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静大生錦絵深読 2020(1)市ヶ谷

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画題:江戸乃花名勝會 六番組  市ヶ谷
絵師:①都鏡 ②歌川豊国(3世)(歌川国貞(1世))
版元:加藤屋 清兵衛
改印:亥十一改(文久3年11月、1863)

①タイトル周り(上段右)

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―翻刻ー

①「笹や」 ②「蓮の団子」

③「□イ紅葉川仕入」④「粟焼」

―解説ー

上段右ではタイトルと当地にある有名な食べ物が書かれています。

①と④は一つのものであり「笹やの粟焼」だと思います。

詳細は以下のリンクを参照しました。
国立国会図書館 紫草 江戸商標集

国立国会図書館 江戸名物詩 初編
町づくし稿 207~
③上流は尾張国上屋敷の表門からの外に流した部分を柳川といい、それより上を拾川という。下流までを通して紅葉川と書いたが、その実は、無名の大下水です。

詳細情報は以下のリンクを参照しました。
てくてく 牛込神楽坂 大下水

③と④の間はたぶん蒸紅葉ではないかと思います。

②上段左

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―翻刻ー

①うつしゑ どろん/\の時ばかりの口上が即わたくしの市ヶ谷

②大あたりニ付玄園のぶる

③一寸口上 

高ふは厶り升れども 念仏坂の上よりお花抹香の上口をもつて じやぶ/\申上まする 随ひまして当名勝會もなかば御一らんに入候所殊の外大江戸の花/\敷御意ニ叶ひ板元はもちろん一座の画作有がたく仕合奉存升る 御礼旁爰元より御覧ニ入升るは四ツ谷怪だんを名所一口にうつしゑは 出方題口先筆先の細工ニムりますればかな違片言てにはのしそんじはなんがども御用しや ○先はさいしょ小仏小平戸板返し故人音羽屋ニお箱の藝より取立まして御一らん ○しかし私にもおはこが一ツムり升それはいかんとなれば上のびらを御覧くださりまし

ー解説ー

口上の形で、名勝会の紹介が書いています。主に有名なのは四谷怪談であり、下段で描いてある音羽屋尾上梅壽「小仏小平」も紹介しています。この後に続く絵の紹介も入ってるゆえ、4枚連続の絵の最初でピッタリです。

うつし絵とは江戸時代に伝わった幻燈から、さらにダイナミックで娯楽性豊かな独自の映像ショーである「写し絵」(関西では錦影絵、島根県では影人形などの呼び名があります)が生まれ、人気を集めました。ヨーロッパでファンタスマゴリアが生まれたのとちょうど同じ時期です。
詳細は以下のリンクを参照しました。
Utsushi-e 写し絵 江戸から明治...

③黒丸の中に描いてあるのは種板のデザインでありキャラクターは福助であると思います。

③下段

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―翻刻ー

②念仏坂

①市ヶ谷 長延寺谷より南へ巡りて大久保邊まで一ツの谷とか

③たにまち

―解説ー

②名前にある念仏には、2種類の説があります。
坂下に坊主が住んでおり、昼夜、念仏を唱えていたと言う話と、この坂を降りる時は左手に崖が広がり、上り下りする人たちが念仏を唱えていた、このふたつです。
詳細は以下のリンクを参照しました
ぼのぼのぶろぐ 念仏坂

③たにまちとは
 「一八五〇年の嘉永板の四ッ谷絵図によると、尾張侯の上屋敷の西に市ヶ谷谷町としてある。.....現・新宿住吉町の内。」
(江戸・町づくし稿(中巻) 青蛙房版 岸井良衛)

江戸町巡り 【牛込①014】市ヶ谷谷町


真ん中に描いてあるのは尾上梅壽であり、尾上菊五郎 (3代目)のことです。

尾上菊五郎は江戸時代後期の歌舞伎役者であり、屋号は音羽屋。定紋は重ね扇に抱き柏。俳名に賀朝・梅幸・三朝・梅壽、雅号に扇舎があります。『東海道四谷怪談』は文政8年(1825年)7月の江戸中村座の初演でお岩・小平・与茂七の三役を生涯に9度これをつとめています。

初演で小平を演じているため、初演を記念するために尾上菊五郎を選んでいるのではないかと思います。
詳細は以下のリンクを参照しました。
wikipedia 尾上菊五郎(3代目)

ウ ウェンチェン 記

「はじめに」へもどる。


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