十薬
「雑草という草はない」
今話題の博士の有名な言葉だけれど
草花に限らず生命あるものは全て
そこに生きる意味を持っている。
可愛らしい花を咲かせた
ほんの二輪ばかりのドクダミが
近所に咲いていた。
そのあまりに真っ白な清廉な花を美しいと感じたせいで
厄介な雑草だと言われ続ける事が
ほんの少し心にかかった。
ある日、その真っ白だったドクダミの花が
花の部分だけ真黒くなって
無惨に立ち枯れているのを見た。
根元に除草剤をかけられたのだ。
昨日まで命いっぱい花を咲かせていた姿と
あまりにかけ離れた有様に
思わず目を背けてしまった。
そして除草剤をかけたその人はどんな優しいふりをしていても
平気でそんな事ができるんだと思うと
なんだかいい気持ちがしなかった。
勝手な理屈をつけて己の都合を押し付けるのはいつも人の方で
時に自然からのしっぺ返しを喰らっても
それさえも誰かのせいにしたがる。
愚かな生き物だ。
「私、ドクダミのような人になりたいの」
昔、そう言っていた人は
思慮深く感受性の塊のような人だった。
彼女だったらどんな風に感じるだろう。
そんな事を考えていた。