徳島で畑が持ちたくなった話。
2022年4月19日〜2022年5月8日
おてつたびで徳島県阿波市に農業しに行ってきました。
徳島県阿波市って、こんなところ。
徳島空港よりも高松空港のほうがアクセスがいいという、香川県に隣接する市です。
徳島県といえば、すだちが有名ではありますが、農業自体が盛んな地域です。その秘密は、市街地の中心に流れる吉野川にあります。暴れ川として知られており、元は香川との県境にあったそうです。(現在は阿波市と吉野川市の間に位置しています)
氾濫を繰り返して、今の位置にきましたが、その際に山の養分が運ばれ、周辺の土壌は栄養分に富んだものとなったそうです。
日照時間や温暖な気候もあわさった結果、徳島では様々な農作物が生産されています。
そして、今回宿泊先兼就労先となったのは、阿波ツクヨミファームさんです。
短期の農業体験を経て、「もう少し長い期間で農業を覗いてみたい」と思い、おてつたびで応募しました。
そんな軽いモチベーションの私でしたが、ここで農業に対する価値観がグッと変わることになります。笑
この荒れた畑はなんだ・・・!?
最初に思った印象です。ツクヨミファームさん、すみません。。
畑って、表面に土か黒いビニール(通称マルチ)が出ていて、育てている作物だけが等間隔で並んでいるイメージでした。
ツクヨミファームさんでは、「リジェネラティブ農業」略して「リジェ農」を実施しており、この草ボーボーなところこそが、リジェ農の特徴なのです。
リジェネラティブ農業とは?
有機栽培・自然栽培など、なんとなく聞いたことある人も多いと思いますが、その中の1つだと思ってください。
最近よく聞くサステナブルとも少し異なり、現状維持というよりは、「土地を再生する」まで盛り込んでいることがリジェ農の特徴です。
リジェ農って具体的に何するの?
リジェ農で具体的に実施されている施策は、主に下記4つです。
①不耕起栽培
トラクターなどで畑を耕さない農法のことです。収穫後の作物は、根の上だけ刈って、根は土の中に残しておきます。
土には、大気の2−3倍の炭素が貯留されているので、トラクターで耕すと、二酸化炭素として大気中に出てきてしまうんです。畑を耕さずに、全世界の土壌炭素を年間0.4%増やすことができれば、大気中の二酸化炭素上昇を相殺できてしまうと言われており、環境問題の解決に大きく貢献します。
また、耕うん・整地の作業が減って体力が温存されるだけでなく、トラクター等の農機具も必要ないので、金銭的な負担も小さくなります。
②輪作・混植
輪作とは、同一の耕地に異なる種類の作物を一定の順序で周期的に交替させて育てていく農法です。同じものを育て続けては、土が疲弊して病気になりやすくなります。
混植とは、同じ畝に複数の植物を植えることなんですが、ツクヨミファームでは、ナスにネギを混植していました。一緒に植えることで、ネギの根に共生する微生物が抗生物質を出して、ナス科の病原菌を減らしてくれるのです。このようなペアのことをコンパニオンプランツと呼びます。
③被覆作物の活用
ツクヨミファームでは、草刈りした後の草を農作物のまわりに敷いています。なので、土が表面に露出せず、風雨による土壌の侵食を防ぐことができます。
また、クローバーなど雑草の一部も、刈らずに残している場合があります。
野菜を育てるための3大要素といえば、窒素・リン・カリウムですが、クローバーの根には窒素固定をしてくれる根粒菌がいます。また、クローバーは横に広がってくれるので、別の雑草を抑制できるほか、益虫の棲家にもなります。
③合成肥料の不使用
ここまでの①-③でお気づきのように、リジェ農では畑の中にあるものを活用しています。
害虫対策には農薬を使うのではなく、益虫を呼び込む花を増やします。
必要以上に土の栄養を増やさなければ、農作物と雑草で栄養を取り合うこともなく共存できます。
前の農作物の根を残していくと、土壌内の微生物が根の中だけを食べ、空洞化して水を吸収するホースのようになり、水はけのよい土壌になっていきます。年を重ねるごとに、健康な土壌に育っていきます。
このように、畑の生態系を作り、土壌の健康を保っていくことで、農薬や化学肥料が使用しなくても大丈夫になります。
農業に対する価値観に変化が…
私は東京でデスクワークをしていた反動で、今は畑で作業するのが気持ちよくて大好きです。ただ新規就農するとなると、体力・精神・金銭的負担という農業のネガティブな面が目に入ってくるので、農家を目指してはいませんでした。
しかし、今回初めて「自分の畑を持ちたい」と思いました。
リジェ農を知って、農業へのネガティブな面が払拭されたとともに、ツクヨミファーム代表の芝橋さんとの会話で、農業に対する価値観が変わったからです。
畑にいると小さな疑問がたくさんでてきます。
「なんか、てんとう虫多くないですか?」
「これは残したほうがいいっていう雑草はありますか?」
「雑草生えっぱなしで栄養は持っていかれないんですか?」
どんな質問にも芝橋さんは丁寧に解説してくれます。まさに、生ける農業百科事典で、1つ聞いたら10答えてくれました。
その中で、「どの雑草を残すのか・益虫を呼ぶにはどうしたらいいのか?」という質問に、
「植物も生き物も、どうやって生きていこうとしているか、観察することが大事」
と答えていました。例えばクローバーなら、毎日畑を見ることで「横に広がっていくな」と特性を感じとり、自分の畑に必要か考え、刈るかの判断をするそうです。
この話を聞いた時に、「農業をやる」のではなく「畑を築き上げている」と感じました。そして、畑が「自分が育てる小さな世界」のような気がして、自分なりの畑を作ってみたいと思うようになりました。
自分のこれからを考え直してみる。
実はデザイナーとしても働かせていただき、半農半Xができました。これがまた心地よくて、畑を持ちたい自分と、半農半Xしたい自分、はたまた旅したい自分で揺れ動いています。
※現在実施中(2022年5月)のクラウドファンディングのページ内で使用されている画像も一部担当していますので、ぜひ見てください!応援もお待ちしております。
代表の芝橋さんが「農業に興味がある+スキルを持つ人」を求めていたので、運良くデザイナーかぶれの私が半農半Xできたのですが、想像以上に自分にあっていると思いました。
全部が農作業ではないので体力的に余裕ができ、無理なく農作業とデザイナー作業が両立できました。また実際に畑に出たからこそ、実体験からくるアイディアをデザインに落とし込むことができ、農作業とデザインで相乗効果がありました。
でもやっぱり、色んなところを旅して、まだ知らない働き方をしてみたい、価値観に触れたい、が勝ちました。しばらくは流浪の民を続けようと思います。
ああ、でも、いつか畑は持ちたい。
まだまだ、思い描く生き方はブレブレですが、ゆっくり進んでいこうと思ったのでした。