『アイカツアカデミー!』の魅力について改めて考える(4)

前回、「『アイカツアカデミー!』(以下、略称の「デミカツ」とも表記)がもたらすシリーズ全体の物語の再始動」に言及しましたが、だからといってデミカツそのもののウェイトが軽いなどということは当然ありません。

『アイカツアカデミー!』の主役は言うまでも無く配信部の面々。ここからが真打登場です。

(※いわゆる「メタ的な話」を多く含みます。そういうのが苦手な方は閲覧にご注意ください)



アイカツアカデミー配信部の物語

デミカツにおける日常パート

アイカツアカデミー配信部のメンバーは姫乃みえる、真未夢メエ、和央パリン、凛堂たいむの4名。部としてのチャンネルの他にそれぞれの個人チャンネルも運用しています。
雑談やマシュマロ読みなど共通した内容もそれなりにありますが、各々が自分のやりたいことや好きなこと、得意分野などを積極的に行っていて、4人合わせた配信予定表を見ると非常にバラエティに富んでいる印象を受けます。

コアなアイカツオタクのみえるさんはアイカツシリーズ作品の公式配信の感想枠、メエさんはラジオ風の動画を毎週公開(マシュマロによるおたより募集もしている)、ゲーマーのパリンさんは長時間のゲーム配信に取り組み、たいむさんは特技の書道を活かして「書道雑談」を行ったりする……といった感じに、軽く例示するだけでも個性にあふれています。

毎週土曜日には部のチャンネルで「デミカツ通信」と題した配信を行っており、週のまとめや最新情報のお知らせが行われ、4人揃って挑むバラエティ企画などが盛り込またりもします。
また、ファンアートの紹介などファン活動のピックアップもしており、ユーザーとの交流を強く意識していることがここでも伺えます。

このようにバラエティ性の高い配信をある時はそれぞれで、ある時は皆で揃って行う中で、併せて定期的に必ず行われているのが「歌枠」の配信。これがデミカツの目玉の一つであることは間違いないと思います。


デミカツにおけるライブパート

だいたい月に1~2回のペースで行われるこの「歌枠」では、アイカツシリーズの楽曲はもちろん、アイカツシリーズ以外の楽曲も歌われることが多々あります。
その選曲範囲は非常に幅広く、J-POPや新旧のアニソン、ボカロやインディーアーティストの曲などなど、非常にバラエティに富んでおり、対象を特定の世代・嗜好層に絞らないセレクトを心掛けてくれているように感じられます。
データカードダスにおける一部例外を除けば、アイカツシリーズにおいてアイカツ以外の楽曲が歌われることは原則としてなかったため、「アイカツのアイドルが自分に馴染み深い曲を歌ってくれる」という事態に喜びを感じるファンも少なくないでしょう。(実際、チャットやコメント欄もたびたび盛り上がっています)

また、アイカツシリーズの曲についてもファン心理を非常に喜ばせてくれる選曲が頻繁に見られます。
曲数の多さに対して歌われる機会自体が少なく埋もれがちになってしまう『アイカツ!フォトonステージ!!』発の楽曲や、作品展開中の社会情勢でライブ披露が少なかった『アイカツプラネット!』発の楽曲に日の目が当たる機会も増えており、両作を愛顧していたシリーズファンから喜びの声がたびたび上がっているのを散見します。(私自身もその一部です)


実は今までと同じなのかもしれない

前二節の小見出しの内容から主張したいことは既におわかりいただけているかもしれませんが、日々の配信やSNSでアイドルたちの日常を見守り、定期的に行われる歌枠配信でその歌声に酔いしれる……それは今までのアイカツシリーズのアニメ内で行われていた流れと重なるのではないでしょうか。

もちろん、従来作では1つの「エピソードパートとライブパートのサイクル」が30分というコンパクトな枠に収まっていたので、完全に同じとは言いません。
さらに言うなら、「脚本家さんが緻密に組み立てたシナリオによる30分」(アイカツファン諸氏はそのクオリティの高さをご存知でしょう)と「その場の流れで進行するリアルタイム配信の30分」の充実度を同列に並べることも難しくはあります。

ただ、デミカツでは個人の配信がだいたい週に3枠、一度の配信が基本的に1時間~1時間半ほどとなっており、さらに全員参加のデミカツ通信が1枠、これも1時間強ほどあります。
そして、歌枠配信では1回にだいたい5~6曲を歌う上、それが4人分あるわけですから、少なくとも月あたり20~24曲ほどが披露される計算になります。
時間基準で大雑把に計算すると、『アイカツアカデミー!』の月あたりのコンテンツ量は従来のアイカツシリーズの25倍あります。披露される歌唱の曲数もおよそ5~6倍です。
(※ただし「全員の配信(またはそのアーカイブ)をフルに視聴した場合」という条件付きのため、ここまでの数字にはならない人も少なくはありません。MAXでこのぐらいになるということをご認識いただきたい意図です)

このコンテンツ量の差を考慮に入れるならば、少なくとも長いスパンで得られる満足感に大きな差は生じないのではないでしょうか。実際、『アイカツアカデミー!』が始まってからの経過期間について、リスナーの間では「まだそれしか経ってないとは思えない」という声も多く見られます。

しかし、「歌枠がライブシーンに等しい存在」であるという見解に対して、次のように思う人もいるかもしれません。

「従来のアイカツシリーズ作品のライブシーンは歌だけではなく、衣装を纏ってダンスをするという要素もあり、それが肝要だったじゃないか。歌枠は基本的に歌唱のみ、一対一で置き換えて良いのか?」

また、アイカツシリーズの物語には大きな節目が何度もあり、そのたびに大きな感動を呼ぶクライマックスが待ち受けています。
ゆえに「日常を送る配信活動を追うだけであのクライマックス感を体験できるのか?」という疑問もあるかもしれません。

もちろん、それらの事項を見落としているわけではありません。
『アイカツアカデミー!』にも、ドレスやダンスも楽しめるライブシーン、そして物語の大きな節目はあるのです。


お披露目ライブ、2つの「フェス」、そして大型配信ライブ

2025年1月現在、デミカツではこれまでに3度、配信部の面々がライブステージを披露する機会がありました。
プロジェクト開始初日である2024年7月28日に行われた「お披露目ライブ」、次が2024年8月31日の「フレッシュアイドルフェス」、そして2024年11月23日の「ブランドミューズフェス」です。

お披露目ライブでデビューし立てとは思えぬ素晴らしいパフォーマンスを発揮する配信部初期メンバーの3人。順調な滑り出しを見せるかと思いきゃ一筋縄では行かず……というところから物語は始まります。
再チャレンジの場であるフレッシュアイドルフェスを目標に、配信部の奮闘はスタート。時に悩み、時に迷い、それでもひとつずつ課題を解決していく様は、これまでのアイカツのアニメで描かれてきた先輩たちの活躍と重なるものがあります。
初めての大きなライブがやってきたその時、たった1ヵ月しか経ってないとは思えないほど大きく成長したアイドルたちの姿がそこにありました。嬉しいサプライズも盛り込まれたフレッシュアイドルフェスを乗り越えた配信部の面々は、それで慢心することなく、次なる試練、ブランドミューズフェスへ向けて早速動き出します。

ブランドの立ち上げやソロ曲の制作という大きな仕事にじっくり3ヶ月かけて取り組む中で、アイドルたちの世界はさらに広がっていきます。前述のスペシャルアイドルコラボレーションに加えて、配信活動の先輩であるvα-livのアイドルさんたちとの共演も経験。
また、誕生日記念配信ではそれぞれの来歴に切り込むような話もあり、その人間的魅力をより強く感じられるようにもなりました。

そしてブランドミューズフェスの後、満を持して配信部に加入した第四のメンバー、凛堂たいむ。
誰よりも近くで3人の活動を見守ってきたという彼女は、配信部のヘビーなファンとしての顔も持つ存在です。憧れた対象と同じ道を歩むことを決意し、部の仲間と切磋琢磨する日々を送っているその姿は、アイカツシリーズの合言葉とも言える「繋がるバトン」を早速体現していると言えましょう。

そして2025年1月4日、4人の正式なユニット名も決定し、発表されました。

デミカツ配信部の面々――「hélianthe(エリオント)」は、2025年3月の大型配信ライブに向けてまた一歩ずつ前進しています。

(続きます)

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