夏、バンドを組んだ
夏がやってきた。
アプリを開いて、「夏」と書かれたプレイリストを再生する。
andymori、never young beach、インナージャーニー、チャットモンチー。
わたしの愛してやまない、夏を彩るミュージックが鳴り響く。
外は気怠い暑さ。エアコンの効いた部屋で一人、鼻唄を歌う。
大学の軽音部に所属して3年目になる。
酒と煙草と恋愛が混ざり合う独特な雰囲気の中で、純粋に音楽をやりたくて所属している人はどのくらいいるのだろう、とたまに考える。
19のわたしに勧めてきたビール、従うように合図する周りの先輩たち、
真面目なんだね、と冷めた目で笑うあの、あの雰囲気が、たまらなく嫌だった。
その時守ってくれた先輩とバンドを組んで、3回目の夏。
ガールズバンドのコピーバンドで、わたしはベースを弾いている。ベースの楽しさを知ったのも、舞台に立つ楽しさを知ったのも、全部先輩のおかげ。
飲み会にほとんど出なかったせいで、後輩の名前は全くわからない。
先輩が卒業する半年後、部内にわたしの居場所は、完全になくなってしまう。
andymoriの「ユートピア」を聴きながら、半年後を想像して、胸がどうしようもなく苦しくなる。
あぁ、わたしもわたしのバンドが組みたい。ギターが弾きたい。わたしが書いた詞を、誰かに届けたい。
今まで書き溜めてきたわたしの思いが、素人なりに作ってみたお気に入りの曲たちが、
誰にも届かないまま終わってしまうのは嫌だ。
気付けば、弟に連絡していた。
一緒にバンド組もう。
弟もわたしに影響されて軽音楽部でベースを弾いているのだ。無愛想に、いいよ、と言ってくれたから、ベースは決まった。
ボーカルは、弟の友達に声をかけた。歌っているところを見て、バンドを組むなら一緒にやりたいとずっと思っていた。ほとんど面識がないにも関わらず、二つ返事で、やりましょうと言ってくれた。
そうやって、少しずつメンバーが集まって、バンドになって。
ギター、ベース、ボーカル、ドラム。
4人揃った時、恥ずかしいくらいに、胸が熱くなった。
大きなステージには立てなくても、小さなライブハウスでいいから、誰かの心に届く歌を作りたい。演奏したい。
大きな夢ができた、2024の夏。
わたしは今日も、ギターを掻き鳴らす。
いつかステージに立てる日を夢見て。
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