なものを重ねたくない。ゆるゆる着ているので苦しくなく、クッション材を入れる必要がない。がっちりぴっちり着るのはなんとなく無粋な気がする。
私たちが補整をしないのは、こんな理由でしょうか。
逆に考えると、補整が必要とされているのは①紐のあたる部分が苦しいので、緩和材として②紐の位置をずれにくくして、着崩れを防ぐため③体型を筒状にすることで、きもののしわをなくしたい…これらを解決するためかと思います。
①紐のあたる部分が苦しいので、緩和材として
以前「紐の締めかた、帯の巻きかたを変えると、きものの着心地がよくなります」で書きましたが、胸紐は背中側をきつく、みぞおち側をゆるく締めると、補整しなくても苦しくなくなります。
②紐の位置をずれにくくして、着崩れを防ぐため
腰紐はしっかり締めて、胸紐は背中側をきつめに締めると、紐の位置は安定します。
③体型を筒状にすることで、きもののしわをなくしたい
もしかしたらこれが一番大切だと考えられていることかもしれません。大きな布をからだに巻きつけていくわけですから、かならず布の余りが出るもの。私は、ふだんのきもの姿は多少のしわやたるみがあるのが自然なのではないかと思っています。
補整をしないと、胸の大きい方は胸が帯にのったようになると言われますが、これも前出の「紐の締めかた…」で書いたように、帯の上線をゆるく巻くことで解決。アンダーバストと帯の胴まわりのあいだに隙間をつくるので、胸が強調されることはありません。
また、お太鼓のたれがめくれ上がるのは、帯の位置が高すぎる場合です。お太鼓のたれの下線がちょうどお尻の一番高いところにあたっていると、補整しなくてもお太鼓は安定しますし、うしろ姿もすっきりきれいに見えます。
もちろん、補整することがからだに合っている方もいらっしゃると思います。でも、絶対に補整しないとおかしい、または着られないと考えておられる場合は、ぜひちょっと試してみてください。ゆるっ、ふわっ、としたきもの姿が街に増えると嬉しいです。