『アイカツアカデミー!』の魅力について改めて考える(1)

アイカツシリーズ最新プロジェクト『アイカツアカデミー!』(以下、略称の「デミカツ」とも表記)が開始してから早5カ月ほど、10年来のシリーズファンとしてその活動を拝見してきた中で、当コンテンツが持つ魅力について考えることが色々ありました。

そこで、プロジェクトが初めての新年を迎えたこのタイミングで、それを含めた現時点での『アイカツアカデミー!』への想いを言語化しておきたいと思い、筆を取った次第です。

また、最近は外部とのコラボレーションも活発になっているため、『アイカツアカデミー!』を最近知り、興味を持ってくださった方も少なからずいらっしゃると思います。
そういった方々が、より深くデミカツを知るお手伝いになるようなお話も、併せて書かせていただこうと思います。

(※いわゆる「メタ的な話」を多く含みます。そういうのが苦手な方は閲覧にご注意ください)



そもそも『アイカツアカデミー!』って?

2024年7月27日より開始したアイカツシリーズの最新プロジェクトです。
なぜ「最新作」ではなく「最新プロジェクト」と書くのかというと、従来作と違ってアニメやデータカードダスなどの「作品」が基本的に展開されていないためです。(公式も「最新プロジェクト」と表記しています)

アイドル養成学校「アイカツアカデミー」に在籍する3名のアイドルが「配信部」を設立、さらに11月末より1名が加入して現在は4名体制で、それぞれの配信を軸に日々活動しています。また、最低でも週に1度は全員揃っての「配信部」としての配信も行われています。

「彼女たちの配信での活動をYouTubeを通して視聴する」というのがこの『アイカツアカデミー!』の基本です。(ショートなどの動画コンテンツがアップされることもあります)
配信部のメンバーは部のチャンネルの他にメンバーそれぞれのチャンネルも運用しており、週のうち5~6日は何かしらの配信が行われています。(基本的に土曜日が部のチャンネルの配信日に割り当てられています)

バーチャルYouTuberの文化に明るい方は、だいたい同じような活動形式だと思って問題ありません。

シリーズの従来の展開スタイルは「データカードダスの稼働とその販促手段としてのアニメ放映(※)」というものでしたが、『アイカツアカデミー!』はそこから大きく舵を切ったプロジェクトとして世に現れました。

(※『アイカツプラネット!』は厳密には100%アニメの作品ではありませんが、便宜上「アニメ」と表記します。ご容赦ください。)

これが旧来のファンに受け入れられるのか、未知数の部分はありました。しかし現在の状況を見るに、好意的な立場の人が多い印象です。(もちろん、配信部の大ファンであるゆえのひいき目はあるのでしょうが、それを差し引いても大きな見誤りではないと思います)

これだけ大きな方向転換をしてなお好評を得ている決め手は何なのか、それも併せて考えていこうと思います。


『アイカツアカデミー!』の世界観

アカデミーの「所在地」

まず、施設としてのアイカツアカデミーの所在についてですが、ショートアニメ第0話などで「日本のどこかにあるアイドル養成学校」と語られています。私たちが住む日本には残念ながらこの立派な施設は存在していませんので、アイカツアカデミーは別世界にあるということになります。
さらに突っ込んで考えるなら、アカデミー配信部の面々も我々の世界の住人ではないわけです。

前述の通り、そんな彼女らの日々のアイドル活動は、リアルタイム配信を中心に行われています。その別世界で行われている配信を、我々がYouTubeを通して視聴しているという寸法です。

「何だ、つまり即興アフレコみたいなものか……」

待ってください、まだまだ続きがあります。

「おい、寂しいこと言うなよ! 配信部のみんなは実在してるだろ!」

まだ前振りだから落ち着いて部員さん!!

これはあくまでプロジェクトの持つ「名目上」の構造。『アイカツアカデミー!』が背景として有する世界観のお話です。
ただ、これをきちんと把握しておくとデミカツの魅力がわかりやすくなると思うので、もう少しお付き合いください。


「アイカツの物語」が存在する世界

我々の住むこことは異なる次元世界であるならば、従来作と同様に「完全な架空の世界」なのかというと、少し話が変わってきます。

ショートアニメ第0話の冒頭の各シーンや、上に引用した『3分でわかる!これまでのアイカツアカデミー! PV』での説明からわかるのですが、配信部の面々はこれまでのアイカツシリーズ各作品を「物語」として認識しています。
『アイカツプラネット!』までの各作品世界も基本的にそれぞれが別個のものでしたが(『アイカツフレンズ!』&『アイカツオンパレード!』は例外)、「現実⇔物語」の軸で示される相関はありませんでした。

つまりアイカツアカデミーがある世界にもまたアイカツシリーズの物語が存在しており、さらに言うならば、その「アイカツ」の名を冠する大規模なアイドル養成学校が作られるほどに、偉大な存在として認識されていることも伺えます。我々ファンにとってはまさに理想郷。

主役であるアイドルたちが「過去作の先輩方」を認識しているのは基本的に初めてのことで(※1)、また、彼女たちの先輩方への憧れは非常に深いものとなっています。「アイカツという作品に感動してアイドルを志したアイカツアイドル」が誕生したわけです。(※2)

(※1 『アイカツスターズ!』第69~70話や『アイカツオンパレード!』などの例外もありますが、いずれも「一時的な邂逅」の範疇であるため、デミカツに与えられた状態とは異なると考えます)

(※2 近年は「幼少の頃からアイカツシリーズに触れてきた」という出演者さんが着実に増えていますし、「ユーザーとしてアイカツシリーズを長く愛顧している」という声優さんや歌唱担当さんもいらっしゃいますが、担当する登場人物にまでそれが反映されることは、当然ながらありませんでした)

「VTuber的な活動を行っている以上、登場人物(≒アバター)の内外で知識が同一になるのは当然のことなのでは?」と思われるかもしれませんが、ここでデミカツの面白いところが一つ現れてきます。


彼女たちはどのような存在なのか

配信部の面々はシリーズの先輩たちのことを語る際、いかなる話題であっても「登場人物名の使用」を厳守します。例えば星宮いちごであれば「星宮いちごさん」「星宮さん」「いちごさん」と呼び、諸星すみれさんやわかさんの名前が用いられることはない、と言った具合です。(先ほど引用した『3分でわかる!~』でもスペシャルコラボの相手を「星宮いちごさん」「大空あかりさん」と紹介しています)

初めは「声優さんや歌唱担当さんの名前をすぐに照合できるリスナーばかりでもないから、わかりやすいよう配慮しているのだろうか」と思ったのですが、演者さんの名前を用いた方が自然な状況でも登場人物名を用いるため、いわゆる「中の人」の概念を意図的に避けていると推定されます。
壇上に声優さんや歌唱担当さんが登場するライブイベントのリポートが最もわかりやすいでしょうか。「下地紫野さん」も「るかさん」も共に「あかりさん」に置き換えて語られていました。
他に特徴的な例として、前述のスペシャルコラボで「共演した先輩にご挨拶した際、少しお話をさせていただいた」という話題でも、挨拶した相手についてやはり「わかさん」「るかさん」ではなく「いちごさん」「あかりさん」という呼称を用いてます。

これらの話から推定できるのは、アカデミー配信部のアイドルたちはその存在を先輩アイドルたちと同じ次元世界に置いているということ。
つまり、その立ち位置は「新たなアイカツキャラのアバターを用いて活動する配信者」ではなく『アイカツアカデミー!』のアイドルそのものであるわけです。
「アバターの設定を厳守するかどうかがそこまで重要なのか?」という見解もあるとは思いますが、実際、その違いが非常に強い効果を発揮する場面がたびたび現れています。(詳細については追い追い触れていきます)

ここで一度、要点をまとめます。

  1. 『アイカツアカデミー!』はYouTube配信を軸に据えたプロジェクト

  2. 舞台は我々の住む世界とは似て非なる別の世界

  3. その世界にも歴代アイカツシリーズの物語が存在している

  4. 配信部メンバーの立場は「『アイカツアカデミー!』のアイドル」そのもの

上記が『アイカツアカデミー!』の基本情報となるわけですが、これだけなら「2~4を基本設定としたアニメ作品等でも良かったのでは?」という疑問も発生するかもしれません。
それに対する一定の答えは、下記のプロジェクトプロデューサーさんへのインタビュー記事から得られると思います。

今後、いくつかの記事にわたって文章を綴っていく上で、上記インタビューの内容と重なってしまう部分も出てくるとは思いますが、視聴者の目線ゆえの見解なども多く述べていければと考えております。

よろしければ、お付き合いいただけますと幸いです。

(続きます)

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