free「EP2 視線の先にある現実」

EP1 はこちら↓
https://note.com/shizuka_heart/n/n0d0ee2c0629f


 「いつかは会って、、、みたいです。きっと向こうには兄弟とかもいて、、、話して、、、みたいなとも思います」

 無性に腹が立った。こんなこと言わせる自分を含めた大人全員、処刑されるなら一番残酷な方法でお願いしたい。いつも笑っている、そして周りも笑わせてしまうおどけた部分を知っている。そしてその容姿は、分かりやすく『ハーフ』である。黙っていれば近寄りがたい雰囲気の顔立ちに似合わぬ言動や、親しみやすいキャラクターで周りを明るく照らす人。そんな彼女に寂しそうな顔をさせてしまった、もう後戻りはできないと覚悟を決める。

 ーーーーいつか自分の芝居を観てほしい?もしかしてそのために芝居してるとか?

 「それは、ないです。でももしチャンスがあれば、観てほしいかな、、、いや、でも、、、」

 たまに見せる、不器用で小心者の横顔。まだ17歳、いやもう17歳。きっとその心の中にある「答え」は確定じゃない。これからいくらでも考えは変わるだろう。でも伝わってくるのは、この子が見ているのは、生まれる前の過去ではないってことだ。

 ーーーー10年先までの未来を決めているのは、ママのことを考えてるから?

 「そうですね。専門学校では、勉強しながら働けるので、経験も積めるし。その後自分のやりたい仕事に就くために一番いい方法かなと。私は国家資格が欲しいんです」

 いつでもママを養えるように?とは聞けなかった。でも聞かずとも分かる。17歳の欲しいものが、国家資格だなんてちゃんちゃらオカシイ。でも覚悟してるのだ。いつその日が来ても、何があっても大丈夫なように「保険が国家資格」なのだと。

 これ以上は聞けなかった。そして書けなくなった。だから、会いにいくことにした。シャインはまだまだ全部の顔を見せてくれていないのだから。中途半端に彼女を語ることは許されない。面白おかしく軽々しく文字にすることは、決して出来ないと。


 舞台の真ん中に立って、ピンスポットを浴びるシャイン


 …文字通り光輝く人。太陽という名前以外は似合わない。出演者30名以上もいる中で、ただ一人ヒールを演じていた。そして物語のキーであり、大事なシーンを任されていた。声の出し方も、抑揚も見たことがない「完全な別人」だった。聞かずにはいられなかった。

 ーーーーあれが地?それともめちゃくちゃに役作りして、、、

 「ほぼ、アテガキでした。だからきっと」

 完全に騙されていたと思った。これがひた隠しにしているシャインの「本当の顔」なんだ。新幹線でやってきた甲斐があった。

 たいした役者だと思った。数十本×ウン十年いろんな芝居を観てきた。いろんな役者を知っている。その自分が、彼女の演技を見抜けていなかったのだから。言うほど小心者でも、不器用でもない。舞台上での芝居を緻密に計算して、でも年齢相応の初々しさもあり、そして誰よりも舞台度胸がある。少しぎこちなさの目立った部分についてツッコむと。。。

 「ゲネまで出来なかったんですよね。でも本番でやれちゃいました」

 あぁ、そういう子だ。出たとこ勝負で、いつも「今」と「未来」しかみていないんだ。芯がある、どころの騒ぎじゃなかったわ。折れないダイヤモンド級のハートを持っていた。だからきっと恐れていないんだ。舞台に立つことも、不安な未来に立ち向かっていくことも。

 そして一人でシャインを育ててきた人は、もっとカッコ良くて優しく強い人だった。こんな母になりたかった。でも一生かなうことはない。

 「今回のはまだ観てないんですよ、でもお話をきいて楽しみになりました」

 もちろんシャインの芝居のことだ。可愛い娘を懸命に育ててきたとは思えない「普通の」優しい母の顔に、心からの敬意をこめて「シャインを産み育ててくれてありがとう」と叫んだ。(もちろん心の中で大声で)

 

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