マルティネス

マルティネス?

電話口で尋ねた。

「そう、明日の担当だからよろしくね」

緊急事態宣言も、明けて少しずつだが仕事も戻ってきた。
今回は配送の仕事だ。

マルティネスは米国出身、ピカピカの黒人だった。子供が2人いる。

一件目はお客さんがジュースを差し入れしてくれた。
二件目はキャンセルになり予想以上の順調な滑り出し。ラッキー。
これはきっとマルティネスのおかげだ。

三軒目は元気の良いおばあさん。
前のめりに荷物を運ぶ動線も確保しておいてくれていた。
こんなお客さんばかりなら良いのに。
こちらも作業に身が入る。

作業を終えた。
さあ、次の現場だ。
そこにおばあさんはオレ達に小さなポチ袋を持たせてくれた。

寸志である。
心付ともいう。
引越しの際など、1000円ちょっと包む。
家のげん担ぎにもなるし、作業する方もありがたい。
今失われつつある美しい日本の文化だ。

「今日はラッキーだね、マルティネス」
「そうだな!次の現場でオレ達死んじまうかもな」

HAHAHA!

マルティネス、ジョークの通じる男。

マルティネスの運転は非常に安心出来た。
しかし、Y字路でしれっと信号を割り込み最前へ車を進めるマルティネス。

「まあマルティネスよ、オレ達も仕事だからしょうがないよな」

「ああ、だがまあ正直悪いとは思ってねえけどな!」

HAHAHA!

マルティネス、ダーティーな男。

「ちょっと店主にここ駐車していいか聞いてくる!」

マルティネス、意外と勤勉な男。

「JKだ!」

マルティネス、スケベな男。

仕事は滞りなくおわった。
最後は駅まで送ってくれることになった。

ありがとうマルティネス。
またよろしく、マルティネス。

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