沖縄たび 2020.01 ー町の食堂で孤独のヒュッゲー
「ローカルであること」と、ゆる〜い食堂しばり旅
私の旅で大切にしていることは、「ローカルであること」「ローカルに過ごすこと」である。4回目になる今回の沖縄では、ゆる〜い縛りをひとつだけ作ってみた。大したことではないが、一日一度の外食は、「食堂」で食事を摂ってみる、というもの。
沖縄の食堂文化には以前からとても興味があり、沖縄そば屋さんの開拓がおさまればいつか、とチャンスを目論んでいた。いくつかの気になる食堂は、すでに携帯の地図アプリにポインティングしていて、自宅のベッドでふと眺めたりしていた。(=真夜中の飯テロとも言う)
11月に訪れた前回、最後の食事をする際に、行ってみたかったお店に振られしまったおかげで出会えた食堂があった。そこで「ふーチャンプルー定食」を食べて、ものすごく体と心に染み渡る“何か”を感じた時間が五感の記憶として残り、帰ってからも思い出すことがあったので、今回はそんな「食堂しばり」という個人的なこだわりを与えてみたのだった。
(↑ポインティングされた私の地図)
旅食は人それぞれ
本題に入る前に、みなさんは一人旅の食にスタイルのようなものはあるだろうか。
私の旅食スタイルは、「地の物や地元の人と同じものをいただけたら、最高!」というもの。一方、食事はひとり旅の楽しみの一つではあるが、全てではない。食のためにあちこち移動はしないし、お腹が空いていないのに欲張って3食も食べたりはしない。歩き回ってお腹すいたなーと思い始めたら、その周辺で匂いを嗅ぎつけたり、地元の人に聞いたり、マッピングしてあるリストから運良く近い場所に行ってみるくらいだ。お腹を満たすためにお店に入ることは、旅中の「とまり木」のようなもの。
とまり木スタイルと沖縄食堂の一致
気に入れば次回も、という行きつけのようなお店になっていくので、新規開拓はスローペースな方かもしれない。宿泊先にもよるけれど、素泊まりの安宿に泊まり、朝は毎回スーパーで地元のパンや牛乳を選択するくらいで、内容は自宅でのそれと変わりばえしない。昼・夜は全く時間を決めずお腹がすいたら摂っているので、そこに手作りのサーターアンダギーが売っていたらいただくし、なければ15時過ぎにゆっくりお店に入って食事をし、夜はまたスーパーで軽く地元のお惣菜などを見て回るというのもとても楽しくて好きだ。
つまり、時間に関係なく道中に「とまり木」を必要とする私の旅スタイルには、ランチタイムのあとの中抜けがなく、かつボリュームとリーズナブルなお値段、何より地元の人たちが出入りする食堂はこれ以上ない場所なのだ、と今さらながら気がついたのである。お店に女子一人で入る勇気?そんなのは全く問題ない。地元の人のように、でも少し初めての空気を匂わせておじゃまさせていただくだけだ。
今回入れた食堂 「孤独のヒュッゲ」
今回3泊4日の旅中に入ったお店を記録したい。
●「ななほし食堂」さん@首里駅 16:00ごろ入店
可愛いらしい外観、中は吹き抜けの昔の喫茶店のよう。店頭でお豆腐も売ってる!ご飯は小盛りにしてもらい、ゆし豆腐定食に。「チキンカツとたまごポークどちらにしますか?」と聞かれ、「えっ、その二つ並行するチョイスなんだ(笑)」と心の中でくすぐられながらも、空腹だったのでチキンカツに。早朝に自宅を出てから初めてのまともな食事の時間だ、と気がついてホッと幸せな気持ちになる。ゆし豆腐と言えば、沖縄のスーパーに行くと、たいてい薄い黄色の業務用の箱に、いくつも作りたてのお豆腐が工場ごとに並べられているのを見かける。いつか購入してキッチンでお皿に移して食べてみたいなといつも思っているのだが、こんなに手作りお豆腐が沢山あるスーパーって羨ましい。
ゆし豆腐は他のお店との違いを少し感じてまたそれも嬉しくて。「コーレーグース」を途中でかけたら、一気に「ただいま!!」の気分になった。嬉しい、嬉しい。小皿のもずくとチキンカツがまた、味はもちろんサービス心を受け取るようで心に染み渡るものがあった。これらがあるのとないのでは全然違う定食セットになるね。
●「あかぎ食堂」さん@首里駅 15:00頃入店
四角い黄色の看板に、縦書き黒文字でかかれた「あかぎ食堂」さん。昔ながらの看板だけでも嬉しくなる。ちょっとだけ勇気を出して、食事を終えて出てきたおじさんと入れ違いで入ってみると、右にキッチンと小さなカウンター、正面から左にかけてテーブル席と、左壁側はお座敷になっている。思ったより広い。そしてこんな時間に、なぜこんなに人がいるのか9割満席だった。さすがにカウンター3席のおじちゃんの間は、、、と思っていたら、サバっとした女性のお母さんのような方が、相席だけどいい?と、同じく女性一人で座っていた四人がけテーブル席の斜め向かいを案内してくれた。少しホッとして(笑)、豆腐チャンプルー定食を注文した。キッチンの中華鍋の音とガヤガヤとした感じ。最高な音。男子学生もいたり、お年寄り含めた家族で食事している席もたくさんあった。女性同士でどんぶり鉢や定食のお盆を囲んでいる健康そうなグループもいる。私の向かいのおばさんは今お仕事が終わったのだろうか、運ばれてきた「すきやき定食」をテレビを見ながら頬張っていた。機関車の煙と音のような「活気」。食堂のガヤガヤした音は炭鉱石を釜に入れるときのよう。「チリリリリリーーン!」と突然鳴り出す電話は、ピンクのダイアル式。「孤独のヒュッゲ」が私の中で始まっていた。地元の銭湯に浸かるような気持ち良さがある。
少しお味噌が絡められたチャンプルー。美味しい、ってこういうことだよね。自分で家で作る料理に名前があったのか、と思う素朴さの中の旨味。自分一人の味ではなく、こうして地元の人と交錯する時間が本当に幸せで私の旅の悦びなのだ。その場の空気に自分の気配を馴染ませる。面白いのは、マグロのお刺身がちょこんと一皿あること。最初にご飯に乗せてマグロ丼にした。自分のフィルターで物事を見ない、ということを改めて教わる。ありのままを受け入れるのが旅なんだと思う。
●「いちぎん食堂」@美栄橋17:00頃入店
渡嘉敷島からのフェリーを降り、街に向かって歩きだした時、ちょうどお腹が空いていることに気がついたので、近くの食堂に入ってみたのがここだった。17時となると早い夕食を食べに来る人もいるのだろうか。中に入ると大きなカウンターと、カウンター越しのキッチンと働くおばちゃんたちの背中が見える。しかし予想に反してまだほとんど人はいない。メニューがたくさん貼ってある。相撲の中継をしている。とりあえず席に着くと、「チケット買ってきて〜」と言われ、入り口正面の機械の前に立ってみるが、何も食の画が入ってこない。ご飯はいらなかったので、お姉さんに「ふーチャンプルーの単品ありますか」と聞いてみた。「おつまみメニュー、っていうの押して、渡すときに「ふぅ!」って言って」と言われ、心の力が抜ける。それってキッチンに通す時のホールの言い方みたいで、ローカルレベルは高め。短い単語「ふぅ!」で通じるんだろうけど、そうは言ってもなんかドキドキすんな。「ふぅ」だけ言って渡すのもな、と思い正式名称言いましたけど(笑)でも、いつかそんな感じで気軽に言えたらいいな、とこっそり思ったよ。
出てきたのは、前回とまた違う雰囲気のふーチャンプルー。お店によって違うことを、今回シンプルな料理の中に発見した気がした。フライパンの味というのか油の味の強弱があるのと、水分も違うかもしれない。こうやって好みができたりしていくのかな。素敵だな。たとえば、毎日いろいろな食堂巡りしたとしても、人生で全食堂の全メニューを食べてみることって出来ないような気がした。果てしなく続く森の道のようだ。それなら同じもので好きなメニューを食べたくなる。ゴーヤチャンプルーも食べたいけれど、今のところ豆腐系とお麩系が気に入っているので、先はまだ長そうだ。
その時は入れなくても、イイお店。また来ればいいさ。
いやしかし、沖縄のお店には、なかなか一筋縄では入れないということにも気づいている。情報が変わりやすいのだろうか、いや違う。情報が沖縄人について行っていないのだ。同じお店に行っても早い時間に終わっていたり、臨時休業だったりする。よし、と思って少し足を延ばしてもネットの情報と定休日が違っていて空いていない、もしくはすでに閉店しているということが何度かあった。観光地のお店“ではない”からこそかもしれない。
なので、食事に行くにしてもオプションBはなんとなく頭の片隅に置くようにして、失望しないように(誰も悪くない)、開いているか否かは期待しないのが一番である。(事前に電話をかけてもいいが、それは好みではない)
今回振られたお店は、まず「上原ステーキ」さんのかけこみステーキ。胃がステーキを初めて欲したので、名前の通り駆け込むように向かうと、目の前の牧志市場工事中のため、やっていないようだった。そっか、、、と気を取り直して、首里方面へ向かい、モノレール「儀保」駅で下車し、丘を登った「黒猫食堂」さん。15時くらいに行ったのだが、外階段を登ると貼り紙があった。残念、と小窓から覗くネコの置物を見つめる。しかし、その建物の反対側にあった寄り合い所のような所から、なんとも楽しそうな民謡音楽とおじさんたちの声が聞こえて、地元の方にとっては“ありふれた”、でも私にとっては“特別に思える”午後を楽しむ音が聴こえてきて嬉しくなった。
まだまだ続く食堂めぐり
今回、いろんなローカル食堂の扉を開けることができて、地元の方々との時間を交差させてもらい、沖縄らしい時間の過ごし方においてまた別の一面を感じ始めることができた。そこに聞こえる会話や雰囲気がそれぞれあってとても居心地がよかった。また、1日の遅めにボリュームある食事が摂れて、旅中の食費の節約にもなり、こういうリズムもいいなと感じている。
まだ次回の旅のチケットは手に出来ていないが、しばらくの間は食べログ情報を夜な夜なベッドで眺めながら来たる日のために夢を膨らませていようと思う。
静水庭🌿
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