どうしても手放させてくれないもの
東京に初雪の朝、やっぱり首元を温めたくて使うことにした。
しょっちゅう忘れものをするので、なるべくなら使いたくない。
例えば傘。例えば帽子や手袋。星の数ほど、忘れ物としてサヨナラしてきた。
でもどうしても、さよならしたくないものがたまにある。
でも、今日こそダメかと思った。
電車を降りたときに首元に寒さを感じた。すでに10歩ほど歩きだしたところで、網棚にのせたことを思い出した。
その瞬間に一番近くの扉に向かって早足になる。さっきまで乗っていた車両の、隣の車両に乗った瞬間、、、閉まる扉。
早足のまま、隣の車両に向かうとまだそこにあった。努めてさりげなくそれを手にして、踵を返す。
一つ先の駅に着くまでの数分で、何度こうして取り戻したか考える。
一度や二度じゃない、いつも舞い戻って、、来てくれる。
20年前大好きな人からクリスマスプレゼントにもらったもの。何度忘れても、さよならしそうになっても
必ず手元に戻ってくる。
いいかげんに新しいものに替えたら?と思うし、色も形も流行りのもの買えばいいじゃん?とも
でもどうせすぐにサヨナラするの、これ以外は。
未練なんかじゃない。絶対にそうじゃない。ただ、これが気に入ってるだけ。絶対にそう。
はやく暖かくならないかなぁ、、、冬はいろんなことを思い出して、いつもより気を付けて生きなきゃいけないので疲れるのよ。
たとえば今日が20年前のプレゼントの人の誕生日とか。なんでそんな日にまた忘れそうになってんのよ、とか。そしてまた、サヨナラできなかったのかよ、とか。
記念日を忘れる方法をゆるぼしとこう。そうしよう。
でもせっかくだから、物持ち最長記録をどのくらい伸ばせるかも試してみよう。あと、10年くらい使ったらギネスに申請できるかなぁ、、、なんて。