無衣
雅に遊ぶ 香あわせ
源氏香之図などに 親しんでみようかと
考えてもいるけれど __________
私に大きな影響を与えたのは
戦国武将が催したとされる
饗応香
その宴を再現したという 一木四銘
柴舟 の 銘を持つ香を手に入れたのが
香に格別な想いを寄せる きっかけとなった
武将は 己の甲冑に
香を焚き染め 出陣したと云われる
それは 戦地に向かう時の
魔除けと 清めの意味を持つものだったけれど
戦いに敗れ 亡骸の身となった際の
死臭を消す為でもあったのだという
屋敷で 夫の帰りを待つ妻は
甲冑に染められた香を焚きつつ
夫の身に想いを馳せた
想いが募る 独り寝の夜が増えるほどに
其の香を 焚く数も増えていく
そんな妻の胸のうちは 如何ばかりであったろう
夫の衣を揉み拉く 衣擦れの音が
聞こえてくる気がする
香 とは
場を清め
心を鎮め
仏に手向ける務めをもつもの
私なら
其の 穏やかな薫香に
欲望を宥めるかの如く生々しさ
そして
血の匂いを 秘めたもの
そう いったほうが
しっくりとくるかもしれない